1.飼い主の病気・入院
動物愛護センターや保健所に犬が持ち込まれる理由として最も多いのが、飼い主が病気・入院による飼育困難です。件数としては圧倒的に多く、およそ半分弱を占めているとされます。特に、近年では核家族化の進行から、高齢者の一人暮らしや高齢者だけの世帯の増加が社会現象となっています。そうした結果、飼い主が病気になってしまったことで愛犬の世話ができない身体になってしまった、入院するために愛犬を残して家を空けなければならなくなってしまった、といった状況が発生しやすくなっているのです。
病気や入院は、飼い主自身にとっても唐突なことで、それによって愛犬を手放すのは望まざる結果であり、苦渋の決断であるのかもしれません。ですが、動物愛護センターや保健所に愛犬を持ち込むということは、その多くが死に直結しているということを忘れてはいけません。
2.飼い主の離婚
意外に思われるかもしれませんが、犬の持込み理由として次に多いのが、飼い主の離婚によるものです。飼い主が離婚することになったものの、夫婦どちらの側も新居はペット飼育不可であったり、仕事や生活の都合で犬の世話をすることができないという状況で、動物愛護センターや保健所に持ち込まれるケースが多くなっています。子どもの親権問題と少し似ているのかもしれませんが、決定的に違うのは、やはりその後の処置です。人間の子どもであれば、もし両親どちらも引き取ることができなかったとしても児童養護施設などで暮らすことができますが、犬の場合にはそういった施設(譲渡団体のシェルターなど)に入れることは稀です。夫婦で犬を飼うと決めたからには、もしものときのこともしっかり考えておかなければなりません。
3.飼い主の引っ越し
飼い主の離婚とほぼ同等の割合で多いのが、飼い主の引っ越しです。転勤や結婚などの引っ越しにより、ペット飼育不可のマンションに引っ越すことになってしまい、飼育が継続できなくなってしまったケースです。ペットと一緒に暮らせるマンションは、特に賃貸の場合ではまだまだ数が少ないのが現状です。
しかし、愛犬と暮らしている以上、やむをえず引っ越しを余儀なくされた場合でも、ペット飼育可の部屋を探すことが義務ではないでしょうか。その結果、たとえ駅から遠く、家賃が高く、自分の望む条件に合った部屋でなかったとしても、愛犬と一緒に暮らせることを一番優先するべきです。今後、それができない可能性があるのであれば、犬を飼うという選択をすべきではありません。
4.経済的理由
愛犬家のみなさんならご承知の通り、犬を飼うということは綺麗事ではなく、それなりに費用がかかるものです。毎日のフード代はもちろんのこと、狂犬病やワクチン接種、フィラリア予防薬の投与といった最低限のことだけでも、年間で数万円単位の出費が必要になります。失業や転職、その他もろもろの生活環境の変化により、自分の生活費だけで精一杯で愛犬にお金をかける余裕がなくなってしまった、という経済的理由で愛犬を手放すケースも報告されています。
5.犬の問題行動
また、直接的な原因が飼い主側ではなく、犬側にある場合でも飼育放棄となる場合もあります。その1つが、問題行動です。イタズラがひどくて手がつけられなかったり、攻撃的な性格から人を噛んでしまう咬傷事故をたびたび起こしてしまったり、無駄吠えが直らずに近所から再三の苦情を受けてしまったり、しつけが上手くいかずに悩んだ末に、手放すという選択肢を選んでしまったケースです。
しつけが成功しないのは飼い主のやり方に問題がある場合もあれば、犬の性格や習性に問題がある場合もあります。どうしても問題行動が直せずに悩んでいる場合には、ドッグトレーナーなどプロの手を借りるのも方法です。愛犬の処遇を考えるのは、それからでも遅くはありません。
6.犬の老齢・怪我
犬の世話というのは、いろいろと手間がかかるものです。食事をあげたり、散歩に連れて行ったり、抜け毛の処理やシャンプーをしたり。若くて元気な犬であっても、それなりの労力と時間がかかります。しかし、怪我をして障害を負ってしまったり、年をとって介護が必要となった犬であれば、それは尚更のこと。犬の平均寿命が格段に伸びた現代においては、特に犬の高齢化も大きな問題となっています、それに伴い、世話や介護ができないという理由で、長年連れ添った愛犬を手放すケースも増えているのが現実です。
犬を飼うと決めた以上、その最期まで看取るというのが飼い主の最低限の責任です。ですが、どうしても難しいという場合には、老犬ホームなどの施設などを利用することもできます。もちろん費用はかかるかもしれませんが、愛犬の幸せを考えればどちらが最適解であるかは言うまでもないはずです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?愛犬を手放すという決断をするまでには、さまざまな苦悩や逡巡があるのかもしれません。ですが、愛犬を手放すという選択は全て、飼い主の都合に他なりません。飼い主さんを全面的に信頼し、愛している犬たちにとっては、飼い主さんの都合や悩みなどは全くわからないのです。ある日突然、わけもわからないまま飼い主さんと会えなくなってしまった愛犬の悲しみ、「いつかは迎えにきてくれるはず」という無垢の信頼に少しでも心を寄せることができば、そんな決断はできないはずです。悲しみは絶対にくり返してはいけません。