犬の「臨界期」とは?
臨界期とは、脳内の神経回路が外部から受ける刺激によって集中的に形成されたり、適切な組み替えが行われる時期のことを言います。「視覚の臨界期」「聴覚の臨界期」「社会性の臨界期」など心身のさまざまな機能にはそれぞれ一生に一度しかない絶対期間と言われる臨界期が存在します。この臨界期までに一度も使われなかった脳細胞は、成長に必要ないと判断されて徐々に消滅していくと言われており、「 猫の新生児の眼に外界からの光を遮断し、10~14日間その状態を継続すると完全に盲目化する」という研究発表なども行われています。
生後間もなくから16週齢までに訪れる犬の臨界期には、視覚・聴覚・嗅覚などの感覚機能が完全化するだけでなく、感受性も非常に豊かな時期のため身近な環境からあらゆることを感じ取り学ぶことができます。
犬の「臨界期」をステージ別に紹介
第一臨界期(0~3週齢)
この時期の子犬は常に母犬や兄弟犬と行動を共にし、特に生後数日間は母犬の食事や排泄時などにもついて回り離れることはほとんどありません。これは体の機能調節が未熟な子犬が母犬や兄弟と寄り添うことで体温が低下しないよう保温する意味も持っています。この時期は保温、食事、母犬が舐めることによるマッサージおよび排泄、睡眠に専念しているためそれ以外の何かを学んだりすることはありません。
第二臨界期(4~7週齢)
この時期になると子犬の目や耳、鼻の機能が発達します。第二臨界期の間に脳や神経系が急激に発達し終わり頃には成犬とほぼ同じレベルの機能を持つようになるとされています。生活をしている中で自然と光を見てあらゆる音を聞き、匂いをかぐことで徐々に機能が育つ特別に何かを提供する必要はありません。また、この時期に兄弟犬など他の犬と遊ぶことも犬同士のコミュニケーションを知る上で非常に大切。生後7週以前に母犬や兄弟と引き離すと適切な社会化を行うことができず、他の犬との関わり方がわからずトラブルを起こしやすい犬に成長すると考えられています。そのため諸外国では生後8週以前の犬を母犬から引き離すことや販売を禁止しており、日本でも同様の規制が検討されています。
第三臨界期(7~12週齢)
第三臨界期は人との関係性を形成する上で非常に重要な時期です。さらに感受性が強く豊かで物事を柔軟に受容することのできる時期であるため、さまざまな経験をさせるのに効率的な時期です。人や犬、あらゆる物に慣れさせる社会化期のスタートでもあります。
第四臨界期(12~16週齢)
この時期は犬の社会化のリミットとも言われる時期で、犬の臨界期というとこの時期について語られることが多く見られます。母犬から独立してその他の犬や人との関わりを多く持つようになりますが、生後間もなくからこの時期までに社会化が不十分であった場合はその後問題行動や他の犬とのトラブルを起こしやすくなると言われているため特に重要な時期として考えられています。
犬の「臨界期」に飼い主がすべきこと
犬の発達にとって非常に重要とされる臨界期ですが、この時期に飼い主が愛犬にしてあげられることはあるのでしょうか?第一臨界期、第二臨界期に関しては、自宅で出産させた場合を除いてはほとんど飼育していることはないと思いますし、この時期の子犬は母犬や兄弟犬との関わりを必要としているだけなので人間が特別何かをする必要はありません。
第三臨界期、第四臨界期になると家庭での飼育が始まることが多いと思いますが、この時期は上記の通り飼い主との愛着や社会性の形成のために非常に重要な時期です。犬を飼い始めたばかりで飼い主としてもわからないことが多く大変だと思いますが、愛犬に多くの人や犬と触れ合わせたり、さまざまな経験をさせて社会性を身につけさせることを優先して行うようにしましょう。
犬の「臨界期」には謎も多い!時期を越えても諦めないこと
犬の臨界期は心身ともにその後の発達に大きな影響を与える大切な時期です。しかしながら臨界期に関してはまだまだ解明されていないことも多く、仮設の域を出ないとされている部分もあるとされています。特に第三臨界期や第四臨界期で形成される人間への愛着や社会性については、臨界期を過ぎても完全に失われたり形成不能になったりするものではないと考えられます。臨界期はあらゆることを受け入れることにおいて最も柔軟で適していますが、その後も緩やかに成長を続けることは可能です。臨界期を過ぎていたとしても、社会化や飼い主との関係性作りは諦めることなくじっくり続けていくようにしましょう。