子犬の社会化はどのくらい知られて実行されているんだろう?【研究結果】

子犬の社会化はどのくらい知られて実行されているんだろう?【研究結果】

子犬期に多くの犬や人間と接することで社会化を図る大切さはかなり知られてきましたが、ある調査の結果からまだまだたくさんの社会化不足の子犬がいることが浮き彫りになりました。調査の結果をご紹介します。

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子犬の社会化についての大規模聞き取り調査

4匹の子犬

『子犬の社会化』が大切だという言葉を聞いたことがある人は多いかと思います。
他の人間や犬との接触、家の内外の生活環境に馴染むことを含む「社会化」は、犬の生活の基礎となるものです。

その子犬の社会化に関して、カナダのゲルフ大学の研究者が296人の子犬の飼い主を対象にして大規模な聞き取り調査を行いました。調査の結果はどのようなものだったでしょうか。

社会化が不十分な子犬は意外と多かった!

ボクサーの子犬2匹

聞き取り調査に参加した296人は、全員が子犬1匹のみを飼っている人たちです。それぞれの子犬がきっちり生後20週齢になった時点で、質問に答えてもらいました。

子犬は生後3週齢〜14週齢くらいまでの間にできる限りたくさんのポジティブな社会的な経験(=犬や人間との接触)をしなくてはなりません。また将来いろいろな場面で遭遇する環境刺激に少しずつ慣れておく必要があります。このような経験のない犬は、臆病過ぎたり攻撃的になってしまう可能性が高くなってしまいます。

『十分な社会化』の定義をはっきりさせるため、この研究においては「2週間のうちに接触した人間が11人以上、接触した犬は6匹以上」と定め、これに満たない場合は社会化が十分ではなかったとカウントしました。

聞き取りの結果は、約3分の1の子犬が上記の定義に当てはまらない、つまり十分な社会化の経験をしていませんでした。

子犬の社会化としつけ教室

ジャックラッセルの子犬3匹

また別の質問項目では、49%の飼い主が子犬をしつけ教室に参加させていました。教室に参加した子犬たちが経験した社会化の機会は以下のようなものです。比較の対象は教室に参加していない子犬たちです。

  • 10〜20週齢の間により多くの人間と接触した
  • 14〜20週齢の間により多くの犬と接触した
  • 大きなトラック、サイレンの音、子供など、より多くの刺激を経験した

上記のことだけで、しつけ教室に参加したから社会化が理想的に行われたという因果関係を証明することはできませんが、子犬が新しい刺激を経験したことがしつけ教室に関連している可能性があるとは言えます。

しつけ教室でのプログラムについての回答は以下のようなものでした。

  • 「おすわり」「ふせ」「おいで」のコマンドを教えるところは80%超
  • 子犬同士が遊ぶ時間を設けているところは全体の70%
  • 騒音に少しずつ慣れる、おもちゃなどお気に入りのものを他のものと交換する、体を触られても平気にする練習などを取り入れているところはとても少なかった

せっかく他の子犬たちと触れ合う機会なのに、30%の教室が遊ぶ時間を設けていないのは残念なことです。

また、成犬になっても大きな音が怖い犬が多いことを考えると、騒音に慣れる訓練は大切だと言えます。

おもちゃの交換は犬にとって社会的な取引を学ぶ機会であり、体を触られる訓練は動物病院やトリミングに重要ですので、これらの訓練が増えることが望ましいとされています。

しつけ教室に行くことで社会的な刺激を経験する可能性は高くなるが、その内容によっては必ずしも万全とは言えないということがわかります。

社会化と飼い主の姿勢

ラブラドールの母子

しつけ教室に参加した飼い主は「良い行動をした時に報酬を与える方式」を選ぶ割合が高く、望ましくない行動に対して言葉で叱ったり罰を与えたりする割合が低い傾向も見られました。

これはしつけ教室でそのような知識を得たという可能性と、しつけ教室に通わせようと考える人は元から報酬を与える方式を知っていたり興味を持つ傾向がある可能性が考えられます。

しつけ教室に参加していない飼い主の場合、96%が望ましくない行動に対して罰を与えると答えています。(参加した飼い主は21%)

罰を与えると回答した飼い主の犬は臆病である傾向も見られました。4%の飼い主が「恐怖を克服するために、子犬を強制的に怖がっているものに向かわせる」と答えていますが、これはたいへんリスクの高い行動です。
しつけ教室に参加した子犬たちは掃除機などを怖がる割合が低い傾向も伺えました。

296人の回答者だけでは社会全体を代表しているとは言えませんが、今回の調査からは「子犬のしつけ教室に参加した飼い主は、犬に社会化の機会を与え、犬が何かに怯えることを察して対処する傾向」が読み取れました。

まとめ

ゴールデンレトリーバーの子犬たち

カナダで行われた、子犬の社会化に関する聞き取り調査の結果をご紹介しました。
子犬の社会化という言葉が知られるようになり、その重要性もよく耳にするようになったとは言え、社会化が不十分な子犬もまだまだ多いことが調査からわかりました。

子犬のしつけ教室への参加は社会化の良い機会である可能性も見えましたが、しつけ教室の内容については多くの改善の余地があることもわかりました。

また子犬が望ましい行動をした時に報酬を与えるトレーニング方式をさらに広めること、子犬に罰を与えることが社会化の妨げになり、成犬になってからの問題行動の引き金になる可能性を周知することの必要性も見えてきました。

犬の飼い主たちがこのような信頼できる情報を手に入れるための獣医師やトレーナーなど専門家の必要性にも研究者は触れています。

カナダでの調査ですが日本にも共通するところが多く、一般の飼い主〜専門家まで今後の参考にしてほしい結果ですね。

《参考》
https://avmajournals.avma.org/doi/10.2460/javma.251.12.1415

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