犬が散歩で歩かない原因
愛犬が散歩中に突然立ち止まり、歩くことを拒否することがあります。これは犬の気持ちや体調を伝える重要なサインです。単にわがままや頑固さからくるものではなく、犬が歩けない、あるいは歩きたくない明確な理由があるのです。
原因を正しく理解することで、適切な対応をとり、再び散歩を楽しめるようになります。ここでは、犬が散歩で歩かない原因を具体的に解説します。
初めての散歩で怖がっている
特に子犬は初めての散歩で外の世界に強い恐怖心を抱きます。車や自転車の音、知らない人や動物との遭遇が怖くて足がすくんでしまうことがあります。
また、生後3~14週の社会化期に外出の経験が乏しいと、環境に慣れるまで時間がかかり、歩くことを拒否する傾向があります。
特定の音や匂いに不安を感じている
犬は非常に敏感な動物です。例えば、過去に散歩中に大きな音を聞いた、他の犬とケンカした、人に叱られたなど、怖い体験をすると特定の場所や状況に不安を感じます。
そのため同じ場所を通ると記憶が蘇り、突然動かなくなったり、ルートを変えようとしたりします。
散歩コースや時間が合わず嫌がっている
犬は同じ散歩コースが続くと刺激不足で飽きてしまいます。また、通学や通勤時間帯など人や車が多い時間帯を避けたい犬もいます。
特定のルートや時間に犬が繰り返し歩くことを嫌がるなら、それはその環境が犬に合っていない可能性を示しています。
首輪やハーネスが体に合っていない
犬のサイズに合わない首輪やハーネスは、痛みや不快感を引き起こします。小さすぎると首や胸が圧迫されて苦しく、大きすぎると動くたびに擦れて痛みを感じます。
特に呼吸器が繊細な小型犬や短頭種は、首輪の締め付けによる気管虚脱のリスクもあるため、ハーネスのサイズが適切かどうか慎重な確認が必要です。
高齢犬の関節痛や体力低下で歩けない
高齢の犬は加齢によって関節が衰え、変形性関節症や筋肉の衰えによる痛みが生じることがあります。その結果、今まで問題なく歩いていた距離でも疲れや痛みを感じ、途中で座り込んだり歩くスピードが落ちたりします。
特に段差の多い道など、足腰に負担のかかる環境では歩くことを拒否する傾向が顕著になります。
怪我や病気などの身体的トラブルで動けない
外傷(爪の損傷、肉球の傷など)や内科的な疾患(椎間板ヘルニアや関節炎、心疾患など)があると犬は痛みを避けるため動きません。
特に歩くのを急に嫌がる、特定の足をかばう、体を触られるのを嫌がるなどの症状が現れた場合、すぐに獣医師の診察を受ける必要があります。
夏の暑さや冬の寒さで散歩を嫌がる
犬は汗腺が少なく、主にパンティング(口を開けて呼吸する行動)によって体温調節を行います。そのため夏の暑い日や冬の寒い日には、散歩中の気温変化に対応できず歩くのを嫌がります。
特に夏の熱いアスファルトは肉球の火傷や熱中症の原因になるため、犬は地面が熱すぎると本能的に立ち止まります。
飼い主の緊張が伝わり、歩かなくなる
散歩中、飼い主が「また止まるかも」「急がないと」と緊張や焦りを感じると、犬はリードを通じてそれを敏感に感じ取ります。飼い主が不安や焦りの感情を強く持つほど、犬も安心して歩けず、歩行を拒否するようになります。
犬が散歩で歩かないときの対処法
愛犬が散歩中に歩かなくなったときには、焦らず原因を理解したうえで冷静に対処することが重要です。無理に歩かせるのではなく、愛犬が再び安心して自発的に歩けるよう、適切な対応方法を実践しましょう。ここでは、犬が散歩中に歩かなくなった際に効果的な具体的対処法を紹介します。
散歩コースや時間帯を変える
犬が散歩中に特定の場所や状況を嫌がる場合、散歩のコースや時間帯を見直しましょう。
例えば、交通量の少ない静かな道や、犬が興味を持ちそうな自然豊かな公園などを選ぶことで、犬の不安や退屈を軽減できます。通勤・通学のピーク時間帯を避け、静かな時間を選ぶことも効果的です。
体に合う首輪やハーネスに替える
首輪やハーネスが犬の体に合っているかを再確認してください。犬の体と用具の間に指が2本ほど余裕を持って入る程度が理想です。
擦れや圧迫感がないものに変更するだけでも、犬が感じていたストレスが解消され、自発的に歩き出すことがあります。呼吸が繊細な小型犬や短頭種は、体全体を支えるタイプのハーネスに変更するとより安心です。
短い距離から少しずつ歩かせて自信をつける
犬が散歩に不安や恐怖を感じているとき、いきなり長い距離を歩かせるのは逆効果です。
まずは玄関を出るところからスタートし、家の前の電柱や角まで短距離の目標を設定して、達成したらたっぷり褒めてあげましょう。成功体験を積み重ねることで犬の自信がつき、自然と歩く距離を伸ばせるようになります。
おやつや声かけで歩くことを楽しいと学ばせる
散歩を楽しい時間と犬に認識させるために、「歩くこと=良いことがある」と関連付けをしましょう。犬が自発的に少しでも歩いたら、すぐに「いい子だね」と褒めたり、小さく刻んだおやつを与えたりします。
これを繰り返すことで、散歩が犬にとってポジティブなイベントとなり、歩くことを喜ぶようになります。
犬の健康状態を動物病院で確認する
犬が歩くことを頑なに拒否する場合や、歩き方に違和感があるときは、病気やケガなど身体的なトラブルが疑われます。以下の症状が見られるときは早めに動物病院を受診しましょう。
- 急な跛行(足をかばう、引きずるなど)
- 頻繁な座り込みや横になる
- 体を触られることを嫌がる
- 食欲や元気がなくなる
- 呼吸が荒く苦しそうな様子を見せる
病院で健康状態を確認し、必要な治療を受けることで安心して歩けるようになります。
暑さや寒さ対策を行う
犬は気温や季節の変化に敏感で、特に夏の暑さや冬の寒さが原因で歩くことを拒否することがあります。
暑い日は早朝や夕方の涼しい時間帯を選び、熱中症予防に地面を手で触って温度を確認しましょう。冬は防寒着を使用したり、暖かい時間帯を選んだりすることで、犬の快適さを保てます。
犬に飼い主のリラックスした態度を見せる
散歩中の飼い主の緊張や焦りはリードを通じて犬に伝わります。散歩中に犬が立ち止まっても焦らず、深呼吸をして落ち着いた態度を心掛けましょう。
飼い主がゆったりとした気持ちで散歩を楽しんでいることが犬に伝わり、犬自身も安心感を得て再び歩き始めることが多くなります。
犬が散歩で歩かないときのNG行動
犬が散歩中に歩かなくなると、飼い主は焦りや不安から誤った対応をしてしまうことがあります。しかし、不適切な対応は状況をさらに悪化させ、愛犬との信頼関係を損なうことにもつながります。
ここでは、犬が散歩中に歩かなくなった際に飼い主がやってはいけない行動を具体的に解説します。
無理にリードを引っ張ったり叩いたりする
犬が歩かないからといって強くリードを引っ張ったり、お尻を叩いて強制的に動かそうとすると、犬は痛みや恐怖を感じます。
こうした行為は犬にとって強いストレスとなり、散歩に対して嫌悪感を抱き、ますます歩くのを拒否するようになります。また、強制的な行動は動物愛護管理法に抵触する可能性もありますので絶対に避けましょう。
叱ったり大声を出したりする
散歩中に犬が立ち止まった際に、「早く歩きなさい!」などと叱ったり大声を出したりしても、犬は理由を理解することができません。
むしろ、飼い主が突然怒ったことで犬は不安や恐怖を感じ、その場から余計に動けなくなります。散歩中は落ち着いた穏やかな口調で犬に接するように心がけましょう。
体力を無視した長距離の散歩をさせる
犬が途中で座り込んだり嫌がったりしているにもかかわらず、飼い主が長距離の散歩を無理に続けることは避けるべきです。
特にシニア犬や体調が悪い犬にとっては大きな身体的負担となり、体調悪化の原因にもなります。犬の体調や様子をよく観察し、その日のコンディションに合わせて散歩距離や時間を調整しましょう。
抱っこを習慣化する
犬が歩かないからといって頻繁に抱っこすると、「歩かなければ抱っこしてもらえる」と犬が学習してしまいます。そうなると犬は自発的に歩く意欲を失い、さらに歩かなくなってしまいます。
抱っこは危険回避や体調不良の際に一時的に行う程度にとどめ、抱っこでの移動を常習化させないよう注意しましょう。
愛犬が楽しく歩ける散歩にするために
愛犬との散歩を楽しむためには、無理強いや叱責を避け、犬のペースに合わせることが最も大切です。初めての散歩や怖い経験による不安は短い距離から徐々に慣らし、成功体験を積み重ねましょう。また、体に合った首輪やハーネスを選び、散歩コースや時間帯を工夫するだけでも歩く意欲が大きく変わります。
暑さや寒さ対策、体調管理にも注意しながら、愛犬が「散歩は楽しい」と感じられる環境を整えてあげましょう。飼い主自身も焦らずリラックスすることで、犬との信頼関係が深まり、散歩がより充実した時間になります。