問題行動解決の決め手になる!? 獣医師が行う『行動治療』とは?

問題行動解決の決め手になる!? 獣医師が行う『行動治療』とは?

犬の問題行動というと、トレーナーに相談という方が多いですが、トレーナーとは違う角度からアプローチをする獣医師による『行動治療』という分野があります。まだ認知度の低いこの分野について紹介します。

お気に入り登録
SupervisorImage

記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

「愛犬に問題行動が見られるようになってしまったので、専門家の助けを借りたい!」
そんな時、ドッグトレーナーに相談する方がほとんどでしょう。

しかし、実はまだあまり知られていないのですが、専門的な知識を持った獣医師が問題行動を治療する『行動治療』という動物医療の分野があります。
この記事では行動治療についてのあれこれを紹介したいと思います。

診察台の上のドーベルマンと二人の獣医さん

獣医師による『行動治療』とは?

愛犬の問題行動について動物行動学と医療の両方の視点から問題を探り、治療を行って解決していくのが行動治療です。
行動治療というのは動物医療のれっきとした一つの分野で、一通りの獣医学よりもさらに踏み込んだ専門知識が必要とされます。
愛犬の問題行動についてドッグトレーナーやかかりつけの獣医師に相談してもなかなか解決しなかったというような時に決め手になることも多いそうです。

例えば、特に理由が見当たらないのに犬が攻撃的に咬みついてくるという場合、脳内物質の分泌に変調を来しているのかしれません。
家中のあちこちでおしっこをするようになってしまったという場合、泌尿器系や神経系の病気が隠れていることもあります。

問題行動の原因に医学的な理由が絡んでいるか否かを確認することはとても重要なことです。
また、最初は痒みなど皮膚疾患で体を舐め続けていたのが、舐めると飼い主さんがかまってくれると学習してしまい、疾患が治っても舐め続けるというようなこともあります。

吠え合う茶色い子犬と白い犬

身体的な疾患については投薬などで治療をしていきますが、病気が原因だったとしても問題行動の間の人間の対応によって心理学的、行動学的なアプローチも併せて必要な場合も有ります。
そんな時に総合的に問題を解決するのが行動治療です。
症例によって、行動治療の獣医師とかかりつけの獣医師、またはドッグトレーナーが連携しあって治療にあたる場合もあります。

上に挙げた例のような攻撃行動やトイレの粗相は、すぐに医師やトレーナーに相談してみる人が多いのですが、意外と表に出て来ない「常同行動」と呼ばれるものも行動治療がカバーしている分野です。
自分の尻尾を追いかけていつまでもクルクル回っている、人の手や毛布を異常なくらい長時間舐め続ける、などが常同行動の一種です。
遺伝的な要素もあるのですが、投薬治療だけでなく飼い主さんの対応や運動などで改善できる場合も多いそうですので、行動治療というものがあると知っておくことは大切です。

具体的にどんなことをするの?

行動治療の診察は、カウンセリングから始まります。
行動治療の認定医制度を発足させた『日本獣医動物行動研究会』による共通のカウンセリングシートに記入し、それをもとに獣医師が飼い主さんに対してきめ細かいカウンセリングを行っていきます。
ただ単に飼い主さんが悩んでいる問題を挙げていくだけでなく、獣医師の方から問題行動が起こる時の状況、引越しなど環境の変化、家族構成の変化、地震など災害の経験など、その他多くの細かく深い質問がされます。
そうして診断が確定したら治療のプログラムを作成して、犬への接し方を飼い主さんに指導します。

診断のための血液検査やレントゲン、また継続して薬の処方が必要な場合は、かかりつけの獣医師と連携をとることもあります。
治療プログラムの中で獣医師が必要と判断した場合にはドッグトレーナーが紹介されることもあります。

犬は一匹一匹違っていて、その犬のまわりの環境も千差万別なので、行動治療のプログラムは全てその犬だけのオーダーメイドです。
ドッグトレーナーだけ、かかりつけの獣医師だけでは判明しなかった原因や、解決できなかった問題が明らかになることも多いそうです。

飼い主を見上げながら歩くロットワイラー

行動治療のメリットとは?

愛犬の問題行動についてすでに色々な方法を試しているにもかかわらず、満足の行く結果を得られないで悩んでいる飼い主さんはたくさんいます。
行動治療はそんな飼い主さんに希望を与える存在でもあります。
飼い主さんの心の苦痛を取り除くというのは行動治療の大きなメリットの一つです。

攻撃行動や、度を超えた無駄吠えなどが飼育放棄や安楽死につながってしまう可能性を考えると、行動治療は犬の命を救うことにもつながります。

犬自身も、何かを訴えているのに伝わらない、身体的な苦痛がある、ストレスを感じているなど問題行動の原因が取り除かれれば生活の質が改善されます。

このように行動治療は飼い主さんと犬両方の苦痛を取り除き、絆を深める役目をも果たすことができるのです。

まとめ

笑顔のトイプードル

犬の問題行動を、動物行動学と動物医療の両面から診察して治療していく行動治療。
問題行動が改善されることは、犬と飼い主さんはもちろん社会にとっても大きなメリットですので、行動治療という分野が広く認知されて行って欲しいものです。

アメリカなどに比べると行動治療の獣医師の数はまだ少ないのですが、個人病院でも行動治療を取り入れる動物病院も少しずつ増えてきています。
なかなか解決できない問題行動にお悩みの方は「犬 行動診療科」または「行動治療 動物病院」などのキーワードで検索なさってみてください。

お住まいの地域で行動治療を受けられる病院が見つかるかもしれません。
一組でも多くの犬と飼い主さんが笑顔で過ごせるようにお祈りします。

はてな
Pocket
この記事を読んだあなたにおすすめ
合わせて読みたい

あなたが知っている情報をぜひ教えてください!

※他の飼い主さんの参考になるよう、この記事のテーマに沿った書き込みをお願いいたします。

年齢を選択
性別を選択
写真を付ける
書き込みに関する注意点
この書き込み機能は「他の犬の飼い主さんの為にもなる情報や体験談等をみんなで共有し、犬と人の生活をより豊かにしていく」ために作られた機能です。従って、下記の内容にあたる悪質と捉えられる文章を投稿した際は、投稿の削除や該当する箇所の削除、又はブロック処理をさせていただきます。予めご了承の上、節度ある書き込みをお願い致します。

・過度と捉えられる批判的な書き込み
・誹謗中傷にあたる過度な書き込み
・ライター個人を誹謗中傷するような書き込み
・荒らし行為
・宣伝行為
・その他悪質と捉えられる全ての行為

※android版アプリは画像の投稿に対応しておりません。