犬は「体内時計」で1日のリズムを作る
私たち人間は、時計を見ながら行動するのが極一般的ですよね。1日のはじまりはまず起床し、朝食をとり、通勤電車に乗って職場へ向かいます。
昼休みや会社帰りの予定など、すべてに於いて時計を見ながら行動するのではないでしょうか。
しかし、人間やすべての生物には、およそ24時間~25時間周期で1日のリズムを作り出す「体内時計」が存在しています。
1.体内時計とは
別名「概日リズム」や circadian rhythm(サーカディアン・リズム)と呼ばれています。およそ24時間周期で変動する生理現象で、地球上のすべての生物に存在しているといいます。
体内時計は生体リズムを作り出すペースメーカーとして働いています。睡眠、体温、血圧、代謝、ホルモン分泌など、ほぼすべての生体機能はおよそ24時間周期で変動します。
体内時計の存在は、紀元前から知られていましたが、人間への存在について本格的に研究されはじめたのは1960年代に入ってからだといいます。ドイツ・マックス研究所のJurgen Aschoff氏が自ら防空壕に閉じこもり、自発的に生じるおよそ24時間周期の生体リズムが存在することを証明しました。
その後、さまざまな研究によって体内時計システムが存在することが明らかになっていきました。そして、近年になり体内時計の分子メカニズムを解明した米国人科学者、マイケル・ロスバシュ氏、ジェフリー・ホール氏、マイケル・ヤング氏に2017年ノーベル生理学・医学賞が授与されました。
2.犬の体内時計を飼い主が感じる時
近年の研究から、人間の体内時計は1日3回の食事時間と回数によって正常な概日リズムが刻まれ身体を健康に維持することが明らかになっています。
生活を共にする犬と人間は体内時計が存在しますが習慣が異なります。例えば、犬は浅い眠りの状態でも、すぐに目を覚まして歩く準備や、いつでも食べる準備が整っています。
みなさんが帰宅する前に、ドアの前で待機する愛犬の姿を見かけたことがありませんか? わが家の愛犬は、主人が平日帰宅する10分前には玄関に必ず座っています。帰宅する時刻が変わっても、主人がドアを開ける10分前には必ず座っているんですよね。
この姿を見て、「うちのコって賢い?」な~んて親ばかですよね(汗)
また、週末に愛犬をお留守番させた時は、二人揃ってドアを開けると、尻尾をフリフリして嬉しそうに顔を舐めたり、食事の時間になると、まるで時計を読めるかのように餌をおねだりします。
これは犬の飼い主さんならどなたでも経験がおありだと思います。
3.犬の体内時計に人間が合わせることも
体内時計に従って、犬は夜明け頃にもっとも活動的になるといわれています。午後には極めて惰性的になり、夕方になるとエネルギーが爆発します。
犬は食事時間が決まっていなくても、食事を摂る体内時計に従って活動しているといいます。餌を食べる時間の直前には、動物は活動的になり、餌を期待して走り回り、ヨダレを垂らしたりするのです。
一日中愛犬と一緒にいても、私たちは自分の用事に没頭して、愛犬がおねだりして飼い主に付き纏う時、「あぁ!もうこんな時間かぁ」と、餌を与える時間に気づくことがありますよね。
ということは、私たち人間が犬の体内時計に合わせて時間をセットすることができるわけです。
犬は匂いで時間経過が分かる
現時点で目に見えるものを捉える私たち人間とは異なり、犬の鼻は過去と現在のもの、そして未来のものを感知することができるといいます。
米・バーナード大学で犬の認知行動について研究所を立ち上げたAlexandra Horowitz氏は、著書『Being a Dog』の中で、犬が時間の概念をどのように理解しているか、について、
犬は過去や未来、目に見えないものを嗅ぐことができる
ここでHorowitz氏が、犬の鼻が過去や未来、さらに目に見えないものを嗅ぎ分ける能力があることを分かりやすく解説した動画をご紹介しましょう。犬は1日の長さがどのくらいなのかを知っている?
犬は、匂いの変化で時間経過を認識できるということが分かりました。さらに過去や未来さえも感じてしまうという素晴らしい鼻の構造と優れた能力を持っているのです。人間の感覚とは異なり、時間を匂いで認識するという感覚から、遠い過去や遠い未来ではなく、ごく近い過去と未来が分かるということでしょう。しかし、犬は「時間の長さ」について認識する能力があるか? についての研究は明らかになってはいません。みなさんは、こんなことを考えたことはありませんか?長い時間家でお留守番している犬は退屈しているんじゃないか、と。犬は退屈という感情があるのか?
社会心理学者のErich Fromm(エーリッヒ・フロム)氏は、「人間は退屈できる唯一の動物である」と述べています。私たち人間には、退屈という感情が日常的な経験から定義できます。例えば、長い会議の最中や、誰かと待ち合わせする時間の長さ、興味がない話を永遠とされた時、私たちは退屈さを感じます。自分以外の他者にも、繰り返される動作や、エネルギーの低下などで退屈をそれとなく認識することができます。この定義からすれば、犬も人間も動作が鈍くなり、次第に眠気が襲います。愛犬はどうでしょう?おそらく愛犬は、飼い主が留守の間の長い時間を退屈だと感じながら過ごしていたかもしれません。しかし犬は飼い主の帰りをひたすら待ち続けます。その時間が、どれほど長いかを犬は分かっているのかもしれませんね。最後に
いかがでしたか? 犬は体内時計や匂いで時間を認識することが分かりました。犬は「この瞬間を生きている」という説があります。おそらくこれは犬の本能的感覚ではないでしょうか。人間のように視覚や聴覚、さらに複雑な感情は犬には一切不要なのかもしれません。どんなに退屈していたとしても、飼い主が帰宅直前になるとドアの前で待機し、ドアを開けた瞬間!・・・身体中で喜びを表現してくれる愛犬に愛しさを感じますよね。私たち人間も、愛犬とともに暮らす今に喜びを感じ、“この瞬間を生きている“大切なことを教えてもらっているのではないでしょうか?《参考資料URL》
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO23202700X01C17A1000000?channel=DF260120166530
http://www.freekibble.com/did-you-know-that-your-dogs-nose-can-smell-the-past-the-future-and-even-things-that-cannot-be-seen-at-all/
http://www.businessinsider.com/in-a-dogs-net-2011-4
http://www.lifewithdogs.tv/2016/10/study-finds-that-dogs-can-tell-what-time-of-day-it-is-by-their-nose/
《参考書籍》
犬から見た世界 アレクサンドラ・ホロウィッツ著