犬の訓練にはジェスチャーを使った指示が効果的だという研究
以前からドッグトレーナーや動物行動学者によって言われていたことですが、犬になんらかの指示を出す時にジェスチャーを使うとより効果的であるという観察と統計の研究結果が発表されました。
研究はイタリアのナポリ大学の研究者によるものです。様々なパターンでジェスチャーによる指示と言葉による指示を犬に与えて、それぞれの反応の速度などを調べたものです。
コミュニケーションのポイントがよくわかるようになる研究の結果をご紹介します。
犬たちの反応を観察するための実験はこんな風に行われた
実験に参加したのは9匹の家庭犬とその飼い主たち。
犬に指示を出す時に「ジェスチャーのみ」「言葉のみ」「ジェスチャーと言葉の両方」を使用した時、どのパターンに一番良い反応を示したかを調べます。
犬たちはあらかじめジェスチャーによる指示と言葉による指示の両方に応えられるように訓練されていて、実験の前に行われた予備テストで成績の良かった犬が選ばれています。
実験のために犬に課されたミッションは「持ってこい」。
木の枝、ペットボトル、ペンケースの3種類の物が用意され、犬に持ってきてほしい物を指差しながら、「枝」「ボトル」「ケース」とそれに応じた言葉の指示も出します。
指示が「ジェスチャーのみ」「言葉のみ」だった時の犬の反応は同じ程度に良好でした。どの犬もどちらか単独の指示だけで正確に指示に応えました。
指示が「ジェスチャーと言葉の両方」だった時には、犬の指示に反応する時間が短くなり応答が迅速になりました。
そして最後にジェスチャーと言葉が違うものを指すという指示が出されました。木の枝を指差しながら言葉では「ボトル」と言う具合です。このパターンでは9匹中7匹が必ずジェスチャーの指示に応えました。残りの2匹は時にはジェスチャー、時には言葉の指示に応え、その頻度はほぼ同じくらいでした。
つまり実験に参加した犬で言葉の指示をジェスチャーよりも優先した者は誰もいなかったということです。
犬は視覚による情報をとても重視している
上に挙げた実験の結果、犬は圧倒的に言葉よりもジェスチャーの指示に応答することがわかりました。
日常生活の中でも、言葉だけで「フセ」と指示すると犬はじっとこちらを見ているだけなのに「フセ」と言いながら手を下に降ろすようなジェスチャーをすると、即座に応えるという経験のある方は多いと思います。
過去の別の研究でも、録音された音声の指示に対しては犬の反応が大幅に低下することや、犬に背中を向けて指示を出した時にも、やはり犬の反応が低下することから、犬にとって唇の動きや顔の表情を目で見ることが重要である可能性が指摘されています。
まとめ
犬に対して「ジェスチャーのみの指示」「言葉のみの指示」「ジェスチャーと言葉両方の指示」「ジェスチャーの指示と言葉の指示が違う」の4種類の指示の出し方をした結果、犬はジェスチャーによる指示を重視する傾向が強いということがわかりました。
訓練をする時にも、犬とコミュニケーションを取りたい時にも、明確なジェスチャーを出すことで犬がスムーズに応答してくれるというのは、参考になる情報ですね。
犬はジェスチャー以外にも、人間の唇の動きや表情もよく観察して判断しているらしく、熱心にこちらの意図を読み取ろうとしているのかと思うと嬉しくなります。
また、犬の訓練やコミュニケーションの基礎がアイコンタクトを取ることから始まるというのも納得です。
経験から多くの人が実感していることも、観察や統計から結論が出ることでより多くの人に大切なポイントが広まるきっかけになりますね。
《参考》
https://www.researchgate.net/