犬同士に「相性」は存在するか
犬や猫といった動物たちも、私たち人間と同様に意思や感情を持って表現することができる生き物です。食に対しても、遊びやおもちゃについても好みがあることは犬を観察するとよくわかりますね。当然、犬同士についても好きや嫌いといった感情が存在し、これが相性といえるでしょう。このお互いが持つ「好き」「嫌い」といった感情は、どうやって生まれるのでしょうか。
犬は争いが苦手
オオカミのころから群れで生活し、家畜化が進んで人と生活をするようになっても犬にとって「群れ」で生きる習性は変わりません。群れという社会を大切にする犬たちは、本来争いごとを好まず可能な限り避けようとするのです。目線をそらしたり周囲の者のにおいをかいだりして敵意がないことを示したり、体をなめたり震わせたりして緊張を解きほぐそうとしたり、様々な方法で「争うつもりはない」ということを表現します。
お互いにこういった犬同士のボディランゲージを理解できていれば、よほどのことがない限り喧嘩には発展しません。しかし子犬のころに十分な犬同士のコミュニケーションをとっていないと、こういったボディランゲージを理解できないことがあります。目線をそらした相手に吠え続けたり、落ち着こうとしている相手にしつこく絡んでいったり、そういうことが続けばされた側の犬には相当なストレスがかかります。このストレスが「こいつは嫌い」という気持ちに結びついてしまうのです。
犬同士のコミュニケーションの方法は、生後2か月~3か月程度の間に母犬や兄弟犬と触れ合うことで学びます。あまり早い時期に母犬と話した子犬はコミュニケーション方法を十分に学べず、犬同士の距離感のつかみ方がわからない犬になってしまう場合もあるので、子犬を迎える際にはどのくらい親元にいたのかチェックするとよいでしょう。
悪い相性の見極め方
同性同士の場合
一般的に相性が悪いとされるのが、若いオス同士の組み合わせでしょう。犬同士のコミュニケーション方法を知っていても、お互いの自己主張がぶつかってヒートアップする傾向があります。一度喧嘩に発展してしまうと、お互いに「あいつは嫌な奴だ」と覚えてしまうので修復が難しくなります。
ドッグランや散歩の途中でオス同士が出会ってしまった場合、お互いのしっぽや耳の動きを注意して観察します。どちらかが譲って目線をそらしたり、相手を立てるしぐさをしたりすればよいのですが、お互いにしっぽや耳を立てて譲らない場合は喧嘩に発展する前に引き離したほうがよいでしょう。比較的温厚だといわれるメスですが、メス同士が出会った際も静かにお互い力関係を計っています。尾や耳、ボディランゲージの様子を観察することが大切ですね。
年齢が離れすぎている場合
すっかり落ち着いてしまったシニア犬と、ちょっと寝たら充電満タンでころころと動き回る子犬という組み合わせも相性という点ではあまり良くないことが多いようです。遊んでほしい子犬がじゃれついてくるのをシニア犬が鬱陶しがってストレスになることもありますし、じゃれつく加減を間違えた子犬にシニア犬が本気で怒ることもあります。
面倒見がよい犬や、いつまでも遊び好きな犬であればシニア犬になっても子犬の世話をしてくれることもありますが、体力に衰えがみられる場合はあまり子犬と一緒に生活させないほうが良いでしょう。生活のペースが乱され、シニア犬のストレスがたまり体調に悪影響がでることがあります。
性格が合わない場合
犬にも性格があり、自立心が強くひとり遊びが好きな子、人が好きで犬が苦手な子、犬が大好きで一緒に遊びたい子など様々な子がいます。お互いの要求がマッチした場合はつかず離れず一緒に遊んだり、同じスペースを共有したりしても問題がないのですが、極端に偏った場合は注意が必要です。
特にひとり遊びや人が好きな子に犬同士で遊びたい欲求が強い子が近づくと、しつこさに怒った子がかみついたり吠えかかったりして大喧嘩に発展することがあります。
まとめ
犬同士の相性は「挨拶」をするときによく見ておくことが大切でしょう。お互いに強く自己主張したがっていたり、片方が逃げ腰だったりすれば「今日は相性が良くない」と飼い主さんが判断して少し距離をとってあげてください。
しかし犬の相性は一回ですべて決まるわけではありません。何回か顔を合わせたら仲良くなることも気にならない間柄になることもありますし、何回あっても馬が合わないこともあるでしょう。犬を会わせたときのあいさつの様子は、毎回ちゃんと観察するのが良いですね。