自閉症スペクトラムのための介助犬
発達障害に対する理解と共に以前は診断できなかった症例もカバーできるようになり、世界中で自閉症スペクトラム障害と診断される子供の数も増加しています。
その治療法も多岐に渡りますが、その中の一つが特別なトレーニングを受けた介助犬と一緒に生活するというものです。
犬が側にいることで、子供の落ち着きが増し、特定の事柄に対するこだわりに柔軟性が加わったなど、当の児童だけでなく家族全体が助けられたという報告は多く寄せられています。
現在アメリカでは自閉症スペクトラムの児童に提供される介助犬の数は増え、人気も高まっています。
介助犬はほとんどの場合、専門の非営利団体が育成訓練して提供しています。犬種はゴールデンレトリーバー、ラブラドール、ラブラドールとゴールデンのミックスが採用されています。
介助犬の効果を科学的に証明するための研究がスタート
しかし意外なことに、これらの介助犬が本当に効果があるのかどうか、あるとすればどのように機能するのかについての科学的な証拠は不足している状態です。
数ある治療法の中から介助犬を検討する人々のためにも、犬の存在が子供と家族にどのように影響するのか理解することが重要です。
アメリカのパデュー大学獣医学部では自閉症スペクトラムと介助犬に関する研究を長年継続しており、この秋自閉症のための介助犬の効果を科学的に証明する研究を本格的に開始しました、
研究はパデュー大学の他にアリゾナ大学、介助犬育成のための非営利団体「ケーナイン ・コンパニオン・フォー・インディペンデンス(自立のためのコンパニオン犬)」が共同で行います。
介助犬の効果を証明する目的は?
介助犬と暮らす治療法は人気があり、順番待ちをしている人もたくさんいる状態ですが、その有効性に関する科学的証拠の欠如のために、多くの疑問も寄せられています。
また有効性に関する確固とした情報がないために、家族や臨床医は介助犬に何を期待できるのかが不明なままです。
介助犬の介在は医療行為なので「なんとなく良さそう」だけで実行するわけには行きません。
この研究は4〜17歳の自閉症スペクトラムと診断された、現在すでに介助犬と暮らしている子供と、介助犬の順番待ちリストにいる子供の症状を比較します。
参加者のコルチゾールレベル、ストレス反応システムに関与するバイオマーカー、睡眠習慣などが検証されます。
また子供本人への影響だけでなく、家族全体に及ぼす影響も数値化して測定していく予定だそうです。
まとめ
アメリカで本格的にスタートした自閉症スペクトラムのための介助犬の有効性を科学的に検証する研究についてご紹介しました。
日本でも自閉症スペクトラムと診断される子供は増加していますが、介助犬の普及はまだ大変限定的です。
このような研究が進むことで、救われる子供や家族が増えることが期待されます。
そしてまた一方で、介助犬として働く犬の福祉の問題も真剣に考えられ、利用者にも理解されることを心から望みます。トレーニングを受けて人間のために働いてくれる犬たちが、それにふさわしい尊重を受ける社会であってほしいものです。