シーズーはしつけが難しい犬種ではない
シーズーは、特別にしつけが難しい犬種というわけではありません。理解力があり、人に対して友好的な傾向があるため、家庭で暮らすためのルールや合図を少しずつ覚えていくことができます。
一方で、自立心を持つ犬種でもあるため、飼い主の働きかけにいつでも同じように応じるとは限りません。
こうした様子から「頑固」「言うことを聞かない」と感じることもありますが、それだけでしつけに向かない犬種と判断するのは適切ではありません。
しつけの進み方には、その犬の性格やこれまでの経験、生活環境などによって個体差があります。シーズーという犬種だけで難しさを決めつけず、愛犬の様子に合わせて取り組むことが大切です。
シーズーのしつけは迎えた日から少しずつ始める
シーズーのしつけは、「生後何か月になったら始める」と一律に決めるものではありません。家庭に迎えた日から、新しい環境に慣れる様子を見ながら少しずつ始めていきましょう。
迎えた直後は、知らない人やにおい、生活音などに囲まれて緊張していることもあります。
最初から多くのことを覚えさせようとせず、安心して休める場所を用意し、生活リズムを整えながら家庭での暮らしに慣らしていくことが大切です。
子犬で迎えた場合は、生活に必要なしつけと並行して社会化を進めます。成犬で迎えた場合や、すでに身についた習慣を変えたい場合でも、年齢だけを理由にしつけを諦める必要はありません。
子犬期は社会化を進める
子犬期には、さまざまな人や犬、音、場所などに慣れる「社会化」が重要です。社会化とは、将来の生活で出会うさまざまな刺激を経験し、過度に怖がらず落ち着いて対応できるようにしていくことを指します。
とくに生後3〜14週齢頃までは社会化にとって重要な時期とされているため、家庭内の生活音、家族以外の人、車やバイクの音、動物病院での診察につながる環境など、今後の生活で経験する刺激に少しずつ触れさせていきましょう。
ただし、多くの経験をさせればよいわけではありません。怖がっている犬を無理に刺激へ近づけると、かえって苦手意識を強めることがあります。
愛犬が落ち着いていられる距離や強さから始め、無理のない範囲で経験を重ねることが大切です。
ワクチン接種が完了する前は感染症への配慮も必要ですが、抱っこで外の景色や音に触れさせたり、自宅でさまざまな生活音を経験させたりすることはできます。
外出やほかの犬との接触については、ワクチン接種の状況や地域の感染症リスクも踏まえ、必要に応じて獣医師へ相談しましょう。
成犬からでもしつけ直すことはできる
シーズーは、成犬になってからでも新しいことを学ぶことができます。成犬になってから迎えた場合はもちろん、これまでの生活で身についた習慣を改めたい場合でも、しつけ直すことは可能です。
ただし、長期間続けてきた行動は習慣として定着しているため、子犬に初めて教える場合より変化に時間がかかることがあります。
また、過去の経験によって苦手な状況や強い不安を抱えている犬では、より慎重に進める必要があります。
年齢だけを理由に「もう覚えられない」と考えず、その犬が現在できるところから段階的に進めていきましょう。
短期間で大きく変えようとするよりも、新しい生活やルールに慣れる時間を十分に取りながら継続することが大切です。
シーズーをしつけるときの基本
シーズーのしつけでは、犬に「してはいけないこと」を一方的に押しつけるのではなく、「どう行動すればよいのか」を分かりやすく伝えることが大切です。
同じことを教える場合でも、褒めるタイミングや使う言葉、家族の対応が毎回違うと、犬は何を求められているのか理解しにくくなります。
できた行動をその場で褒め、家族で共通したルールを続けることを基本にしましょう。
できたことを褒めて教える
しつけでは、犬が望ましい行動をした直後に褒め、その行動を繰り返しやすくしていく方法が基本です。行動の直後に良いことが起こることで、「この行動をすると嬉しいことがある」と犬が学びやすくなります。
ご褒美はおやつだけとは限りません。フード、優しい声かけ、おもちゃ、遊びなど、その犬が喜ぶものを状況に応じて使えます。
褒めるまでに時間が空くと、犬がどの行動を褒められたのか分かりにくくなるため、できた直後に伝えることがポイントです。
また、最初から難しい条件で練習せず、犬が成功しやすい状態から始めて少しずつ難易度を上げていきましょう。
指示の言葉と家族のルールを統一する
家族によって使う言葉や対応が異なると、犬を混乱させることがあります。同じ行動を求めるときは、できるだけ同じ言葉や合図を使いましょう。
例えば、ある家族は「おすわり」、別の家族は「すわれ」と指示していると、それぞれを別の合図として覚える可能性があります。
言葉だけでなく、手の動きなどを合図として使う場合も統一しておくと分かりやすくなります。
生活上のルールについても同様です。ある人は許している行動を別の人が禁止すると、犬はどちらに従えばよいのか判断しにくくなります。
家族で「してよいこと」「してほしくないこと」をあらかじめ共有し、できるだけ一貫した対応を心がけましょう。
怒鳴る・体罰などのしつけは避ける
大声で怒鳴る、叩く、力任せに押さえつけるなど、痛みや強い恐怖を与えて行動を抑える方法は避けましょう。
こうした方法で一時的に行動が止まったように見えても、犬が「何をすればよかったのか」を理解できるとは限りません。
さらに、飼い主や特定の状況に対する不安や恐怖を強め、逃げる、唸る、噛もうとするといった反応につながるおそれもあります。
望ましくない行動が見られたときは、まずその行動が起きにくい環境を整えたうえで、代わりにしてほしい行動を教えていきましょう。
失敗を叱ることよりも、成功しやすい状況をつくり、できた行動を繰り返し褒めることが大切です。
シーズーに覚えさせたい基本のしつけ
シーズーと安全で快適に暮らすためには、芸をたくさん覚えさせることよりも、日常生活に必要なしつけを優先することが大切です。
なかでも、室内で暮らすうえで欠かせないトイレ、安全管理に役立つ「おすわり」「まて」「おいで」、ひとりで落ち着いて過ごすための留守番やハウスの練習は、早い段階から少しずつ身につけていきたい項目です。
また、シーズーは被毛のケアや顔まわりのお手入れを継続的に行う必要があるため、体を触られたりブラシを使われたりすることにも慣らしておくと、日々のケアがしやすくなります。
トイレのしつけ方
トイレのしつけでは、犬が排泄しやすいタイミングを見計らってトイレへ誘導し、決めた場所で排泄する経験を繰り返していきます。
起床後や食事・水分補給の後、遊んだ後などは排泄しやすいタイミングです。床のにおいを嗅ぎながら歩き回る、落ち着きなく同じ場所を行き来するといった様子が見られたときも、トイレへ誘導してみましょう。
決めた場所で排泄できたら、終わった直後に褒めます。成功した直後に良い経験が重なることで、「ここで排泄すればよい」と覚えやすくなります。
トイレ以外の場所で失敗しても、大声で叱ったり、失敗した場所へ犬を連れていって叱責したりする必要はありません。
排泄そのものを怒られたと受け取ると、人の前で排泄することを避けるようになる場合があります。失敗した場所はにおいが残らないように掃除し、トイレまでの距離や誘導するタイミングを見直しましょう。
失敗が続く場合は、犬が自由に行動できる範囲を一時的に狭くする、トイレの場所を分かりやすくするなど、成功しやすい環境を整えることも有効です。
「おすわり」「まて」「おいで」の教え方
「おすわり」「まて」「おいで」は、日常生活だけでなく、犬の安全を守るためにも役立つ基本的な合図です。それぞれを一度に覚えさせようとせず、短い練習を繰り返して身につけていきましょう。
「おすわり」の教え方
おやつやフードを犬の鼻先に見せ、その手をゆっくり頭の上から後方へ動かします。犬が手を目で追うことで自然に腰を下ろしたら、その瞬間に褒めてご褒美を与えます。
座る動作が安定してきたら、犬が座る直前に「おすわり」と声をかけ、言葉と行動を結びつけていきます。お尻を手で強く押して座らせる必要はありません。
「まて」の教え方
まずは犬が落ち着いている状態で、「まて」と合図して1秒程度その場にいられたら褒めます。できるようになったら、2秒、3秒と少しずつ待つ時間を延ばしていきます。
時間だけでなく、飼い主との距離を少し離す練習も段階的に行います。時間と距離を一度に大きく伸ばさず、失敗する前に解除して成功を重ねることがポイントです。
「おいで」の教え方
「おいで」は、離れた場所から飼い主のもとへ戻ってくるための大切な合図です。最初は室内など気が散りにくい場所で、犬との距離を短くして練習します。
名前などでこちらへ注意を向けてから「おいで」と声をかけ、近くまで来たらすぐに褒めてご褒美を与えます。「おいで」と呼ばれて飼い主のもとへ行くと良いことがある、と覚えられるようにしましょう。
呼んでも来ないときに何度も「おいで」を繰り返したり、来た犬を叱ったりすると、合図への反応が弱くなることがあります。まずは成功しやすい距離から練習し、少しずつ条件を難しくしていくことが大切です。
留守番とハウスのしつけ方
留守番は、最初から長時間ひとりにするのではなく、ごく短い時間から練習します。まずは飼い主が数秒から数分ほど別の場所へ移動し、犬が落ち着いて過ごせる範囲から少しずつ時間を延ばしていきましょう。
出かける前後に過剰に声をかけたり大げさに構ったりせず、外出や帰宅が特別な出来事になりすぎないようにすることもポイントです。
留守番中は、誤飲する可能性のある物やコード類などを犬の届かない場所へ片付け、室温にも注意して安全に過ごせる環境を整えておきます。
ハウスのしつけでは、クレートやケージを「叱られたときに閉じ込められる場所」にしないことが大切です。中にお気に入りの敷物を入れたり、ご褒美を与えたりしながら、安心して休める場所として慣らしていきます。
最初は扉を開けたまま自由に出入りできるようにし、自分から入れるようになったら、短時間だけ扉を閉める練習へ進みます。犬が落ち着いて過ごせる範囲で、徐々に時間を延ばしていきましょう。
ブラッシングや顔まわりのお手入れに慣らす
シーズーは長く伸びる被毛を持ち、目や口のまわりにも毛が生えるため、ブラッシングや顔まわりのケアを日常的に行いやすいよう、触られることに慣らしておくことが大切です。
最初から長時間ブラッシングをするのではなく、背中や胸など比較的触られることを受け入れやすい場所へ軽く触れることから始めます。
落ち着いていられたら、ご褒美を与えながら少しずつ触れる場所や時間を増やしていきましょう。
ブラシも、いきなり全身に使うのではなく、まずは見せたり体に軽く当てたりして慣らします。その後、1〜2回程度とかすところから始め、嫌がる前に終えることで良い経験を積み重ねやすくなります。
目や口のまわり、耳、足先などは犬が触られることを嫌がりやすい場所です。短時間だけ優しく触れて褒める練習を繰り返し、無理に押さえ込まず少しずつ慣らしていきましょう。
シャンプー後のドライヤーを怖がる場合は、最初から顔や体の近くで強い風を当てず、離れた場所で音を聞かせるところから始めます。
音に落ち着いていられるようになったら、距離や風の強さを少しずつ調整して慣らしていくとよいでしょう。
シーズーの無駄吠え・噛み癖への対処法
シーズーの吠えや噛みつきが気になるときは、行動だけを止めようとするのではなく、何がきっかけになっているのかを確認することが大切です。
同じ「吠える」「噛む」という行動でも、何かを求めている場合、物音を警戒している場合、遊びで興奮している場合、怖さや痛みから身を守ろうとしている場合など、背景によって適した対応は異なります。
まずは行動が起こる場面や直前の出来事を観察し、原因に合った対処を行いましょう。
要求吠え・警戒吠えへの対処法
犬が吠えること自体は自然なコミュニケーションのひとつです。そのため、すべての吠えを「無駄」と考えるのではなく、どのような理由で吠えているのかを見分けることが重要です。
要求吠えへの対処法
ごはんが欲しい、遊んでほしい、抱っこしてほしいなど、自分の要求を通すために吠えることを「要求吠え」と呼びます。
まずは、排泄したい、体調が悪い、不安を感じているといった必要な訴えではないかを確認しましょう。そのうえで要求吠えと考えられる場合は、吠えている最中に毎回要求をかなえることは避けます。
吠えるのをやめて静かになったタイミングで声をかけたり、必要な対応をしたりすることで、「吠え続けるよりも落ち着いているほうが良いことがある」と学びやすくなります。
ただし、最初から長時間静かにできることを求める必要はありません。吠えるのをやめた一瞬をとらえて褒め、少しずつ静かに過ごせる時間を延ばしていきましょう。
警戒吠えへの対処法
インターホンの音、窓の外を通る人や犬、玄関付近の物音などに反応して吠える場合は、警戒や不安が背景にあることがあります。
この場合は、まず刺激を減らす工夫が有効です。
窓から外が見えることが原因ならカーテンや目隠しを使い、玄関の物音に反応する場合は犬が落ち着ける場所を玄関から離すなど、吠えるきっかけそのものを弱めてみましょう。
刺激に気づいても吠えずにいられたときや、短時間で落ち着けたときは褒めます。怖がっている犬を刺激へ無理に近づけるのではなく、落ち着いていられる距離から少しずつ慣らしていくことが大切です。
甘噛み・噛み癖・威嚇への対処法
噛む行動も、子犬の遊びとして見られる甘噛みと、恐怖や痛みなどから身を守ろうとして起こる強い噛みつきでは意味が異なります。状況を見分けず、すべて同じ方法で対処しないようにしましょう。
子犬の甘噛みへの対処法
子犬は、遊びや好奇心、歯の生え替わりなどに伴って、人の手や衣服を噛むことがあります。
人の手や足を強く噛んだときは、手を使った遊びをいったん中断し、噛んでもよい犬用のおもちゃへ誘導します。手そのものをおもちゃ代わりにして遊ぶと、人の手を噛んでよいものとして覚えやすくなるため避けましょう。
興奮が高まるほど噛み方が強くなる場合は、遊びを短く区切り、落ち着ける時間を挟むことも有効です。
大声で叱ったり、口元を叩いたりして止めるのではなく、噛んでよいものと噛んでほしくないものを分かりやすく教えていきます。
威嚇や強い噛みつきへの対処法
唸る、歯を見せる、体をこわばらせる、触ろうとすると噛みつこうとするといった行動は、恐怖や強い不快感、自分の身や物を守ろうとする防御的な反応として現れている可能性があります。
このような状態で無理に触ったり、唸ったことを叱ったりすると、さらに追い詰めてしまうことがあります。まずは犬との距離をとり、噛みつきが起こる状況をできるだけ避けて安全を確保しましょう。
とくに、これまで問題なく触れられていた場所を急に嫌がるようになった場合や、以前にはなかった噛みつきが突然見られるようになった場合は注意が必要です。
皮膚や耳の炎症、歯や口の痛み、関節などの痛みが行動の変化に関係していることもあるため、単なるしつけの問題と決めつけず、動物病院へ相談しましょう。
人を傷つけるほどの強い噛みつきがある場合は、家庭内だけで無理に対応せず、行動診療を行う獣医師や、犬に強い恐怖や痛みを与えない方法で指導する専門家へ相談することも大切です。
シーズーのしつけがうまくいかないときの見直し方
シーズーのしつけが思うように進まないときは、「頑固だから」「覚えが悪いから」と決めつけず、練習の条件や生活環境をひとつずつ見直してみましょう。
家の中ではできるのに外ではできない、昨日はできたのに今日は失敗するといったことは珍しくありません。犬は場所や周囲の刺激が変わると、同じ合図でもうまく行動できないことがあります。
練習の難易度が高すぎないか確認する
失敗が続く場合は、現在の練習がその犬にとって難しすぎる可能性があります。
待つ時間が長すぎる、人や犬が多い場所で練習している、飼い主との距離を急に広げたなど、複数の条件を一度に難しくしていないか確認しましょう。
いったん確実にできる段階まで戻し、時間・距離・周囲の刺激などをひとつずつ変えていくと、犬が理解しやすくなります。
練習に集中できる環境をつくる
テレビの音や人の出入り、ほかの犬、おもちゃなどが気になっていると、合図に集中しにくくなります。新しいことを教えるときは、まず静かで気が散りにくい場所から始めましょう。
そこで安定してできるようになってから、少しずつ場所や状況を変えて練習します。家の中で覚えた行動を、別の部屋や屋外でもできるようにするには、それぞれの場所で経験を重ねることが必要です。
合図が犬に伝わっているか見直す
何度も合図を出しているのに反応しない場合は、犬がその言葉の意味を十分に理解できていないことがあります。
例えば、「まて」と言った直後に別の言葉を続けたり、同じ合図を何度も繰り返したりすると、どの言葉に反応すればよいのか分かりにくくなることがあります。
一度の合図で成功できる簡単な状況から練習し直してみましょう。
体調やストレスによる変化にも注意する
それまでできていたことが急にできなくなった場合や、触られることを嫌がる、落ち着きがなくなる、以前より反応が強くなるといった変化が見られる場合は、しつけだけの問題とは限りません。
痛みや体調不良、強い不安などが行動に影響することもあります。急な行動の変化が続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、動物病院へ相談しましょう。
また、人を傷つけるほどの噛みつきや強い恐怖反応があり、家庭内だけで安全に対応することが難しい場合は、無理にしつけを続けず、行動診療を行う獣医師や適切な方法で指導するドッグトレーナーなどの専門家に相談することも大切です。
まとめ
シーズーのしつけでは、犬種のイメージだけで「頑固」「覚えにくい」と決めつけず、愛犬の性格や経験、その日の様子に合わせて向き合うことが大切です。
できることが増えるまでのペースには個体差があるため、短期間で完璧を求める必要はありません。
しつけは単に言うことを聞かせるためのものではなく、犬と人が安全で快適に暮らすための共通ルールをつくるものでもあります。
失敗したときだけに目を向けるのではなく、日常のなかで落ち着いて過ごせたことや、望ましい行動ができたことにも目を向けながら続けていきましょう。
思うように進まない時期があっても、方法や環境を見直すことで改善できることがあります。
愛犬に合ったペースを大切にしながら、毎日の暮らしのなかで少しずつ信頼関係を築いていくことが、長く安心して一緒に暮らすことにつながります。



