愛犬が言うことを聞いてくれない理由は
犬が飼い主さんの言うことを聞かなくなる理由は、大きく分けるとふたつになると思います。ひとつは飼い主さんの言葉や指示を理解できていない。そしてもうひとつが飼い主さんとの信頼関係が築けていないということです。
言葉や指示を理解できない
当然ですが犬は人間の言葉を理解することは出来ません。ご家族で犬を飼っているお家では、何人かでしつけをしていると思いますが、言葉は統一できていますか?子犬で迎え入れた頃は、しつけにも一生懸命で、家族一丸となって統一したコマンドでしつけをしていたと思いますが、成犬になり慣れてきた頃から言葉がバラバラになっていませんか?
すっかり家族の一員となると、ついつい人間に話しかけるように普通に話しかけることがあると思います。
愛犬に話しかけるのは良いことですし、それでもコマンドが通じる、言うことを聞いてくれるのであれば問題ないでしょう。しかし、言うことを聞いて欲しいタイミングで普段のように話かけ、家族によってバラバラの言葉で指示を出すと言うことを聞いてくれない場合には、犬は飼い主さんの指示を理解することが出来ず、迷っているのかもしれません。愛犬が言うことを聞いてくれなくなったとき、今一度、家族で言葉を統一することを意識してみましょう。
信頼関係が築けていない
飼い主さんと愛犬の間には信頼関係が必要です。この信頼関係がしっかりと築けていないと、犬は飼い主さんの言うことを聞かなくなります。犬が飼い主さんを信頼するとは、「この人と一緒にいれば安心だ」と感じていて、「自分の希望とは違っても、この人が言うことには従わないと。」と犬が思っていることです。人に飼われているペットと言う存在で、犬には人間社会の最低限のルールを覚えて守ってもらう必要があります。それには飼い主さんと愛犬の間に信頼関係がしっかりと出来上がっていて、犬の希望と反対のことであっても飼い主さんの言うことにはきちんと従えるかどうかが重要になってきます。
犬の祖先が大昔、野生動物だった頃、群れで生活をし群れのリーダーに従いながら生きていました。リーダーに従って行動しないと自分や群れが危険にさらされるからです。その習性がペットとして飼われている犬にも残っていて、飼い主さんを信頼できるリーダーと認めていれば飼い主さんの指示に従いますし、飼い主さんを信頼することが出来ずリーダーだと認めていない場合には、犬は自分の意思で行動し、自分の主張を通そうとします。
近年、権勢症候群(アルファシンドローム)が否定されて以降、犬が上下関係を作ることを全否定したり、飼い主さんがリーダーシップをとることまでも否定する意見も見受けられます。しかし、犬が安心して人間社会の一員として暮らしていくためには、飼い主さんが犬の安全を守ることができるリーダーとなり、犬に人間社会で暮らしていくルールを守らせる必要はあるのです。犬が飼い主さんを「この人には頼れない」と判断すれば、犬は自分の身の安全を守るために自分で考えて行動するようになり、それが飼い主さんにとって「言うことを聞かない」という状態になるのです。
あまりにも言うことを聞いてくれなくて困っている時は、あらためて信頼関係が正しく築けているか、考えてみると良いと思います。
「子犬の頃は言うことを聞いてくれたのに」という意見も多く聞かれます。犬も、幼い頃は教えられたことを無条件に受け入れても、成長につれて自我が芽生えてくるとそうはいかなくなることが多くあります。そんな時期に言うことを聞かせようと、愛犬のご機嫌をとるために犬の主張を全て受け入れていたり、無理なトレーニングを行うと、その後のしつけがうまくいかなくなることがあります。自分たちだけでのしつけが難しい時には、プロのトレーナーさんの助けを借りながら、愛犬の性格や成長ステージに合った方法でしつけを行いましょう。
犬が言うことを聞いてくれない時の対処法
言葉やジェスチャーを統一した指示にする
犬のしつけをする時に1番基本的なことです。例えば犬にお座りをさせるにも「お座り、座れ、シット」などの言葉が使われると思います。言葉の指示と同時にジェスチャーもつけていませんか?我が家はお座りの時は人差し指を立てて犬に見せています。もしジェスチャーもつけて指示を出しているのでれば、言葉も含め全て家族間で統一してしつけをしましょう。
どなたか一人だけが頑張っても意味がありません。家族みんなが同じ行動をとる事によって、犬も迷うことなく理解しやすくなります。
甘やかさない
一緒に暮らしている愛犬は、目の中に入れても痛くないんじゃないかと思うくらい可愛いですよね。甘やかしてしまう気持ちも凄く良く分かります。ご飯やオヤツの要求、お散歩の時に犬が行きたい方向に行かせてしまう、遊んでほしい、一緒に眠ってほしい…、など甘やかすタイミングは数え始めるとキリがありません。
しかしこれらの要求に全て応じていると、犬はどんどんわがままになって、さらに言うことを聞かなくなってしまいます。「甘やかす」とは、「いつでも犬の言いなりになっていて、飼い主さんの主張を通すことがない。犬の要求と飼い主さんの希望が違っている時に、犬に要求が通るのを諦めさせることをしない。」ということです。今まで愛犬との接し方はどうでしたか?わがまま、犬の主張ばかり通ることを許し続けていたのであれば、一度考え方を変えて、ダメなものはダメと貫き通し、犬に「主張が通らないこともある。諦めることが必要なこともある。自分がどうすべきかを決めるのは飼い主さんなんだ。」と理解させてあげましょう。
生活環境を見直す
ケージやサークルを使用せず家の中で、愛犬をフリーで飼われているご家庭もあると思います。確かにケージやサークルを使用せず、つねに犬を自由にさせている事でストレスを感じず、のびのびと過ごせる犬もいるかもしれませんが、多くの犬は安心できる自分のハウスを必要としています。自分のハウスがない事が飼い主さんの思いとは逆にストレスになってしまうのです。それは、絶対的に安心して過ごせる適度な狭さの場所がないことで、広い縄張り(リビング全体や家全体)を守らなければと気を張り詰めていたり、何か不安や恐怖を感じた時に逃げ込める場所がないからです。
また、飼い主さんと愛犬の生活空間を適度に分けるためにもハウスは必要です。飼い主さんが使用するソファーやベッドを犬が自由に使用するのはダメことではありませんが、犬は飼い主さんが降りて欲しいと思う時には降りる必要がありますし、飼い主さんが家にいる間中飼い主さんべったりで過ごさせていると、お留守番が苦手な犬になったり分離不安症を起こしやすくなったりします。犬が言うことを聞かない原因は、もしかすると生活環境にあるかもしれません。安心して過ごせる自分だけのハウスがなかったり、生活空間に不安の原因となるもの(外からの騒音や人通りの多い外が見えることなど)があるのかもしれません。ハウスがないご家庭はケージやサークルを用意し、飼い主さんが家にいてもハウスで安心して犬がひとりで過ごせるようにしてみましょう。
信頼関係を築く
上記に書いた3つの事は信頼関係を築く上でどれも大切なことです。
その3つ以外にも、お散歩の仕方や、愛犬が嫌がることをした時の対応、おやつやご飯のあげ方、おもちゃの管理の仕方などによって、愛犬と飼い主さんとの信頼関係がより強くなったり逆に失われたりします。
もしも基本的なお座りなどのしつけが出来ていない場合は、これらの基本的な生活習慣を見直すと共に、犬にお座りなどを教える方法を飼い主さんが学ぶ必要もあります。しつけには、褒めることが不可欠です。褒めるとは、おやつをあげるだけではありません。褒めることが苦手だったり、褒め方が分からない方は、犬が喜ぶ褒め方を知り練習する必要もあるかもしれません。
よく「お座りやお手などは完璧なのに、呼んでも来ない。ダメって言ってもやめてくれない。」と言う人もいます。それは、お座りやお手などの動作が単なる芸になっていて、「飼い主さんが言ったから、それに従わなきゃ。」と犬が思っていないからです。「お座りやお手をすれば、おやつがもらえる。遊んでもらえる。」と思って芸をしているだけになってしまっているのです。言われもしないのにお座りやお手をして、嬉しそうにご褒美を待つのも同じことです。
そのような「芸」ができることももちろん良いことなのですが、「芸ができること」と「飼い主さんの言うことを聞く」ことは全く別物だと考え、愛犬が必要な時にはいつでも言うことを聞いてくれるよう、愛犬と強い信頼関係で結ばれた飼い主さんになりましょう。
してはいけない事
愛犬が言うことを聞いてくれないとき、あらためて自分自身の行動や、愛犬に対してのしつけの仕方などを考えると思います。どんなに頑張っても上手くいかなくてイライラしてしまう時もありますよね。
犬は人間の感情を察知するのが非常に得意です。感情にまかせて叱ったり、暴力をふるったり絶対にしないでくださいね。叩く真似だけでもダメです。信頼関係が崩壊してしまいます。何か犬が失敗した時は、飼い主さんは大らかな気持ちで冷静さを保つことが必要です。そして、何が正しい行動なのかを教えること、犬がまた失敗をするような環境を作らないことが重要です。
まとめ
我が家は4歳になる愛犬と暮らしています。確かに以前は普通に出来ていたことが、急に出来なくなったことも何度かありましたが、そのつど根気良く教えてあげたり、原因を考え何かしらの工夫を行っています。解決したこともあれば、模索中のものもあります。
人間の人生も死ぬまで勉強と言う言葉があるように、犬も何歳になっても、適したしつけはずっと必要なんだと思います。