犬は飼い主の身体だけでなく心の健康もサポートしてくれている
犬と一緒に暮らすことが心臓など循環器系をはじめとして身体の健康に様々な良い影響があることは、多くの研究によって裏打ちされています。そして多くの方がすでに実感として分かっている事かと思いますが、ペットの中でも特に犬との暮らしが心や精神の健康にも良い影響を与えるという研究も様々な国で行われています。
「犬といると幸せ」「犬と一緒にいるとストレスを忘れる」こんな感情の裏にはどんな作用が働いているのでしょうか。
犬が心的トラウマを癒してくれるシステム
アメリカのデンバー大学の行動科学研究のテデスキ教授は同僚との共著「トラウマの変容:動物とのつながりによる回復と癒し」において、動物が生理学的および心理的なトラウマを軽減するのにどのような役割を担っているかを探っています。
中でも世間を震撼させたような大事件の後に、犬がコミュニティの人々をサポートした際の役割が大きく取り上げられています。
無差別襲撃事件などが被害者の精神に及ぼす影響の一つは、被害者が事件の後に他の人々を信頼することが難しくなってしまう例が多いことだそうです。他人から傷つけられた経験のある人が、心的トラウマを克服して人間関係を再び作り上げて行くのはとても難しいことです。そんな時、介助犬や専門的なセラピードッグは人間よりも頼りになる存在なのだそうです。
安全な動物(犬)と触れ合うことで、別名愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンが分泌され、愛、社会的なつながり、幸福感を持つことが促進されます。さらに犬との接触は、ストレスを感じている時の警報ホルモンとも言えるコルチゾールのレベルの低下も引き起こします。つまり、まだ他の人間を信頼できるようにはなっていないけれど、犬と接触することで脳が再び人間関係を構築できるような状態にセットされるということですね。
もちろん犬の他にも猫や馬、ウサギなどと触れ合うことでもオキシトシンは分泌されストレスレベルは低下するのですが、犬は人間とともに暮らしている歴史が長く人間と一緒に進化してきたため、人間の身体言語、表情をよく理解します。このことがよりスムーズなコミュニケーションにつながるようです。
犬は家族の心のサポーター
このように、犬は心に大きなダメージを負うような出来事があった後に、心を癒すホルモンの分泌を助け、ストレスレベルを低下させて脳のリセットをサポートする役割を果たします。アメリカでは多くの被害者が出た大事件の後には、素早く専門のセラピードッグたちが派遣されることが良く報道されています。他には天災の被災者たちが過ごしている避難所でもセラピードッグが活躍しています。
セラピードッグの活躍はもちろん素晴らしいものですが、犬と一緒に暮らすことは家族の心のサポーターが常駐しているようなものとも言えますね。また飼い主と犬の関係は、人間が犬を必要とするのと同じくらい(またはもっと)犬も人間を必要としているという点が重要です。
犬と人間はがお互いに必要な存在であるということ、一方的に依存するだけの関係ではないということです (反対に言えば、どちらか一方だけが依存する関係は不健全だということでもあります。)
まとめ
犬と暮らすことが精神や心の健康に良い影響を及ぼすシステムについてご紹介しました。心に大きなダメージを負った時、人間の心を癒してくれるのが人間よりも犬であるというのはとても興味深いことですね。犬が人間のためにしてくれることを思うと、人間の存在は犬にとっても心身のサポートでなくてはいけないと改めて強く感じます。