犬は法律上『物』である現実
犬を動物やペットといった認識ではなく、我が子や家族同然といった想いが強いほど、「うちの子」といった表現はもちろん、愛犬のことを「犬」と表現することも少なくなってきています。
そのため、飛行機やお店を利用する際に、『持込禁止』といった表現や荷物として扱われる現実に、少なからず不満や疑問が出る飼い主も少なくありません。
しかし、日本の現在の法律上では、犬は生き物であるにもかかわらず、カテゴリとしては『物』として分別され、亡くなった場合も生ゴミとして捨ててしまうことができるほどなのです。
人間が物として扱われ、死亡後に生ゴミとして扱われたら大問題ですが、犬だとそれが許されてしまうというのが、物である何よりの証拠と言えます。
犬は夫婦の財産分与対象となる
たとえ犬が日本の法律上『物』であったとしても、当たり前ですが実際に、愛犬をただの物として見たり扱ったりする飼い主はいません。
そのため、いざ離婚となった場合、どちらが愛犬を引き取るかは、どちらが子供の親権を得るかと同じ問題です。
ですが、犬は物なので親権というものはなく、夫婦の共有財産となり、財産分与の対象として扱うことになります。
しかし、いくら何でも生きているものを半分に割ることはできないため、ここでは親権ではなく『所有権』の争いとなるのです。
財産分与の必要がないケース
犬は財産分与の対象となりますが、それはあくまでも結婚後に、共有の財産として二人で犬を飼った場合に限ります。
つまり、結婚する以前に夫か妻のどちらかが既に犬を所有していたのであれば、それは共有財産ではなく、『特有財産』です。
特有財産とは相続・贈与など、一方の管理や協力とは無関係で得た財産や、結婚以前に既に所有していた財産を指し、これらは共有財産から外れることになります。
犬を引き取るための所有権を得る3つのポイント
では、特有財産ではなく共有財産となった場合、どうすれば犬の所有権を得ることができるのでしょうか。
お互いに円満に話し合って、スムーズに解決すれば問題ないのですが、我が子同然またはそれ以上の存在であるからこそ、絶対に譲りたくない問題でもあります。
しかし、こうした問題を感情ではなく、現実的に解決するためのポイントがありますので、そちらをひとつずつご紹介しましょう。
犬の好意はどちらの方に大きく向いているか
生涯を共にする上でまず大事なのが、犬は夫と妻のどちらに多くの好意を寄せているかです。
たとえ同じように可愛がっているつもりでも、犬にとっては妻より夫、夫より妻といったふうに少なからず好意に順位をつけていることがあります。
そのため、よく犬を飼っている人との会話の中でも、「私よりもお父さんの方が優しいからお父さんにべったりなの!」「妻の方が一緒にいる時間が長いためか、自分と妻だと絶対妻の言うことの方を優先させるんだよな。」といったような会話を耳にしますよね。
所有権を得る上で、犬がどちらの方により大きく好意をもっているかは、とても大事なポイントのひとつとなります。
犬の生活環境は整っているか
犬を飼うということは、犬にとって最適な生活環境を提供する必要があるということです。
犬は運動量も多く、犬種によっては、飼育管理もより気を付けなければならないことがあります。
しかし、引き取ったものの狭い部屋に閉じ込めるような形を余儀なくされたり、空調管理なども十分に整えることができず、特に夏場など熱中症の危険性が高くなってしまったりする可能性があるなど、犬にとって快適な生活環境が提供できない状況はNGです。
犬を経済的に支えることができるか
犬を飼うためには一定の経済力も必要になります。
万が一、病気や怪我をしたときは治療費がかかりますし、逆にそうした万が一に備えて保険に加入したり、定期的な予防を心掛けたりすることもあるでしょう。
しかし、そうしたケアも一定の経済力がなければ叶えることができず、もしものことがあったときも十分な対応を取ることができないため、こちらも所有権を得る上で大事な判断材料になります。
まとめ
子供は夫婦の財産という言葉があるように、夫婦で可愛がってきた犬も、お互いにとって大事な財産であることは間違いありません。
しかし、もし離婚してしまったら、その財産である犬はどちらか一方が引き取るしかなく、愛情が深いほどなかなか話合いもつかないでしょう。
ですが、そうなってしまったときに、お互いが感情的に話をしていては話が進まないだけではなく、犬にとっての最良の選択肢はどちらなのかを見極めることができません。
だからこそ、所有権を得たい気持ちよりも、まずはそれを得るだけの資格が自分にあるのかをしっかり考え、離婚してしまっても犬が幸せでいられる最善の選択をしましょう。