1.鼻が濡れているのはにおいを感じやすくするため
『犬は鼻が乾いていたら体調が悪い』という話を聞いたことはありませんか?実際に鼻が乾いているときは、病気や体調不良のこともあるそうですが、犬が元気そうにしているのなら特に問題がない場合も多かったりするそうです。犬の鼻が濡れるのは、分泌物と自分で鼻をなめることによります。寝ている間や何かに夢中になっている時はあまり鼻をなめませんので乾くでしょうし、湿度が低い環境でも乾きやすいでしょう。
ただ、基本的に犬が起きている時は鼻が湿っている状態になっていることが多く、湿っているのにもちゃんとした意味があったりします。犬の鼻が湿っていると空気中に漂うにおいの分子を吸着しやすく、『においを感知しやすくなる』のだそうですよ。
また、鼻が濡れていることでにおいがどの方向からくるのかも分かりやすくなるのだとか。例えば、私たち人間も風がどっちから吹いているのかを調べるために指先を湿らせてチェックすることってありますよね?犬の鼻はまさにそれと同じなのだそうです。嗅覚が優れた犬にとって、においはとても大切なものとなるので、『鼻を湿らせてにおいをより感じやすくする』という能力が備わったのでしょう。
2.犬は鼻を使って体温調節をしている
犬の濡れた鼻には、もう一つ役割があります。それは『体温の調整をする』という役割です。犬は暑くなると舌を出してハァハァし、体温を調節しますよね。この行為は口の中などの水分を蒸発させ、気化熱によって体温を下げるという犬の行動(パンティング)となりますが、犬の濡れた鼻も同じ効果をもっていると言われています。体温が熱くなると濡れた鼻の水分が蒸発し、気化熱によって体温を下げる役割があるそうですよ。ただし、鼻の濡れた部分は体の大きさに対してとても小さいので、濡れた鼻が乾く際の気化熱が体温を下げるのに本当に効果的かどうかは疑問視している人もいるとのことです。
3.においで相手の情報を知ることができる
犬はにおいを嗅ぐことで『相手の情報を詳しく知ることができる』というお話を聞いたことのある人はたくさんいると思います。実際に犬はオシッコやウンチといった排泄物や汗や皮脂、肛門腺などの分泌物のにおいを嗅ぐことで、相手の状態や情報を詳しく調べることができるのです。においを嗅ぐだけで、相手の健康の状態まで知ることができるという話もあったりします。
散歩中に他の犬のオシッコやウンチを嗅ごうとするときは、相手の犬の情報を知りたがっているといえます。犬の世界では排泄物のにおいは名刺代わりとなり、においを嗅ぐのは犬にとって大切な行為となるので、できる範囲でにおいを嗅がせてあげることをおススメします。
ただ、排泄物に触れると感染症にかかる危険性も少なからずありますので、排泄物に触れないよう気をつけさせながら、においを嗅がせるようにしてくださいね。
4.においで人の病気・妊娠に気づける
人よりも千倍から1億倍以上も嗅覚が優れていると言われている犬は、微かなにおいによって人の病気に気づけることがあるそうです。例えば、テレビなどで『ガンに気づいた犬』や『糖尿病の人を救った犬』が話題になることってありますよね?
こういった病気を発見することができる犬は、体の中から発生している他とは違う病気のにおいに気づき、吠えたり訓練された行動をしたりして人に知らせてくれます。ガンであればガンを持っている人の尿中に含まれるにおいを感知し、糖尿病なら低血糖になったときに発生するにおいや体の動きの変化を感知して低血糖が起こりそうだと本人や周囲の人に知らせたり、低血糖で倒れてしまった場合には周囲に知らせてくれるのだとか。
また、病気ではありませんが犬は体臭の変化を感じ取ることで妊娠にも気づくことができるという話もあるそうです。大好きな飼い主が妊娠した場合は、嗅ぎなれている飼い主の体臭が変わることで犬が戸惑ってしまうこともあるようです。もし、飼い主の妊娠時に愛犬がソワソワと落ち着きのない行動をとるのでしたら不安や戸惑いを感じている可能性がありますので、落ち着けるように接してあげる必要があるといえます。
5.鼻で温度を感知する
おそらく多くの人がご存じでない犬の鼻に隠された能力『温度感知』。何と犬は鼻で温度を感知することができるそうなのです。人間から見ると特殊能力とも思えるこの能力は、狩りの際に役立つ能力だと考えられていて、気温と同じ温度の物体と動物の体温と同程度の温度の物体を1.6m離れたとこから区別するトレーニングに成功したり、MRIを用いた脳機能検査でその2つの温度に対して違う反応を検出したり、という研究結果が出されています。
まとめ
犬の鼻にはいくつもの能力が隠されています。その多くは嗅覚に関するものとなりますが、なかには体温調節や温度感知といった、生きる上でとても大切な能力もあるようです。犬の体の仕組みを知ると、改めて面白い生き物だなと感じてしまいますね。
紹介されている研究は以下の論文のものになります。
Bálint, A., Andics, A., Gácsi, M. et al. Dogs can sense weak thermal radiation. Sci Rep 10, 3736 (2020)