犬はどうやって「学習」をしていくのか

犬はどうやって「学習」をしていくのか

私たち飼い主は、愛犬となった犬に対して、人間社会で生きていくために、いろいろなことを教える責任があります。人間と犬が一緒に暮らす時、犬の社会で生きている時よりも、人間の生活環境や人間の価値観などを学ばなければいけません。私たち人間が教えることを、犬はどんな過程を経て、学習していくのでしょうか?

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犬はどうやって「学習」をしていくのか

眼鏡をかけている犬

動物の行動学でいう「学習」とは?

「学習する」とは、なんとなく意味が分かっていて、ふだんからよく使う言葉で、「勉強する」と言う意味に使うことが多いと思います。けれど、今回の「学習する」は動物において使う場合だと少し意味が変わります。

動物の行動は、本能によって行動する「本能行動」と、何らかの経験を経て、後天的にできるようになる行動を「学習行動」、あるいは「試行錯誤行動」と言います。また、経験によって行動が変化することを「学習」とも言います。
犬の躾やトレーニングなどは、この「学習行動」と呼ばれる行動に当たります。

動物行動学上の「学習」の種類

ːフリスビーを失敗する犬

条件付け

オペラント条件付けとレスポンデント条件付けがあります。

試行錯誤

何度も失敗し、改善を繰り返して、だんだんと誤りを減らしていくことを「試行錯誤」と言います。

条件付けの種類

ːお手をする犬

オペラント条件付け

オペラントというのは行動の分類の一つです。オペランド条件付けは、報酬や罰と言った刺激を与えることを条件に学習するという方法です。

愛犬の問題行動を改善するためにこのオペラント条件付けを使って学習させるのであれば、「何かかできたらご褒美がもらえる」という方法と、「何かができなかったら罰を受ける」と言う方法、「何か悪いことをしたので、罰を受ける」と言う方法が考えられます。

レスポンデント条件付け(古典的条件付け)

前足を上げている犬

レスポンデント行動は、特定の刺激に誘発される行動で、反射や本能行動がこのレスポンデント行動に含まれます。
無条件刺激と中性刺激を同時に与えることを繰り返すだけで、中性刺激が誘発刺激に変化するのが、レスポンデント条件付け(古典的条件付け)です。

有名なパプロフの犬の実験が、このレスポンデント条件付けの証明としてよく引用されています。
人間でいえば、「梅干しを見ただけでヨダレが出てくる」と言った反応で説明ができます。つまり、「梅干しはすっぱい」ということを既に学習している(無条件刺激)ので、「梅干しを見る」という行動が「誘発刺激」となって、梅干しを見るだけで唾液が出てくる…、と言った現象が起こるのは、「レスポンデント条件付け」による学習の結果と言えます。

問題行動の改善に役立つ「学習」の事例

手と前足を合わせる犬

人間にとって「問題行動」と見える愛犬の行動も、実は犬の立場にしてみれば、何かその行動を取る理由があります。けれども、飼い主さんにとってその行動が問題であるなら、それは全て「問題行動」と言えます。

つまり、問題行動を起こす理由を知れば、問題を解決できる方法を知ることができる、という事です。犬が問題行動を起こす理由を知れば、それに対応するように犬に「学習」をさせます。そうすることで、問題行動が改善していきます。

では、「学習」を利用すると、どんな問題行動を改善できるのか、いくつか事例を挙げてみましょう。

  • チャイムの音に反応して吠える
  • トイレを失敗する
  • 人に飛びつく

「チャイムの音に反応して吠える」ことへの学習を利用した改善策

怒る犬

客が来る、来ないに関わらず、チャイムが鳴ったらけたたましく吠えたてる、という愛犬の問題行動に悩む飼い主さんは多いようです。

犬の性格や、なぜチャイムの音が鳴ったら吠えるのかを、愛犬の性格と照らし合わせて考えて対処法を考えると、改善策を取ることができます。

「オペラント条件付け」と「レスポンデント条件付け」を利用した学習

「チャイムが鳴ったら、ハウスをする」と「おやつが貰える」あるいは、「チャイムが鳴ったら、マテをするとおやつが貰える」と、犬に学習させます。

最初は、「ハウスをするとおやつが貰える」と言う条件付けの学習になりますが、徐々に「チャイムがなるとハウスに入る」と、条件反射のようになっていきます。この方法は、「オペラント条件付け」を経て、「レスポンデント条件付け」へと移行していく学習の方法です。

「試行錯誤」を利用した学習

最初は、チャイムが鳴ったら吠えたてますが、飼い主さんは全く動じず、犬にも無関心でいることを示します。それを何度も繰り返して、「チャイムが鳴っても何も起こらない」と犬に学習させる方法です。

「トイレを失敗する」ことへの「学習」を利用した改善策

トイレをする犬

人間の生活空間で犬も一緒に暮らすのであれば、室内でも上手に排泄できるように自分のトイレの場所を覚えさせる必要があります。

「試行錯誤」と「オペラント条件付け」を利用した学習

最初から失敗なくトイレができる犬は滅多にいません。「失敗」しても叱らず、成功したら褒める、その繰り返しで、トイレの失敗を
徐々に減らしながら、トレーニングを進めていきます。

これは、「失敗を繰り返しながら、改善を目指す」、「試行錯誤」と、「成功したら褒めて貰える」という「オペラント条件付け」を利用して、犬はトイレの場所を学習しているのです。

「人に飛びつく」ことへの「学習」を利用した改善策

まじめな顔のビーグル

飼い主さんが大好きな犬なら、その感情があふれて止まらず、無邪気に飼い主さんに体当たりするように飛びついてくることがあります。

けれども、体重が30キロ以上ある犬に飛びつかれたら、転倒してしまったりして、飼い主さんが思わぬ怪我をしてしまうこともあります。

そんな事故を防ぐためにも、愛犬の「飛びつく」と行動を止めさせるための学習が必要になります。

「オペラント条件付け」を使った学習

まず、飛びついてくる前に「おすわり」か、「マテ」の指示を出します。それができたら、「ご褒美」を与えます。

「ご褒美」としておやつを与えてもいいですし、飼い主さんの言葉や態度で思い切り褒めてあげても良いです。

この場合は「オペラント条件付け」の学習方法で、「飛びつく前にオスワリをする」という条件を満たせば、「オスワリをすれば褒めてくれる」と犬が学習したことになります。

まとめ

見上げる犬

「オペラント条件付け」「レスポンデント条件付け」「試行錯誤」も、心理学用語です。動物にもそれが当てはまるとは驚きでした。

愛犬の問題行動を改善するためには、その犬の性格を考慮した方法を取る必要がありますが、どんな方法を取るにしても、犬の心理を知っていれば、多少失敗をしても「これは試行錯誤をしている最中だ」と寛大な気持ちになれるかも知れません。

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