犬の仕草や行動には本音が隠れています
犬は言葉を話すことはできませんが、とても感情豊かな動物であり、自分の気持ちを仕草や行動で表します。ですから、愛犬の仕草や行動を観察すれば、愛犬の本音を読み取ることができます。
日常の中の仕草や行動に隠された愛犬の本音を飼い主さんが正しく読み取ってあげることで、愛犬はより快適で幸せな生活が送れます。また、自分の本当の気持ちを理解してくれる飼い主さんに厚い信頼を寄せるようにもなるでしょう。
このように、飼い主さんが愛犬の本音を読み取れるようになることは、愛犬にとっても飼い主さんにとってもプラスに働きます。そして、愛犬の本音を読み取れるようになるためにはまず、犬の感情表現について理解を深める必要があります。代表的な犬の感情表現を一緒に見ていきましょう。
①口元をなめてくる
愛犬が飼い主さんの口元をなめてくるのは、愛情の証しです。犬の祖先であるオオカミの子供は母親の口元をなめて、母親が吐き出した食餌をもらっていました。この名残で犬は、飼い主さんに愛情を伝えたいときや甘えたいときに口元をなめると言われています。
つまり、愛犬が飼い主さんの口元をペロペロなめてくるのは、飼い主さんを母親のように慕っているからなのです。
また、犬は相手をなだめるために口元をなめることもあります。愛犬が叱られたときに飼い主さんの口元をなめてくるのであれば、「もう怒らないで」と言っています。
もし飼い主さんの口元をなめるのが習慣化しているのなら、飼い主さんの口元をなめたらおいしい味がした経験があるからかもしれません。
②尻尾を振る
愛犬が尻尾を根元から大きく左右に振ったり、ぐるんぐるんと回すときは、期待や喜びで興奮しているときです。知らない犬や人が近づいてきたときに、尻尾を立てて小刻みに振っているのなら警戒しています。相手の犬や人に唸ったり吠えたり、最悪の場合は噛みつくこともあるので注意が必要です。
尻尾をゆっくり振るのは、「うれしいような不安なような…どうしよう」と迷っているとき。尻尾の位置が低いほど、不安度が高いことを表します。
その後の状況によっては、その場から逃げ出したり、攻撃行動に出ることも。「尻尾を振っている」=「喜んでいる」と考えてしまいがちですが、尻尾を振る位置や振り方によってさまざまな気持ちを表していることを理解しておきましょう。
③あくびをする、自分の鼻をなめる、そっぽを向く、体をかく
愛犬を叱っているときに愛犬があくびをしたり、自分の鼻をペロッとなめたり、そっぽを向いたり、体をかいたりしたら、飼い主さんは「ばかにしてるの!?」と腹が立つかもしれません。でも愛犬は、飼い主さんをばかにしているのではありません。
これらの行動は「カーミング・シグナル」と呼ばれるもので、不安や緊張を感じている自分の気持ちを落ち着かせたり、興奮している相手をなだめるための行動です。自分からフセをしたり、体をブルブル振るのもカーミング・シグナルのひとつです。
叱っているときに愛犬がこうしたカーミング・シグナルを見せたら、不安や緊張を感じていることを理解してあげて、叱りすぎないようにしましょう。
④仰向けになっておなかを見せる
おなかは犬にとって急所のひとつです。そのため、犬は気を許した相手にしかおなかを見せません。愛犬が飼い主さんの前で仰向けになっておなかを見せるのは、飼い主さんを心から信頼して、気を許している証拠。本来守るべきお腹を無防備に見せて、「おなかなでて~」と甘えているのです。
もしも叱っているときに仰向けになっておなかを見せるのなら、「もうやめて」と訴えています。いわゆる「降参のポーズ」です。
しかし、叱られている状況から早く逃れたいために「とりあえずこのポーズをしておこう」と、演技する子も多いとか…。降参のポーズをする目が生き生きとしているのであれば、演技をしている可能性大です。
犬はごはんを食べたあとに、仰向けになって床でくねくねすることがあります。これはおなかがいっぱいで満足して、「幸せ」という気持ちを体全体で表現しています。
⑤留守中に部屋を荒らす
飼い主さんが疲れて帰ってきて部屋に入ったら、カーペットは掻きむしられ、クッションはボロボロ、おまけにあちこちにおしっこ…と、まるで地獄絵図のような光景が目に飛び込んできたことはありませんか?
留守中に愛犬がいたずらや不適切な排泄をしていたら、「お留守番の腹いせ?」と思う飼い主さんは多いでしょう。しかしそれは、飼い主さんが帰ってきたらすぐに自分を構ってほしいという愛犬の気持ちの表れかもしれません。
また、愛犬が留守番中に極度の不安や恐怖、パニックを感じている可能性もあります。飼い主さんがいない状況に極度の不安や恐怖などを感じて対応できず、身の回りのものを噛んだり掻きむしったり、あちこちに排泄したりしてしまうのです。
どちらにしても、愛犬が上手にお留守番できるように工夫とトレーニングが必要になります。
⑥見つめてくる
愛犬を見つめると目をそらされてしまうことがありますが、これは飼い主さんを嫌っているからではありません。犬は目と目を合わせるのが苦手で、じっと見つめられると不安や緊張を感じてしまうのです。
また、目をそらす仕草は、敵意がないことを相手に伝えるためのカーミング・シグナルでもあります。
このように本来は見つめ合うことが苦手な犬ですが、飼い主さんへの好き度が高まれば高まるほど、じっと見つめてくる傾向があります。愛犬が飼い主さんを見つめてくるのは、信頼を寄せる人へ、愛を伝えるための行動なんです。
ただし、飼い主さんが何かを食べているときに見つめてきたり、自分のおもちゃを持ってきて見つめてきたりするのは、「おすそ分けして」「遊んで」というおねだりの熱視線なので間違えないようにしましょう。
まとめ
愛犬の仕草や行動にはそれぞれ意味があり、何気ない仕草や行動に愛犬の意外な本音が隠れていることもあります。ひとつの仕草や行動に対していくつかの意味を持つ場合もあるため、そのときの状況や愛犬の表情、姿勢など全体をよく観察することが大切です。
愛犬からの信頼を得るため、そして愛犬の幸せのために、愛犬の本音を正しく読み取れる飼い主になりましょう。