①家族・群れの一員
犬と人間の関係は非常に歴史が深く、諸説ありますが3万年以上前からお互いに利害関係を持ったパートナーであったとされています。そのため人間にとって犬という動物は「“最古”であり“最高”のパートナー」であると世界中で言われています。
現代日本ではあまり見られないことですが、犬と人間はこれまでたくさんの仕事を共にしてきました。その多くは食料を確保するための狩りであったり、自分たちに害を及ぼす相手を駆除したりするための仕事だったと考えられています。つまり、自分たちの命をつなぐ・守るための仕事を共にしてきた存在であり、犬も人間も同じ群れまたは家族の一員と認識していたと思われます。
近年では犬と人間が共に狩りをして食料を確保するわけでもなく、自分たちの敵を協同して排除するわけでもないため、犬は家族に対して「群れ」とは認識していないという考えが強くなっています。そのため、どちらかというと家族として食事を提供してくれたり散歩に連れ出してくれたりという「自分のお世話をしてくれる相手」と考えているのではないかと言われています。
②感情を共有する親密な相手
犬と人間の関係性を知る上で、非常に興味深い研究がアメリカ・エモリー大学で行われました。MRIを利用して犬が人間のにおいを嗅いだときの脳神経の反応を調査したもので、MRIにおとなしく寝そべることができるよう訓練された調査対象の犬に、ほかの犬や飼い主などの身近な人間、見知らぬ人間のにおいを嗅がせて、それぞれの反応の違いを確認しました。
すると飼い主の匂いを嗅いだとき、ポジティブな情報や好ましく感じる情報を得たときに反応する尾状核という犬の脳の”報酬系”が活性化することが確認されました。
また、ハンガリーのエトヴェシュ・ローランド大学でも犬の神経撮像研究が行われ、人間と犬が発したさまざまな音に対する犬の脳の動き・反応を調査しました。この研究の成果として最も注目されたのが、人間が発する悲痛な音声に対する脳内の感情処理が、犬と人間で類似性が確認されたということです。この反応から、悲しんでいる・つらいと感じていると思われる声を聞いたときなどに犬が相手に近づいたり寄り添ったりする行動の理由となるのではないかと思われます。
③コミュニケーションを取るべき友人
犬は霊長類を除き、人間の目を見つめるという行為をする唯一の動物だと考えられています。これはオオカミを家畜化する研究において発見されたもの。犬は自分の産みの親に対してでさえ目を見つめるという行為は行わず、犬と人間の独特な行為だと考えられています。
さらに最近ではイギリス・ポーツマス大学の研究で、犬が眉間の筋肉を使い上目遣いで人間を見つめることができるようになったということが結果として発表されました。上目遣いで甘えた表情を見せることで人間が保護欲をそそられたり、甘い態度を示したりすることを犬たちは経験してきたことで、そうした筋肉の動かし方を学んだのではないかと推定されているのです。
こうしたアイコンタクトという行為を身につけるほど、犬は人間に何らかの意思や感情を伝えたり、コミュニケーションを取ったりするべき存在と考えているのだと思われます。
まとめ
犬と人間の歴史は非常に長いものですが、その関係性や犬の感情を裏付けるような研究や調査はこの10年以内で少しずつ行われてきています。これまでは言語で気持ちを伝えることができない犬の感情などを証明することが難しかったのですが、近年では犬の脳や神経の働き・反応をMRIまたはfMRIを用いた研究が徐々に進んできています。それにより人間にとってはうれしい犬たちの思いなどが判明してきていますので、今後もそうした研究にぜひ注目していきたいですね。