犬の記憶力について
みなさんは愛犬の記憶力はいいと感じますか?悪いと感じますか?
多くの飼い主さんは「場面によって違う」と思うのではないかと思います。おやつがある場所や注射で痛い思いをした病院のことなどはよく覚えているかと思いきや、さっき叱ったばかりのいたずらをまたくり返している…などということはよく見られることです。そのちぐはぐとも言える犬の記憶に関する能力には、“記憶の種類”の違いが影響しているのです。
短期記憶とは?
まず犬が持つひとつめの記憶の種類に「短期記憶」というものがあります。短期記憶は外部からの情報が刺激による一時的な記憶で、人間の場合は数十分程度保持されるのに対して犬の場合はわずか数秒しか保持されないと言われています。実は犬はこの短期記憶がとても苦手のため、直前に叱られたいたずらや粗相をくり返してしまいがちなのです。
長期記憶とは?
犬が持つもうひとつの記憶である「長期記憶」とはその名の通り長期間にわたって保持される記憶のこと。その期間は一生涯にわたることもあり「生涯記憶」などと呼ばれることもあります。特に情報の意味がしっかりと理解できたり、感情や感覚など他のものと関連付けられたり、くり返し起こったりするようなできごとは強く記憶されるため長期記憶になりやすいとされています。どんなに物覚えが悪いと言われる犬でも飼い主のことを決して忘れないのは、この長期記憶によるものなのです。
犬の記憶力は鍛えられる?
犬の記憶力は主に短期記憶と長期記憶に分けられますが、この記憶に関する能力を鍛えることはできるのか気になりますよね?この分野においての研究はまだあまり多くは行われていないのですが、現時点では犬の記憶力そのものを意図的に鍛えることはむずかしいと考えられています。人間の場合は語呂合わせや関連付けなど記憶する上でのコツなどを学ぶことができますが、犬の場合はそうした記憶のテクニックなどを理解することができない上に「記憶力を伸ばしたい」という意思がないため人間と同様の方法では記憶力を鍛えることがむずかしいと考えられます。
犬の記憶力を理解してしつけ上手になろう
犬の記憶力を鍛えることはできなくても、犬の記憶力について飼い主がしっかりと理解することでしつけやコミュニケーションに応用することはできると思います。
まず犬の短期記憶は非常に短く長くても6秒程度だと考えられているため、犬の行動に対してほめたり叱ったりというリアクションを返すときは6秒以内でないと何をほめられている/叱られているのか理解できないと言われています。そのため、留守番中にしたトイレの失敗やいたずらを飼い主が帰宅後に叱っても犬には理解ができず意味がないのです。
犬にしっかりと記憶させて行動を覚えさせるためには短期記憶によるトレーニングをひたすらくり返すことが大切です。おすわりや待てなどのしつけも“できたらほめる”ということを毎日短時間でいいのでくり返し行うことが必要。くり返し行うことは短期記憶を長期記憶へと変化させるための重要なポイントとなります。その日は覚えたと思っても長期記憶として定着していなければすぐに忘れてしまうのです。
犬に記憶力に関するまとめ
ここでは犬の記憶力について考えてきましたが、実は犬の記憶力についてはまだまだ解明されていない部分が多くわからないこともたくさんあります。現在でも犬の記憶力が学習能力などについては世界各国の科学者や研究者が解明のための研究を進めています。犬の記憶力ついて知ることは、犬のしつけやコミュニケーションの質を高めることにもつながります。「しつけがうまくいかない」など犬との接し方に悩んでいる場合は、ぜひ犬の記憶力を上手に利用して関わり方を考えてみてくださいね。