愛犬への「愛情」と「依存」の違い
基本的に自分の意志で犬を飼っている人は、当然のことながら犬に対して愛情を持っていると思います。犬を育て、共に暮らしていく上で愛情というのは何よりも大切です。犬を育てていくことはそう簡単なことではありません。愛情があるからこそ、手のかかる犬であっても「理解したい」「幸せにしたい」と思えるもので、愛情がなければそのための努力をするのはとても難しいのではないかと思います。
最近では犬を“ペット”から“家族”とする考えが広まり、今では子供の数よりも犬や猫の飼育数の方が多くなっているほどです。そんな中で問題となってきているのが、飼い主さんの犬に対する依存です。愛情とは本当に犬にとっていいこと、幸せなこととは何かを考え、ときに犬に対して厳しい態度を取ってでも正しい道を歩かせてあげようとすることだと思います。
しかし、依存の場合は犬の気持ちや犬にとっての幸せよりも飼い主さん自身の思いを満たすものであり、場合によっては犬を不幸にしてしまう歪んだ愛情となってしまうこともあります。
依存するリスク
依存することで犬を自己と同一化し、愛情が深まるほどその境界線が見えなくなると言われています。「この子さえいてくれればいい」そんな思いが強くなりすぎ、ほかのことに関心を示すことができなくなってしまったり、必要以上に心配しすぎてしまいひとときも離れられなくなってしまったりするようになると、依存度が高まりすぎていると思われます。
また、ペットへの依存は家の中で周囲に気づかれることがなく進行していくため、気がついたときは重度のペット依存症になってしまっていることが少なくないとされています。
愛犬に依存することの問題点
かわいい愛犬を愛し、大切に育てていくことは犬にとっても飼い主さんにとっても幸せなことでしょう。愛情深い飼い主さんに育てられた犬は精神的な落ち着きがあり、安定した成長を見せてくれます。
しかし、愛情が行きすぎて依存へと変わってしまうことで、犬だけでなく飼い主さんにとっても様々な問題やリスクが生じると考えられています。愛犬に依存していると「過干渉」「過保護」になってしまいがちで、自宅など安全な環境で過ごしているにも関わらず、目の届かない場所にいると強い不安を覚えてしまい、留守番をさせることができなかったり、ほかの部屋で過ごすことすらできなくなってしまったりします。そうすることで犬も飼い主さんから離れられなくなってしまい、分離不安症を引き起こすこともあります。
また、愛犬に依存している人がその犬を亡くしてしまったとき、高確率で重度のペットロスに陥ると言われています。犬を育て支えていたつもりが、その犬がいなくなったことで飼い主自身が支えをなくしたように極度な不安感を持つようになってしまい、日常生活を送ることが難しくなってしまうことがあります。犬を亡くした悲しみに暮れるだけでなく、「これからどうやって生きていけばいいんだろう」という自分自身の生き方や目標さえ見失ってしまうのです。
犬の依存しやすい人とは?
犬に依存することは、犬にとっても飼い主さん自身にとってもリスクがあるとしましたが、犬を飼っている人や犬に愛情を持っている人であれば、どのような人でも可能性があることだと考えられています。
「犬に依存しやすい人」には次のような傾向があると言われています。
- 家族や友人関係が希薄または人間関係がうまくいっていない
- 没頭できる趣味や仕事がない
- 子育てが終わった世代(特に女性)
このような状況にある人たちは、寂しさや孤独感を抱いてしまいがちだと言われています。そんな中で無償の愛を飼い主さんに対して注ぎ、わかりやすい愛情表現でそれを示してくれる犬に対して依存心を深めてしまうと考えられます。
また、犬との生活やドッグスポーツ、アウトドアが趣味という人もいると思いますが、犬とは関係のない場所での趣味や関心ごとを持っておくことも大切。また、犬との遊びが趣味であっても犬仲間をつくって周囲の人とのコミュニケーションもしっかり取っておくと、精神的なバランスが取りやすく愛犬だけに依存しにくくなると思います。
まとめ
共に生きる愛犬に対して深く大きな愛情を持つことはとても大切です。愛されている犬はとても幸せで、愛情で結ばれている犬と飼い主さんの関係性というのは本当に素敵なものだと思います。だからこそ、犬と自分を同一化することなく客観視し、過度な心配・保護は避けるように心がけて意識的に距離を保つことも大切です。
依存は自分にとっても相手にとっても負担やリスクをもたらします。愛犬とは、お互い自立心を持ちながら信頼関係で結ばれるパートナーや家族になりたいものですね。