犬にとって家族とは?
私たち人間と犬の歴史は長く、共に暮らし共に生きてきました。日本でもこの20年程の間に犬は「番犬」から「家族」になり、より身近な存在になったと思います。では、犬にとって私たち人間は一体どのような存在として認識され、共に暮らす家族についてはどのような思いを抱いているのでしょうか?
そもそも、犬にとっての「家族」とは血縁関係などよりも行動や生活を共にする群れの仲間のことだと考えられています。犬の祖先はオオカミやそれに近い動物たちで、そのほとんどが群れを成して生活をしていた動物だとされています。群れの仲間=家族として、群れのリーダーに従って行動したり協力して狩りをしたり、家族を守るために戦ったりして野生を生き抜いてきました。そうしたDNAを持つ現代の犬は、一緒に暮らしている私たち人間のことも群れの仲間=家族として認識していると考えられているのです。
犬にとって人は感情を共有する存在
意には一緒に生活をする人を家族として認識すると考えられていますが、さらに犬は人に対して感情を共有する存在と考えているということもわかっています。そのことについてはさまざまな研究機関による調査・研究が行われていますが、ハンガリーのエトヴェシュ・ローランド大学では声やため息など人間や犬が発した音に対する犬の脳の変化を調査しました。
人の声や物音に犬の脳がどのような反応を示すかということを調査した初めての研究と言われており、注目すべきは犬と人の脳内の感情処理能力に類似性があるということがわかったことです。特に悲痛な音声に対して非常に似た反応を示し、その共通点はお互いの感情を共有したり絆を育むことで重要な要素となるのです。このようなことから、犬は人の微妙な感情の変化などを敏感に察知することができ、さらにそれに共感したりなぐさめるような行動を見せることがあると考えられているのです。
犬と人は“親子”に似た絆で結びついている
犬と人は感情を共有することができる存在であり、さらに“親子”のような特別な信頼関係を築くことができるということもわかっています。犬は霊長類以外の動物で、人の目を意図して見つめることができる唯一の存在とされています。意思や感情を伝えるためのアイコンタクトを取ろうとする行動は人と犬独特の行為とされており、実際の犬の親子間ではほとんど見られないことなのです。
そして犬と飼い主である人が目を合わせると、双方の脳内でオキシトシンというホルモンが分泌されることがわかっています。オキシトシンは“幸せホルモン”“愛情ホルモン”などと呼ばれるもので、愛情や信頼に大きな影響を与えます。犬と人が見つめ合うことでオキシトシンが分泌され幸福感が高まり、お互いに対する信頼の気持ちが生まれるのです。異なる動物間でこの現象が見られたのは初めてで、犬と人の関係性は他の動物にはない特別なものだと考えられるようになりました。
まとめ
私たち人間にとって犬は大切な家族です。そして犬にとっても一緒に暮らしている人間を家族として認めているということが、さまざまな調査・研究によってわかっています。それはとてもうれしいことですがより深い絆で結ばれる家族になるためには、人が犬にとって優しく頼れるリーダーになることが大切です。勘違いされがちですが、リーダーになることは決して服従関係を築くということと同意ではありません。お互いの気持ちや意思を尊重しながら適切な距離感を保って関係性を築き、犬が本当に困ったときに一緒に暮らす家族が頼れる存在になることがとても大切なことだと思います。