犬が人に見せる甘え行動や仕草
犬と一緒に暮らしている人ならその多くが愛犬が甘えてくるという経験をしていると思います。犬は一緒に暮らす家族や親しい人、頼りになると感じる人に対してさまざまな仕草・行動で甘えることがあります。具体的には以下のような仕草・行動見られます。
- 座っている人のひざなどにあごを乗せてる
- 目の前に来てお腹を見せる
- クンクンと甘えた鳴き声を出す
- 人の手や肩などに前足を乗せる
- 飼い主の口をなめる
このような仕草・行動が見られた場合、「なでて欲しい」「遊んで欲しい」などの要求の気持ちや寄り添ってリラックスしたいという甘えの気持ちなどが隠れています。それぞれ細かな意味は異なりますが、飼い主の注目を集めてかまってもらいたいという思いは共通していることだと思います。
犬の甘え行動に関係する遺伝子研究とは?
スウェーデンのリンショーピング大学の研究チームが、190頭のビーグル犬を対象に犬と人の関わり方に影響を与えると考えられる遺伝子に関する研究を行いました。そこから犬が人に甘えることの理由に特定の遺伝子が関係しているということが考えられ、Natureの学術誌『Scientific Report』でも発表されて注目を集めています。
スウェーデン南部の研究センターで標準的な条件のもと飼育されたビーグル犬を対象にし、彼らに問題解決課題を与えました。課題は類似性のある3つの問題で構成されており、そのうちに解決することができない課題が含まれていました。具体的には、コンテナに取り付けられたスライド式のふたを開けて中に入っている食べ物を食べるという単純な課題となっていましたが、3つのうち1つのふたは固定され開けることができないようになっています。そうして解決不可能な課題に出会ったときの犬の様子が観察され、さらにゲノム解析が行われたのです。
研究からわかった甘えに関わる遺伝子について
スウェーデン・リンショーピング大学のチームが行った研究では、解決不可能な課題にぶつかったときほとんどの犬が近くにいる人の方を見て目をじっと見つめたり、近づいてきて体に触れるなどして協力を求める行動が見られました。人に助けを求めた犬とその傾向が少ない犬をそれぞれ調査し、似ている点と異なる点が調べられました。
その結果、5つの注目すべき遺伝子が発見され「SEZ6L」遺伝子が犬が人のそばにいたりスキンシップを求める時間の長さに関係していることや、「ARVCF」遺伝子など3つのマーカーが人との触れ合いを求める行動に関連していることがわかりました。さらに興味深いことにこのうち4つの遺伝子が、人の社会的行動障害との関連性が確認されている遺伝子だったということです。そのため、これらの遺伝子が人に対する犬の行動を決定する要因となると考えられているのです。
<まとめ>犬が人に甘える行動と遺伝子の関係
犬が人に甘える理由としては、飼い主のことが大好きでかまってもらいたいという純粋な気持ちが最も大きなものだと考えられますが、実はそこに犬の持つ遺伝子が影響していると考えられています。人に甘える行動を取る傾向が強い犬と弱い犬の違いに、人とのスキンシップを求める遺伝子の存在が大きく影響しているということがビーグル犬190頭を用いた研究の結果として現れたのです。
つまり人の甘える犬かそうでない犬かということは、必ずしも飼い主による愛情の質や量、生育環境で決定づけられるとは限らないということ。飼い主に対して深い愛情を持っていても、持っている遺伝子の影響で甘える行動はあまり見せない犬もいるということだと思いますのでそれぞれの犬が持つ気質による影響もあると考えていいでしょう。