犬歯切断とは?
犬には食べ物を切り裂くための犬歯という尖った歯があります。犬歯切断とはこの犬歯を他の歯と同じくらいの高さまで削ることを言います。もし犬歯を前歯よりも下の位置に切断すると、どうしても歯の中心に位置している神経や血管の歯髄(しずい)が露出してしまいます。
露出したままにしておくと食べ物のカスや細菌が入り込んでしまい、感染を起こし炎症を起こしたり歯が抜け落ちてしまったりします。そしてその間は激痛がともないます。これを防ぐために犬歯の切断部分をコーディングして、歯髄が露出しないようにします。コーティングがうまくいかないと歯が痛いために怒りやすくなったりすることがあります。
犬歯切断の理由と目的
犬の歯を削り取ってしまう主な理由は、万が一犬が人間や他の動物に噛みついてしまったときに怪我の程度を軽くするためです。
例えば以下のような犬は犬歯を切断する対象となります。
- どんなにしつけを行っても過度の噛み癖がある
- 老犬で認知症のため人に噛み付くようになった
- 遺伝的なもので突発的に攻撃的になる
- 飼い主さんがしつけを投げ出してしまった
過度な噛み癖
しつけを行っても噛み癖が直らない犬は、犬歯を短くすることで被害を最小限にすることができる場合があります。獣医さんとよく相談をして、選択肢のひとつとして考えられるものです。飼い主さんやプロのドッグトレーナーさん、獣医さんなどが協力してしつけを行っても直らないこともあります。小型犬であっても噛まれると危険です。
認知症による噛みつき
また認知症や遺伝的な疾患で噛みついてしまう犬にも犬歯切断をすることがあります。犬の脳が変化するために起こるもので、しつけの問題ではありません。そのためどうにもできず、犬歯を削るという選択しか残っていない場合が多いです。
遺伝的な疾患による攻撃性
とくに遺伝的な疾患でなんの前触れもなく攻撃的になったり、周囲の人や動物に襲いかかるような場合には選択肢はほとんどありません。万が一人を頻繁に傷つけたり、致命傷を与えるような犬だった場合薬や犬歯切断、抜歯などを行いますがそれでもどうにもならないときには最終手段として安楽死などを選択せざる得なくなります。そのようなことを防ぐためにも犬歯を切断することで被害を最小限にとどめることは重要です。
犬の咬傷事故とは?
犬が人や動物を噛んでしまうことを咬傷事故(こうしょうじこ)と呼ぶことがあります。犬歯はもともと獲物の喉元に噛み付いてとどめをさすためのものであるため、小さな犬であっても本気で噛めば血が出るほどの怪我になります。
また唾液が傷口から体内に入ることで発症する病気もあります。咬傷事故を起こすと飼い主さんに傷害罪が適用され、場合によっては訴訟に発展してしまいます。法律上では犬はものとして扱われるので、飼い犬が人や動物を噛んだ場合、飼い主が傷つけたことになるのです。
犬が他の犬を噛んでしまった場合は持ち物を傷つけられたということで、財産権の侵害という形で損害賠償を請求される可能性もあります。犬が人や動物を噛んでしまうとこのように色々なことが考えられるのです。そのため犬が人や動物を傷つけないように犬歯切断を行うこともあるのです。
犬歯切断のデメリット
犬歯切断のデメリットとしては犬が噛み付く根本的な原因が解決されない、しつけを怠る、などがあります。噛みつかれて怪我をするという危険性が低くなるため積極的に犬に向き合える一方で、危険性が低くなったのならもう大丈夫だと放置してしまう飼い主さんもいます。犬歯切断によって危険性が低くなったとしても、犬の根本的な問題を放置してしまっては意味がありません。それは犬にとっても飼い主さんにとっても不幸なことです。
まとめ
犬の犬歯を短くする犬歯切断は、主に愛犬が万が一人間や他の犬を噛んでしまったときに怪我の程度を軽くするために用いられる手術です。かならずしも簡単にそてどんな子でもやらなければいけないものではないですし、最終手段の一つです。どんなに頑張ってしつけを行っても強い噛み癖が直らなかったり、認知症や遺伝的な疾患で噛み付くようになってしまった場合に選択肢のひとつとしてあるものです。
もし犬歯切断をやるのであれば、きちんとした処置を行わないと痛みから余計噛みつきやすくなることもあるのできちんとした病院でやってもらうようにしましょう。
また犬歯切断を行ったからといってしつけを放り出してしまったり、犬を野放しにしてしまわないようにしてください。犬歯の切断や抜歯については色んな考え方があり、国によって対応も異なるようです。動物愛護の観点から廃絶しようという動きもあります。特にヨーロッパではその傾向が強く、日本でも難色を示されることも少なくはありません。
しかし飼い主さんと愛犬にとって何が一番なのかを考えて選択してください。どうしても切断が必要になったときには獣医さんやプロのドッグトレーナーさんなどとよく相談して決めましょう。できるだけ犬の負担にならなず、かつ問題を解決できる方法を選択できるといいですね。