犬が先にご飯を食べるのはNGと言われる理由
そもそも「犬が飼い主より先にご飯を食べてはいけない!」と言われていた理由には、10年ほど前までのドッグトレーニングの主流の考えであった、“犬のリーダー論”が関係しています。
しつけにおけるリーダー論では、犬の祖先が群れ生活を送るオオカミであったと考え、そのリーダーの行動を真似することで飼い主をリーダーと思わせ、指示などに従いやすいようにするというドッグトレーニングの基本的な理論です。
その中で、群れではリーダーが最も先に食事をするということから、家庭犬と上下関係をつくる手段のひとつとして「飼い主は犬より先にご飯を食べなければならない」ということが言われるようになったのです。
そのほかにも、「犬に飼い主より先を歩かせてはいけない」「犬をソファやベッドなど高い場所に乗せてはいけない」などというルールもあります。
また、群れ社会の動物では下位のオオカミがリーダーに対して服従の意思表示のために、仰向けになってお腹を見せたりマズルを軽くくわえられたり、手をかけられたりすることを抵抗せずに受け入れるなどの行動を見せます。
このような動物たちの行動を真似することで上下関係をきっちりとつくり、しつけやトレーニングを行いやすいようにする“リーダー論”が、長年主流の考えとして世界中に広まってきたのです。
勘違いされがちな「リーダー論」について
日本ではいまだに“リーダー論”は広く知られており、犬を仰向けにして押さえつけたり、食事やドアから出る順番などに気をつけたりしようと言われることが少なくありません。しかし、犬のトレーニングなどにおいて常に先進国となっている欧米では、”リーダー論”を疑問視する声がかなり前から出てきているのです。
まず、犬の祖先がオオカミそのものではないということや、オオカミ自体もそれほど厳格な縦社会・群れ社会を築いていたわけではないことなどがわかってきたことで、“リーダー論”の根底が揺らぐこととなりました。
さらに、犬は人間を同種・群れと認識しているわけではないため、“リーダー論”に基づいてご飯を先に食べたり、犬の先を歩いたりしたところで、犬にその意図は伝わらないと考えられるようになったのです。
そのため、犬に飼い主をリーダーとして認識させるために必要だとされていた「ご飯は犬より飼い主が先」「ドアを出るのは飼い主が先」「飼い主の前を犬に歩かせてはいけない」「ベッドやソファなど高いところに犬を上げてはいけない」などということは、実際はあまり意味のないことだと考えられるようになっているのです。
こうしたことは安全・衛生管理の観点などから考えると有効なものではありますが、しつけや関係性づくりにおいては、それほど重要なことではないと考えてよさそうです。
犬と上下関係を築く必要はない
飼い主が犬のリーダーとなって従わせるという“リーダー論”が、本当に意味があるのかと疑問視されるようになりました。さらに、飼い主が犬のリーダーである必要があるのか?ということについても改めて考えられるようになっているのです。
仕事のパートナーなどではなく、家族として共に生きていく犬と飼い主の間に強い上下関係は不要なのではないかとされ、それよりも友好的な信頼関係を築くことが必要なのではないかと考えられています。
もちろん飼い主が犬にとって頼れる存在であることはとても大切ですが、力で抑えたり強引に受け入れさせたりするようなものではなく、日々の生活の中で感情的になりすぎず、一貫性のある接し方などをすることで自然と犬にとって頼れる存在になっていくのだと思います。
上から押さえつけるようなしつけではなく、犬の気持ちや意思を尊重しながら犬と飼い主がお互い歩み寄って関係性を築いていくことができれば、素晴らしい家族やパートナーになれるに違いありません。
まとめ
「犬は飼い主より先にご飯を食べてはいけない」という言葉だけを聞き、何となく守っていたという飼い主さんもいるのではないでしょうか?しかし、なぜそれをしなければいけないのか?ということを考えたとき、現代の犬と飼い主の関係性にはあまり意味のないことかもしれません。
これまで重要視されてきた“リーダー論”ですが、食事や歩く順番でリーダーを決めたり、力で押さえつけたりして上下関係を受け入れさせるなどといったことは、不要であるという考えが広まりつつあります。
犬と飼い主は家庭の中で家族・パートナーとして十数年を共にする存在です。何かを強制するのではなく、大らかでありながら毅然とした姿勢で犬に接することができれば、お互いに信頼し合うことのできるより素晴らしい関係性が築けるのではないかと思います。
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20代 男性 匿名