犬の認知症とは
人の認知症
人の認知症は「生後いったん正常に発達した種々の精神・認知機能が慢性的に減退・消失知ることで日常生活・社会生活を営めない状態」と定義されています。そのため多数の病気や疾患を含み、アルツハイマーに代表される「中枢神経変性疾患」と脳梗塞などに起因する「血管性認知症」に大別されています。病気の内容についてもそれぞれで細かく定義されていて、治療法も各種存在しています。
犬の認知症
それに対して犬の認知症ですが、老化によるさまざまな症状をまとめて「認知機能不全症候群」としており、それ以上に細かい分類がなされていません。昼夜逆転、夜間俳諧などの日常生活に支障を及ぼす病態をまとめている状態なので、明確にこれという治療方法は確立していません。この認知機能不全症候群ですが、大まかに次のような状態が表れます。
- 見当識障害
- 人やほかのペットとのかかわりあいの減少やかかわりあい方の変化
- 睡眠―覚醒のサイクルの変化(昼夜逆転など)
- トイレの失敗の増加
- 活動レベルの低下(外部の刺激に反応しなくなる、学習しなくなる、グルーミングしなくなるなど)
これらの状態はほかの病気の際にも表れることがあるため、いくつかの症状が出て日常生活に支障が出るレベルになった際に「認知症」と診断されることが多いようです。
日本犬が認知症になりやすいという説
インターネットで犬の認知症を検索すると、老齢犬ケアのハウツー記事のほかに認知症になりやすい犬種に関する記事やサイトが多くヒットします。中には認知症になった犬の半数以上が日本犬(日本犬の雑種)とする説や、特に柴犬が認知症になりやすい犬種であるといった情報が多くみられるようです。反対に洋犬はほとんど認知症になった犬がいないという情報もありました。
今現在、日本ではペットブームもあり様々な犬種が飼育されていますが、本当に日本犬(特に柴犬)が高齢になった際に認知症になりやすいのでしょうか。
これについて参考になりそうな論文があったのでご紹介します。
犬の認知症についての論文
これによるとやはり年齢が高くなると認知症と思われる行動の変化が見られやすくなるという結果が出ていました。体重(大きさ)で比較した場合、年齢が同じであればやや大型犬にその傾向が出やすいようです。中でも注目したい結果は、犬種別でみると10歳~13歳においては日本犬より洋犬のほうが認知症と思われる行動が多くみられたという点です。
これらの結果からこちらの論文では認知症の発症は、犬種による寿命の長さも関係するのではないかと推測しています。
日本犬の場合は大型犬に属するのが秋田犬くらいで、多くは柴犬などの小型犬で寿命も比較的長めです。大型の犬は小型犬に比べて身体的な老化が早く表れる傾向があります。認知症の症状が表れないうちに寿命が来てしまうことも多いでしょう。
対する柴犬はとても体が丈夫で長生きです。柴犬やその雑種など小型犬が長生きした結果、ちょっとした認知症のような行動が生活に支障が出るレベルまで進行してしまい、結果として「日本犬(柴犬)に認知症が多い」と言われることになったのではないでしょうか。
またこちらの論文では追跡調査が行われており、認知症の症状が出ているグループと出ていないグループを比較した際には症状が出ているグループのほうが長生きをしたという結果が出たそうです。これにより長寿であるから認知症を発症する可能性が大きいという見解が示されていました。
もちろん洋犬にも柴犬以上に長生きをする小型犬、超小型犬がいます。これらの犬たちは老齢でも認知症の報告が少ないという説もあるので、犬種による偏りが無いとは言えません。しかしもともと活動量の多い日本犬の場合、認知症の症状が出ると飼い主に分かりやすいということもあるのかもしれませんね。
認知症の予防について
犬の認知症についても予防は人の場合とそれほど変わらないかもしれません。
よくコミュニケーションを取り、適度な運動と適切な栄養管理をしてあげることが大切です。またなにより日々新しい刺激を取り入れ、ストレスのない範囲で犬たちの活動力をあげていくことがよいでしょう。
まとめ
日本では認知症になる犬の〇割が日本犬だ、と一概には言えないようです。まだ研究の歴史が浅いためどうしてそのようなことになるのか、はっきりとした結論にはなっていないと思われます。
どんな犬種であれ長く一緒にいれば必ず老化にともなう変化が表れてくるでしょう。一日でも長く楽しく暮らしていくためにも、犬たちの日ごろの様子によく気を配り健康を保ってあげましょう。