犬の呼吸が荒くなる原因を知っておきましょう
犬の正常な呼吸数の目安は、小・中型犬で1分間に20~30回、大型犬で10~15回くらいですが、ときにはこれよりも呼吸数が増えて、呼吸が荒くなることがあります。舌を出してハァハァと荒い呼吸をしている愛犬の姿が苦しそうに見えて、心配になることもあるのではないでしょうか。
でも、犬の呼吸が荒くなる原因を知っておけば、必要以上に心配したり、慌てたりすることが少なくなりそうですよね。そこで今回は、犬の呼吸が荒いときに考えられる原因をご紹介していきたいと思います。
原因①体温調節
暑いときや運動をした後に犬の呼吸が荒くなるのは、体温調節をするためです。犬には熱を放散させる働きを持つエクリン腺という汗腺が肉球や鼻先にしかないため、体温が上がっても汗をかいて体温を下げることができません。その代わりに、舌を出しながらハァハァと荒い呼吸をして体温調節をします。舌を出して水分(唾液)を蒸発させたり、荒い呼吸で熱い呼気を吐き出して冷たい空気を取り込んだりして熱を放散し、体温を下げているのです。
原因②熱中症
犬は体温調節のために荒い呼吸をしますが、いつまでも荒い呼吸がおさまらないときは、うまく熱の放散ができずに熱中症になっているのかもしれません。
荒い呼吸とともに、体が熱い、舌や歯茎が赤い、うろうろして落ち着きがない、よだれを垂らしているといった様子も見られるのであれば、熱中症の初期症状である可能性が高いです。
対処法
重症化すると死に至ることもあるので、犬が熱中症になった場合は早めの応急処置が必要になります。涼しい場所に移動して、タオルに包んだ氷のうや保冷剤などで首周りや脇の下、内股など太い血管(動脈)部分を重点的に冷やしたり、シャワーやペットボトルなどを使って犬の全身に水をかけたり、自力で水が飲めるならたっぷり水を飲ませたりして、とにかく体を冷やします。それでも症状がよくならない場合は、体を冷やしながら動物病院へ。
熱中症は高温多湿な環境下でどの犬もなりえますが、短頭種、大型犬、寒い地方が原産の犬、シニア犬、子犬、太り気味の犬などは特に熱中症になりやすいので注意しましょう。
原因③心臓病
犬が心臓病にかかると、咳が出る、運動を嫌がる、呼吸が荒くなる、疲れやすくなるといった症状が見られます。犬の心臓病には、突発性拡張型心筋症、心室中隔欠損症、動脈管開存症などがありますが、圧倒的に多いのが僧帽弁閉鎖不全症です。
僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁が変性し、しっかり閉じなくなる病気です。僧帽弁は血液の逆流を防ぐ役割を持っていますが、この病気になると血液が左心房に逆流してたまってしまい、全身に血液が行き渡りづらくなります。病気が進行すると肺水腫(肺胞などに水がたまること)を引き起こし、命に関わります。
中年齢~高齢の小型犬(チワワ、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、トイ・プードル、シー・ズー、マルチーズなど)がこの病気にかかりやすいとされています。
心臓病は進行性の病気なので、早期発見、早期治療が何より大切です。年に1回は健康診断を受け、気になる症状が見られた場合は早めに受診しましょう。
原因④短頭種気道症候群
外鼻孔狭窄(鼻の穴が狭いこと)や軟口蓋過長症(喉の手前上にある軟口蓋という柔らかい部分が通常より長いこと)などの呼吸器系の病気のうち、ひとつあるいは複数が合わさって短頭種気道症候群といいます。呼吸をするときにいびきのようなガーガーという音がする、荒い呼吸をするなどが主な症状です。肥満によって症状が悪化しやすくなります。
病名からも分かるように、いわゆる鼻ぺちゃの短頭種(ブルドッグ、パグ、シー・ズー、フレンチ・ブルドッグ、ペキニーズなど)に多く見られますが、ほかの犬種もかかります。
原因⑤痛み
ケガや病気などで体のどこかに痛みがあると、呼吸が荒くなることがあります。放っておくと危険な状態に陥ることもあるので、動きがおかしい、動こうとしない、体を触ると嫌がる、元気がない、食欲がないといった症状も見られる場合は、早めに受診を。
原因⑥緊張・不安・興奮
緊張や不安を感じたとき、興奮をしたときにも呼吸が荒くなります。緊張や不安、興奮がおさまれば、荒い呼吸もおさまります。例えば、初めての場所へ行ったときや愛犬が苦手な場所に行ったときなどにハァハァと荒い呼吸をしているのならば、緊張や不安を感じているのでしょう。わが家の愛犬は、動物病院へ行くと必ず呼吸が荒くなります。
まとめ
ご紹介したように、犬の呼吸が荒いときに考えられる原因はいろいろあります。愛犬がハァハァしているときは、そのときの状況や呼吸以外の様子もよく観察して、呼吸が荒くなっている原因を見極めてあげてくださいね。病気や痛みが原因と思われる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。