犬の飼育放棄とは?
愛犬家は、愛犬を心から慈しみ愛しています。愛犬が幸せなまま、一生を終えるまでずっと愛し続けます。
心身ともに健康でいられるように、食事や運動に気を配り、快適に暮らせる環境を整えます。
それが当然と思っています。しかし、現実は、私たちのような飼い主ばかりではありません。
寒暖差のある外に住まわせ、散歩にも連れて行かず、食事は、汚れた食器に安価なドックフードを与えるだけ。排泄物も、ろくに処理せず、不潔な場所にずっと繋ぎっぱなし。
そんな飼い方をされている犬を見たことはありませんか?
飼い主さんからすると、それでも犬を飼っていることになるので、「飼育放棄」している自覚はないのかも知れません。
しかし、犬の習性からすれば、こんなに残酷な仕打ちはありません。
私が目撃した飼育放棄のケース1
炎天下の駐車場で飼われていたシーズー
そのシーズーは、気温40℃を超えるような真夏でもトリミングにいかず、毛玉だらけで、被毛は伸び放題でした。
たまに、飼い主さんがハサミか、バリカンで刈り上げるのか、丸裸に近い姿になることがあり、その時だけ、そのシーズーの顔立ちがはっきりとわかりました。片目が白内障なのか、白く濁っていました。
冬も、小さな木で出来た小屋には、毛布が敷かれただけで、風よけもありません。
排泄物は、一日一回、ホースで飼い主さんの家族が流すので、そのシーズーの小屋の周りは水浸しになりました。
夏、特に暑い日の日中に、私はそのシーズーの小屋の近くに、牛乳パックに入れて凍らせた大きな氷を置いたことがありました。
吹き付ける熱風が少しでも涼しくなるようにと置いたつもりでしたが、そのシーズーは、その氷にぴったりと体を寄せて涼んでいました。
飼い主さん一家は大人ばかりの世帯で、昼間はみんな外出しているのか、シーズーの側に大きな氷が置かれていることも、全く気が付きませんでした。
私は、「このおうちに飼われていても、このシーズーは幸せではない」と思っていました。
でも、あまりにもご近所過ぎて、「あなたの飼い方は犬を不幸にするから、私にシーズーを譲ってください」とは言えずにいました。
それでも、飼い主さんが大好きだった
私は、飼育放棄されているそのシーズーのことを、飼い主さんに構われず、体に触れられることもなく、不幸な犬だと思い、可哀そうに思っていました。
そのシーズーの飼い主さんの家には、ミニチュアダックスとトイプードルがいました。
その2頭は家の中で飼われているのに、なぜ、シーズーだけが外飼いされて、飼育放棄にすら見えるような環境で飼っているのか、その事情はわかりません。
でも、3頭が一日一回の5分程度で終わる散歩に連れ出されていく時、キレイにトリミングされた2頭の前を、しっぽをピンとまっすぐ上に立てて、誇らしげに歩くシーズーの姿を見ました。
餌をくれたり、毎日、排泄物を洗い流す奥さんよりも、一日一回きりの散歩に連れて行ってくれるご主人を見上げて、千切れそうなほどしっぽを振って、喜びを体いっぱいに表しているのを見た時、私はショックを受けました。
汚れ切ったモップのような姿をしていても、シーズーは、自分が不幸だとは思っていなかったのです。
どんな心無い仕打ちを受けていても、そのシーズーは、ご主人が大好きでした。
ほんのわずかな時間、一緒にいられることだけがそのシーズーの生きがいで、その時間以外は、死んでいるのと変わりないほど味気ない時間なのでしょう。
私がそのシーズーの飼い主なら、もっともっと「飼い主さんと一緒にいられる」という幸せを感じさせてあげられるのに、しかし、そのシーズーは自分に与えられている幸せの分量だけで満ち足りていて、飼い主さんと引き離されることなど望んでいないのだとわかりました。
私が目撃した飼育放棄のケース2
鉄格子の中で飼われているバーニーズ
私の愛犬、アメリカンコッカースパニエルのめいぷるとの散歩は、ほぼ毎日、コースを変えて、約30分ほど歩きます。その中で、高級住宅街の中を散歩するコースがあり、その途中、手作りの檻の中でバーニーズを飼っているお家の前を通ります。
その檻に書かれている名前から察すると、どうやらそのバーニーズは男の子のようでした。体重は、おそらく50㎏以上はあるでしょう。
でも、その檻は大きなバーニーズがオスワリした状態くらいの高さしかなく、広さは、畳1畳程度です。
床は、網状になっていて、排泄をすればその下に落ちるようになっているようで、そのお家の人が夕方になると、ホースでその檻の下へ水をまき、排泄物の掃除をしていました。
そのお家のご近所の人によると、バーニーズを連れて来たのは娘さんだったそうです。しかし今はその娘さんはお家を出てしまい、バーニーズだけが実家に残ったのだとか。
力が強くて、散歩に連れて行ったご主人が引っ張られて腕を痛めてしまい、散歩に連れて行けるのは娘さん一家が帰省している時だけらしい、と聞きました。
これは、現在飼っている親御さんご夫婦の飼育放棄ではなく、娘さんの飼育放棄ではないかと私は思います。
飼い主の飼育放棄によって、殺処分される犬
現実に、昨年、行政によって殺処分された犬の頭数は、5万頭を超えています。
そのうち、1万5千頭が飼い主からの持ち込みです。
持ち込み以外でも、所有者不明の上、引き取り先もなく、1万頭の犬が殺処分されました。
持ち込みの場合だと、自分が飼っていた犬を持ち込むケースもあれば、悪徳ブリーダーや、多頭崩壊による持ち込みの数も含まれています。
所有者不明、という事は、野犬が保護されたというケースもあるとは思いますが、自分の犬が行方不明になっても、保健所に問い合わせもせず、放置している飼い主もいる、という可能性も考えられます。
いずれにせよ、人間の身勝手で、毎年たくさんの犬が殺されています。
私は、「飼えないから」と自分の飼っていた犬を保健所に持ち込む人間と比べれば、自分の飼い犬でありながら、死なないように餌を与え、排泄の処理をするだけであっても、「飼育放棄」する人間の方がまだ許せる気がします。
飼育放棄されている犬を保護したい時
「保護する」と言うのは、動物保護団体の方に助けを求め、その犬を保護団体に引き取ってもらうことではありません。
「飼育放棄されている犬を見つける」→「保護団体に連絡する」と言う行動だけで、その犬を助けた気になるのは、自己満足に過ぎない、という考え方もあります。
今回は「里親を探す」…と言う形ではなく、「自分がその犬を引き取って飼育する」という意思のもとに行動する場合についての記述といたします。
飼育放棄は、動物虐待に当たる
日本には、「動物の愛護及び管理に関する法律」という法律があります。
この法律には、動物虐待の定義が明記されていて、その中には飼育放棄も含まれています。
平成22年には、環境省から各都道府県の動物愛護に関わる部署の最高責任者宛てに飼育改善の指導が必要な例についての指針が示されています。
このことから、実際に暴力などを振るわなくても、ネグレクト(飼育放棄)も動物虐待と見なされ、第三者からの通報があれば、警察や保健所などの行政機関は、動物虐待をしている疑いのある飼い主に対して、現状の確認を行わなければならない義務が生じます。
警察、保健所に通報することでのリスク
飼い犬を飼育放棄している自覚なく、惨い目に合わせている人のところへ、「保健所」なり、「警察」なりの行政機関の人が指導を行っても、あまり効果が見られないこと方が多く、改善どころか、犬がどこかに移されてしまったり、遺棄されたりすることがあります。
近隣の保護団体にコンタクトを取り、相談してみる
ですから、いきなり警察に相談するよりも、まず、近隣で活躍されている保護犬、保護猫をレスキューしている団体さんにコンタクトを取り、アドバイスを貰った方が良い結果をもたらすのではないかと思います。
ホームページやブログなどでたくさんの経験を積んでいることを確認した後、メールだけはなく、電話したり、直接会って話をして、信頼できる団体かどうかは、自分の責任で見極めましょう。
そして、「私が引き取る用意があります。」としっかりと意思を伝えて、どのように行動するべきか、どのように協力してくれるのかの相談を重ねます。
まとめ
「保健所に持ち込む飼い主より、飼育放棄しているように見えても、愛犬の命を繋ぐための最低限の世話をしている飼い主の方がまだ許せる気がする」と思うものの、どちらも動物を飼う資格などないとも思っています。「動物を飼う」という事は、ただ生かしていればいいというものではありません。「愛犬」「愛猫」「鳥」と言う言葉があるように、飼い主さんが「飼い犬」には、生きていくための栄養や、病気にならないための住環境だけではなく、「愛」も与えるべきなのではないでしょうか。「愛」を与えられず、ただ死ぬまでの時間を費やすだけの命を見つけた時、あなたの中の「愛」をその犬が最期を迎えるまで与え続け、看取る覚悟が出来るなら、ぜひ、行動を起こしてください。