嬉しいとき、運動した後、寝ているとき、ちらりと見える犬の舌。愛すべき部位のひとつですが、犬の舌の構造は人間とは大きく違っています。また、舌には健康状態を示すバロメーターでもあります。
ここでは、犬の舌の構造や、味覚をはじめとしたその機能、色による体調変化など、犬の舌に関することを説明して参ります。
犬の舌
舌の構造
犬の舌は、人間よりも細く長い形をしています。犬の舌は表面を粘膜で覆われ、その内部は筋肉でできているため、人間のものと比べてかなり複雑な動きが可能です。
自身のグルーミングや食べ物を舐め取るときに、器用に動かします。またたくさんの水を飲むときには、舌を裏側に丸め、水をすくうようにして飲むこともできます。
味覚
犬に味覚はあるのか
「犬は味音痴」「味を感じない」などという話はよく聞きますが、犬にも味覚はあります。味覚を感じる細胞は人間も犬も同じで、突起状になった「味蕾(みらい)」という細胞です。
人間の舌には、約10,000個の味蕾細胞が存在しており、口に入れた物の味を細かく感じることができます。一方で、犬の味蕾細胞は約2,000個。人間に比べるとかなり少なく、味を感じることに関して鈍いことがわかります。しかし、味蕾細胞自体は存在しているので、味を感じない訳ではありません。
犬はどんな味を感じるのか
犬の感じる味については研究途中であり、はっきりとしたことがわからない部分も多くあります。現在わかっているのは、甘味・酸味・塩辛味・苦味を感じるということ。そして、肉の旨味を感じているのではないかということです。
甘味
犬は甘味をもっとも強く感じます。特に果物や砂糖の甘味成分への反応が強く、雑食ならではの味覚を持っています。つまり、犬は甘い食べ物を好む動物だと言えます。一方で、猫は甘味を感じないことが、近年の研究によりわかっています。
酸味
犬は甘味ほどではないですが、酸味にも敏感です。食べ物が腐っていないか判断するためだと言われています。
塩辛味
犬は塩辛味にはかなり鈍感です。これは、肉食の名残であり、口にした肉の血液に塩分が含まれているためだと言われています。
苦味
犬は甘味ほどではないものの、苦味も感じることができます。これは、体に毒となる物を体内に入れないようにするためだと言われています。苦味を感じると口に入れた物を吐き出すことが多く、躾用品に苦味がつけてあるのも、その性質のためです。
旨味
旨味については、犬は感じないという説と肉の味として感じるという説があり、詳細はいまだ不明です。
嗜好性
犬には嗜好性があります。嗜好性とはその食べ物を好んで食べるかということです。その要素となるのは、匂いが最も強く、一部は上記のような味覚、見た目や食感が影響していると言われています。犬の好き嫌いは舌で感じる味だけによるものではなく、主に嗅覚から判断していると言えます。
舌で健康チェックも!
犬の舌は健康のバロメーターです。定期的にチェックして、健康状態に異常はないか確認しましょう。健康な犬の舌はピンク、又は濃いピンク色です。
白
貧血
犬にも貧血は起こります。中でも舌が白くなる場合は重度。貧血に陥っているということは体内が酸欠状態にあるということで、速やかな処置が必要です。
ショック症状
何らかのショック症状により、臓器が酸欠状態にある場合も舌が白くなります。この場合ぐったりと元気がなくなることが多いです。
紫
チアノーゼ
チアノーゼとは、血液中の酸素が欠乏し、皮膚や粘膜が青黒くなることです。この場合、心疾患や呼吸器疾患などの重篤な病気によることが多いので、すぐに病院へ連れて行きましょう。
黄色
黄疸
肝臓の病気や機能低下により、犬にも黄疸が出ることが。すぐに検査が必要です。
赤
唾液腺嚢腫
赤くしこりがある場合、唾液腺嚢腫が考えられます。皮下組織に唾液が漏れて溜まってしまう病気で、外傷や感染症などが原因として挙げられます。見つけたらすぐ病院へ。
舌炎
外傷による炎症。痛みがあるので、食欲が落ちることも。
黒
メラノーマ
メラノーマとは悪性黒色腫のこと、癌の一種です。犬の場合、口内の発症率は高く、原因は解明されていません。
舌斑
生まれつきの痣のようなもの。成長するにつれ大きくなったり増えたりしますが、健康に何も支障はありません。古い歴史を持つ犬種によく見られます。
適切な食事と体調管理を
上記のように、犬の舌には人間とは違う様々な特徴があります。犬が喜ぶからと甘い糖分を含む食品を与えすぎないこと、味を感じにくいからと味の濃いものを与えないこと、これらは犬の健康な体を保つために必ず守りましょう。
また愛犬の体調変化にいち早く気付くことのできるよう、舌の状態チェックを習慣づけましょう。