犬の鼻が濡れている理由
いつもしっとり、つややかに湿っている犬の鼻。普段は当たり前のように思っている、この冷たい鼻ですが、皆さんはその理由を考えたことがありますか?
よく、犬の鼻は濡れている方が健康で乾いていると体調が悪い、などと言われていますが、なぜ濡れている方が健康といえるのでしょうか。
嗅覚のため
人間よりはるかに優れた嗅覚を持つ犬にとって、鼻でにおいをとらえるというのは目で動くものを追いかけるよりも、ひょっとしたら重要な意味を持つことかもしれません。そんな犬の嗅覚を支える大切な器官が「鼻」です。
生き物はどうやってにおいをかいでいるかというと、空気中に漂うにおいのもととなる物質を鼻の粘膜でキャッチすることによって行っています。鼻の粘膜の中にはにおい物質の受容体がありますが、粘膜が乾燥していると役に立ちません。受容体がちゃんとにおい物質を受け止めるには、鼻の粘膜が十分に湿っていることが大切なのです。
人間の場合はこの粘膜が鼻の内側にあるのですが、犬の場合はさらに多くのにおい物質を吸着させるために鼻の外側にも広がっています。犬の鼻をよーく見てみると、黒い表面に細かいしわのような溝のような、不思議な模様があることが分かります。この溝から分泌される水分によって粘膜が潤い、よりにおい物質を受容体が感知しやすいようにしているのです。
体温調節のため
ご存じの通り、犬の体には人間のようにたくさんの汗腺がありません。人間の場合は体表にくまなく存在して、気温や体内の環境によって汗をかくことで体温調節を行います。
しかし、犬の場合は足裏の肉球にわずかな汗腺があるだけで、これだけでは体温をうまく調節することができません。そのため、多くの場合は口呼吸で唾液を蒸発させたり、鼻周辺から涙や唾液を蒸発させたりすることで放熱を行っているのです。
特に鼻の湿り気は頭部に近いため、脳の温度を上げすぎないようにする大切な働きがあります。逆に冬場になると湿りすぎた鼻は体温を下げすぎてしまいます。寒がりの犬は冬になるとくるりと丸まって、しっぽや足で鼻を温めながら寝るようになります。
風向きを知るため
昔の映画やドラマで、洞窟の中の風向きを調べるために指をなめて風に当てるしぐさを見たことはありませんか?
犬の鼻の場合もこれと同様で、常に湿っていることで風がどちらから当たっているか、においの来る方角はどちらかをすぐに判断することができるようです。
乾いている場合・濡れすぎている場合
犬の鼻が乾いていると具合が悪いといわれていますが、少しくらいの乾燥であれば問題ありません。特に寝ているときなどは涙の分泌も抑えられたり舌で鼻をなめたりもしないため、やや乾燥する傾向があります。気持ちよく寝ているときならば、鼻の乾燥を気にしなくても大丈夫でしょう。また、高齢になるとともに乾燥していく傾向があります。
ただし、鼻の表面がひび割れて出血したり、かさぶたができたりしているようなら獣医さんに相談をしてください。またその際に目やにや咳・くしゃみなどの別の症状が出ているようならば、犬ジステンパーなどの病気を疑います。
反対に、犬の鼻は常に湿っていますし、度々舌でぺろっと鼻をなめるのであまり気が付きにくいのですが、犬の鼻が濡れすぎているときは鼻水が出ている可能性があるので注意が必要です。
単純にほこりや水を飲んだときのはずみで、くしゃみをしたときであれば問題ありませんが、何もしていないときにタラタラと鼻水が出ているようですと病気の感染を疑います。
鼻水を出す病気はケンネルコフ、アレルギー性鼻炎など比較的軽症のものから、鼻腔内腫瘍や肺炎など重症化する病気の可能性もあるため、いつもと様子が違うなと思ったときは迷わず病院へ行きましょう。
まとめ
いかがでしょうか。犬の鼻が濡れているのは、においをしっかりと嗅ぐためだったり、体温調節のためだったりと、彼らの健康に重要な理由でした。目、耳、口と同様に健康状態の指標にもなるので、毎日ちょっと観察をしてみてくださいね。