1.成犬期の若い犬
犬も人間と同じで、産まれたばかりの赤ちゃんは天真爛漫で自由気まま、我慢という言葉を知りません。手はかかるけれど、それこそがパピー期の犬の可愛さでもありますよね。また、シニア期にさしかかると、さまざまな体調不良で身体が弱ってきたり、認知症のケが出てきたりして、自己主張や、飼い主さんに甘えるなどの行動が増えてくる傾向があります。
一方、ある程度の分別もつき、精神的にも肉体的にもパワーが満ちている成犬期の若い犬は、「我慢ができる」がゆえに、我慢してしまいがちな傾向があります。
2.よくトレーニングされた犬
幼いころからトレーニングをしっかりとされ、しつけが完璧に行き届いた、いわゆる「イイコ」も我慢をしてしまいがちです。犬の社会化、トレーニングの多くは、「犬に自分勝手な行動をさせないこと」「要求をさせないこと」を目的に行われます。そのため、食べものや遊びをせがむ要求行動を抑えたり、お散歩で飼い主さんより先を歩いて好きな方に進まないようにしたりといったトレーニングを行うのです。その結果、しつけがよく行き届いた犬は、「飼い主さんを困らせるから要求はしてはいけない」と認識しており、じっと我慢するようになるのです。
3.トラウマがある犬
かつて要求行動をしたときに飼い主さんに激しく叱責されたり、叩かれたりしたことがある犬も、我慢をしがちです。これは一見すると、トレーニングやしつけと同じ効果のように見えますが、それとは異なります。すなわち、飼い主さんに叱られた記憶が、犬にとってトラウマとなってしまっているのです。例えば、トイレを失敗して叱られた記憶からトイレを我慢するようになっては、健康面に大きな影響を与えます。また、恐怖による抑圧でできた関係性は、あたたかい絆とは言えません。「誉めるときはしっかり誉め、叱るときにはしっかり叱る」がしつけの鉄則なのはもちろんですが、叱るタイミングや叱り方の程度には注意を払わなくてはなりません。
4.多頭飼いの犬
1つの家庭の中で他の犬と同居している、いわゆる多頭飼いの犬も、我慢をしてしまいがちです。多頭飼いでは飼い主さんを独占することができないため、その子の個性にもよりますが、遠慮をしてしまう可能性が高くなります。その中でも特に注意が必要なのは、後から暮らしはじめた犬や、年が一番若い犬など、立場の弱い犬です。多頭飼いの基本は、先住犬を優先することですが、これは、犬同士が一緒に暮らしていく中では序列が必要であり、その序列を作るためのものです。しかし、その結果、序列が低い犬は自己主張やワガママを通すことができず、我慢するしかない状態に陥りがちです。多頭飼いをする際には、全ての犬にしっかり目を配ることが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?犬の我慢にもさまざまなものがありますが、飼い主さんが最も見逃してはいけないのは、「痛み」に対する我慢です。犬とはそもそも、生き物の中でも我慢強い動物だといわれています。特に野生では、怪我の痛みや病気を相手に悟られることは自分の弱みを晒すことであり、生命の危険に直結するものです。そのため、怪我の痛みや病気を相手に悟られないよう、犬はぎりぎりまで我慢する傾向があります。手遅れになる前に気づけるかどうかは飼い主さん次第です。いつもと違うところはないか注意深く見守ったり、定期的な健康診断を受けさせるなど、犬の「我慢」に気づいてあげることが大切です。