愛犬とのキスで必要なこと5つ
1.キスは唇を合わせる程度で
犬も人間も、口の中にはたくさんの菌が住んでいます。これを「常在菌」と言います。人間の口の中の常在菌と犬の口の中にいる常在菌ではそれぞれ400種以上で、種類が異なります。同じ種類の常在菌は、そのうちわずか15%です。アメリカのハーバード大学の教授による研究によると、犬の常在菌は人間の皮膚の上で5時間以上存在し続けます。
唇同士を軽く触れ合わせるようなキスではなく、犬の舌が人間の口にまで侵入してくるような接触の仕方をすると、人間の体には存在しない菌が数百万という単位で体の中に侵入してくるのです。とはいえ、愛犬とキスをしたい!と言うのは、愛しさがこみあげてくる衝動です。愛犬とキスをするときは、唇と唇をかすめる程度の接触までにしておきましょう。
2.常に清潔な環境を保つ
排泄物から感染する場合が多いので、長い間排泄物を放置することがないように心がけます。また、被毛や皮膚に排泄物が付着しているときも感染のリスクが高くなるので、住環境だけでなく、愛犬の体そのものも常に清潔に保つように心がけましょう。
3.口腔内、唇などに傷があるときはキスをしない
どんなに愛犬の体や住環境を清潔に保っていても、飼い主さんご自身の口の周りに傷があれば、犬の口の中の常在菌がその傷口から飼い主さんの体の中に侵入します。自分の体の中には存在しない菌が体の中に入ってきたら、当然、体の中の免疫機能が働いて、傷口が化膿したり、状態が悪化したりする恐れがあります。どんなにキスをしたいと言う衝動に駆られても、口内炎や歯肉炎、唇に傷があるときは愛犬とキスをするのは避けましょう。
4.自分の体が弱っているときはキスをしない
たとえ、口内や口の周りに傷がなくても、飼い主さんの体調が著しく悪く、体力が落ちているときは、病気に感染しやすくなっています。健康なときなら体の中に感染源である細菌が侵入してきても発病することは稀な病気でも、体力が落ちていれば発病し、重症化することもあります。病中、病後で体力が落ちているときも、愛犬とのキスは我慢しましょう。
5.拾い食いをさせない
トキソプラズマは、野良猫の糞や、寄生虫に冒されている食べ物を食べることで感染します。人間への感染は稀だとはいえ、人畜共通感染症を防ぐだけでなく、誤飲誤食を防ぐためにもふだんから散歩中に拾い食いをさせないように注意しましょう。
犬とのキスで感染する可能性のある病気3つ
パスツレラ症
パスツレラ菌は、犬や猫の口の中に常在する菌で、犬や猫に咬まれたり、引っ掻かれたりすることによって、パスツレラ菌に感染すると発症する病気です。
パスツレラ症の症状
呼吸器系の疾患として発症する場合、気管支拡張症や結核、悪性狩猟などの疾患があると発症率が高く、繰り返し発症することがあります。症状は、軽い風邪程度のものから、肺炎へと進行し、重症化する場合もあります。また、皮膚疾患としては咬まれた場所が腫れ、痛みが生じます。糖尿病などの基礎疾患があると、骨髄炎や敗血症などへと進行しやすく、さらに重症化すると死亡することもあります。
トキソプラズマ
トキソプラズマは、トキソプラズマ虫という病原体によって引き起こされる感染症です。トキソプラズマが寄生したものが口の中に入ることで感染します。トキソプラズマ原虫の卵は、猫の腸内でしか産卵しませんが、寄生虫そのものは、土や植物の中でも生存します。家庭犬から人への感染は稀だとされていますが、食糞の癖や拾い食いをすることによって犬に感染すると考えられています。
また、最近では近畿と四国の一部の獣医さんによる研究によって、室内飼育の犬よりも外飼いの犬の方が感染する確率は高く、高齢になるほどトキソプラズマなどの寄生虫に感染する可能性が高くなることもわかりました。
トキソプラズマの症状
妊娠中にトキソプラズマに感染しても、妊婦さん自身に症状が出ることはありません。しかし、トキソプラズマは胎盤を通って、胎児の体に入り込みます。そうなると、流産したり、無事に生まれても先天性の障害を持って生まれたりする可能性が高くなります。また、免疫系の疾患などで免疫の機能が低下している人が感染すると、脳炎を起こしたり、高熱が出たりして、死に至ることもあります。
まとめ
どんなに愛しくても愛犬は「犬」という動物です。人間と動物で、人間同士のキスのように無防備にキスをすると、命を失いかねない危険がある…と言う知識や対処法を知ることは、愛犬とともに幸せな時間を生きるために必要なことではないでしょうか。