犬に暑さ対策で氷を与えるのはOK!
犬に暑さ対策で氷を与えるのはOKです。特に、ハァハァと暑そうに舌を出している犬には、効果的な暑さ対策だといえるでしょう。
私たちは、全身から汗をかくことで体温調節をしています。しかし、犬の汗腺は肉球と鼻にしかなく、汗腺のない被毛に覆われた体からは熱を放出することができないのです。
犬が暑いときにハァハァと舌を出す行為は「パンティング」と呼ばれます。これは、呼吸回数を増やすことで口の中や舌、喉から呼気中の水分を蒸発させて熱を放出することで体温調節を行っているのです。このパンティングによる体温調節の他に、氷を食べて口の中や喉の温度を下げてあげると、より犬の暑さ対策に効果的ではないでしょうか。
ひんやり冷たく、だんだんと溶けていく氷を好む犬は少なくありません。ちなみに、我が家のトイプードル・くるるも氷が大好きです。次第に溶けて小さくなる氷は、犬にとっては不思議なようです。水に浮かべると、氷を舐めながら水も一緒に飲んでくれるので、水分補給にも役立っています。
お腹を冷やさないように注意が必要
犬の暑さ対策に氷を与えるのはOKですが、お腹を冷やさないように注意しなければなりません。特に、氷を初めて与える際は、たった1つであってもその後の犬の様子に変化がないか注意深く観察しましょう。お腹の弱い犬は、氷によって下痢をする場合もあります。
夏の暑い時期、氷を与えたり冷房をかけたりしながらも、犬のお腹が冷えないように室温を調整したり、犬用ブランケットを用意したりして、快適なお部屋作りに努めましょう。
与えてもよい氷の量や大きさは?
犬の暑さ対策で氷を与えるときは、犬の大きさや体調を考慮して量を設定しましょう。小型犬であれば1~2つで十分かもしれませんが、大型犬ならフード用の器に数個まとめて与えてよい場合もあります。犬に氷を欲しがるまま与えるのはいけませんが、いくつ以上与えてはいけないという決まりはありません。しかしながら、氷は暑さ対策としても一時的でしかないため、お腹を冷やす可能性を危惧するぐらいなら多くを与える必要はないでしょう。
また、犬に与える氷の大きさは、喉に詰まることのないサイズでなければなりません。小型犬や超小型犬には、砕いて与えるのもよいでしょう。なお、与える際は水に濡らすことで舌に張り付かないようになるのでおすすめです。
氷の与え過ぎは「氷食症」を引き起こす可能性も…
「氷食症(ひょうしょくしょう)」とは、人間で氷を無性に食べたくなる、氷を食べ出したら止められなくな病気のことです。氷食症の原因は明らかになっていませんが、一説によるとストレスなどによる精神疾患や鉄欠乏性貧血ではないかといわれています。
氷食症は、人間だけで起こる病気ではありません。貧血のラットでも氷食症が起こることが実験によって示されています。犬であっても、飼い主の氷の与え過ぎが原因で氷を異常に欲しがるようになるケースがあるようです。犬の場合は、飼い主さんが氷を与えなければ氷を食べることができません。ガリガリとした噛み心地や冷たさで氷に病みつきになる犬もいるようですので、際限なく氷を欲しがることにならないように飼い主さんが気をつけてあげましょう。異常に氷を欲しがるそぶりを見せたときは、生活環境や犬の体調など、他にも変わったことがないか考えてみても良いかもしれませんね。
実験的に貧血にさせたラットは水よりも氷を好み、貧血が治ったら氷を食べなくなったという古い実験結果があります。
Woods SC, Weisinger RS. Pagophagia in the albino rat. Science. 1970 Sep 25;169(3952):1334-6. doi: 10.1126/science.169.3952.1334. PMID: 5271640.
まとめ
犬に暑さ対策で氷を与えるのはOKだということと、与える際の注意点をご紹介しました。いかがでしたか?
犬の暑さ対策は、さまざまです。そのため、氷だけに頼るのではなく、他の方法とあわせて効果的に氷を与えることをおすすめします。氷を与えた場合は、喉に詰まらせることのないように必ず見守るようにしましょう。さらに、お腹を冷やさないようにクーラーの効き過ぎにも注意して、必要があれば犬用ブランケットや温まれる場所を用意してあげてくださいね。
初めて氷を与えるときは、飲み水の入った器に氷を浮かべて、ひんやりした冷たさを感じてもらいましょう!
この記事に書かれている通り、与え過ぎにさえ気をつければ氷を犬にあげても問題ありません。氷を喉に詰まらせる危険性は一般的には高くありませんが、歯がなかったりひどくすり減っている犬、口の中や喉などにトラブルをかかえている犬などではうまくかみ砕けずに大きいかたまりを飲み込んでしまう可能性が上がりますので、少し注意してあげると良いと思います。
一部では、氷を犬に与えると胃拡張捻転症候群を起こしやすくなるとの話もあるようですが、氷を食べることと胃拡張捻転症候群が直接関係しているわけではなさそうです。ただ、胃拡張捻転症候群では食べ物や水を一度に大量に摂取することと、それらと一緒に多くの空気が胃内に入り込むことが関係していると考えられていますので、氷が好きな犬が氷の入った水をあまりにたくさん飲んでしまう場合には、飼い主さんが量や頻度を調節してあげてください。
氷をたくさん噛むと歯にダメージを与えたり歯をすり減らしたりしてしまう可能性があります。また、体温調節の目的で氷を与える場合には、氷だけを与えるよりも氷水を飲ませた方が効果的かもしれません。そのため、氷を与える場合には氷を直接食べさせるよりも飲み水に氷を浮かべてあげるのが良いでしょう。氷によってよくお水を飲んでくれるようになることは、特にしっかりと水分補給をしたい夏には嬉しいことです。また体を冷やす目的以外にも、飲み水に氷が入っていると水を飲むのが遅くなる子がいるようですので、愛犬の水のがぶ飲みが心配な飼い主さんは試してみると良いかもしれません。
ここで言う汗腺とは「エクリン汗腺」のことです。人では脇の下などの限られた場所にある「アポクリン汗腺」は、犬では体の広い部分に存在しています。アポクリン汗腺からの発汗は体温調節に関係がなく、その分泌物には脂やタンパク質などの臭いのもととなる物質を多く含みます。