飼い主が苦手な人は犬も苦手になりやすい
犬は「犬嫌いな人」や「犬好きな人」を、その態度や表情などから見分けることができるとされていますが、その観察能力はそれ以外の場合にも発揮されます。
犬自身に対する人の態度や行動だけでなく、いつも一緒にいる飼い主が他の人に対して取る態度や行動も観察して、その気持ちを読み取っていると考えられているのです。
飼い主が友好的な態度を取っている相手に対しては、犬も友好的に接し、飼い主が苦手と感じていたり、敵対視したりしている場合には、犬もその相手を敵とみなす可能性が高いのです。
出会った人に対する犬の反応についての研究
犬が飼い主の態度や行動を観察して自分の態度も変化させることは、いわゆる社会的参照行動として知られるもので、人間の子供にも見られる行動です。
判断力や経験値の低い小さな子供は、見知らぬ人と出会ったときに、まず両親など身近な大人の反応を確認するとされています。
フランスのエクスマルセイユ大学で、シャルロット・デュラントン氏が行った研究では、見知らぬ人間に対して飼い主が近寄る・立ち止まる・距離を取るといった行動を見せると、それに応じて犬の態度も変わるということが分かり、科学誌『アニマル・ビヘイビア』に掲載されました。
この研究の中で、犬は実験者と飼い主を交互に見る「参照的注視」をする行動が見られました。
飼い主が実験者から遠ざかった場合と、立ち止まった場合に、犬はすばやく、かつかなり時間をかけて実験者を見つめる傾向にあり、飼い主が警戒していると感じた場合に、犬自身も実験者を警戒する様子が見られました。
飼い主をより観察する犬種とは?
犬は飼い主の態度や表情、また緊張したときの汗のにおいなどから、相手に対する気持ちを感じ取ることができると考えられています。
その中でも、オス犬に比べてメス犬の方がより多くの情報を得るために、飼い主のことを細かく観察しているということがわかっています。
また、個体差はもちろん犬種によっても、観察具合や反応の違いに傾向があることが分かり、シェパードやレトリバー種など、人と一緒に働くことを好む犬種に比べて、ブルドッグやマスティフなどのモロサス犬種の方が独立心が強く、飼い主の態度に影響されにくいということが分かっています。
<まとめ>犬は飼い主の敵を見分けられるのか
ふだん愛犬と一緒に暮らしている人はよく分かると思いますが、犬は私たち飼い主のことをよく見ていますよね。
飼い主のちょっとした仕草や行動で犬は散歩やご飯、おやつなど自分に関係のあることが起こるタイミングを瞬時に察知しますし、声色の変化やため息などにも敏感に反応します。
犬にとって見知らぬ人や慣れない人に会ったとき、犬がどのような態度を取るかは飼い主の態度や行動次第とも言えます。
犬が行う「参照的注視」は、しつけにも応用することができ、外で他の人や犬と出会ったときに友好的かつ落ち着いた態度で接することができる犬に育てるためには、まず飼い主が見本となるような態度を示すことが大切などと考えられています。
散歩中などに人と出会ったときには、犬にとってもお手本に慣れるような態度を心掛けましょうね。