ネガティブな記憶の方が残りやすい
みなさんは愛犬のことを見ていて「ネガティブな事=嫌な事・辛いこと」と「ポジティブな事=楽しいこと・嬉しい事」のどちらをよく覚えていると思いますか?
実は犬に限らずほぼ全ての動物が「ネガティブな事=嫌な事・辛いこと」に対して強い反応を示し、記憶し続ける傾向にあると言われています。ネガティブな事に対する強い拒否反応や嫌悪感、恐怖感はいわゆる“トラウマ”と呼ばれるもので、たった一度の出来事でも忘れることができなくなってしまったり、それによって生活に支障が出てしまうことなどがあります。
一方「ポジティブな事=楽しいこと・嬉しい事」は瞬間的にはある程度反応を示しますが、ネガティブな事に比べるとやや弱く、実感を伴う記憶としては持続しにくいとされています。また、「ポジティブな事=楽しいこと・嬉しい事」に対しては慣れてしまいやすくより強い事象を求める傾向にあるのです。
これは野生で生きてきた動物たちが命の危険を回避するために持つ危機感や防衛本能などと深い関係があると考えられています。命をつなぐこと、繁殖を行うことを目的として生きる動物にとっては楽しみや喜びよりも危険や恐怖の方が重要だということは確かですので、ネガティブな事象に対して強い反応をし、記憶するというのも納得です。
犬種によって記憶の仕方に違いがある?
犬を含めたほとんどの動物がポジティブな事よりもネガティブな事を記憶しやすいと言われています。しかし、記憶力や記憶の仕方、また考え方や感じ方には個体差や犬種による傾向というものがあります。
ネガティブな事を覚えやすいとされているのが警戒心の強いタイプの犬で、日本犬に多いタイプと言われています。警戒心や危機意識が強い分、痛い・辛いなどネガティブな感覚を受ける事に対して神経質になってしまいがちなのです。反対にレトリバー系など陽気ですぐに誰にでも心を開くタイプの犬はネガティブな事象をあまり気にせず、楽しい・おいしいなどポジティブな事に強い反応をする傾向にあるとされています。それぞれの性格により、しつけなどで一度叩いただけでその人に対してずっと警戒心や不信感を持ち続け距離を取ろうとする犬もいれば、普段楽しく遊んでくれる相手であれば何度叩かれても尻尾を振って近づいていく犬もいるということになります。そのため、犬との接し方はそれぞれの性格に合わせて慎重に考える必要があるのです。
犬の記憶力はしつけにも深い関わりがある
犬がネガティブな事とポジティブな事のどちらをより強く覚えているかということについては、ネガティブな事の方が記憶に残りやすいということがわかっています。では具体的に犬はどのような事をどれくらいの期間覚えているのでしょうか?
犬は6秒前後しかそのときの出来事や感情を記憶していないと言われることがありますが、これは短期記憶に関してです。そのためしつけなどで犬がした行動に対してほめたり叱ったりする場合、6秒以内を目安に行わないと犬は何をほめられて何を叱られているのか理解できないと言われています。留守番中の粗相やいたずらを帰宅後に叱っても意味がないと言われるのはこれが理由で、犬は数時間も前のことと“今”叱られていることを結び付けて考えることができないのです。
そのため、帰宅後に叱るということを続けていると「飼い主が帰ってくると怒られる」や「飼い主が帰ってきたときに出迎えに行くと怒られる」などと勘違いしてしまうので注意しなければなりません。犬の行動に対してほめたり叱ったりするときは、6秒以内、または犬が別の行動をしてしまう前に行わなければ正確には伝わらないということになります。
まとめ
犬は基本的にポジティブな事よりもネガティブな事を強く長く記憶しやすいと言われています。そのため、犬のトラウマになるような接し方やしつけにおける罰の与え方などについては慎重に考えてあげなければなりません。ポジティブな記憶はネガティブな記憶に一気に置き換えられてしまう事はあっても、ネガティブな記憶が一度のポジティブな記憶で消されるということはほとんどないのです。もちろん記憶の仕方については個体差もありますので必ずしもそうとは言えませんが、できるだけネガティブな記憶を持たせないような関わり方をしてあげられると犬は安心して暮らしていけると思います。