オーストラリアンケルピーという犬種
オーストラリア原産で、本国で大変ポピュラーな犬種のオーストラリアンケルピー。日本でも安定した人気を保っています。ケルピーは1800年代後半にオーストラリアに羊や牛のハーディング犬として持ちこまれました。元々はスコットランドのスムースコリーとファームコリーから派生した犬を祖としており、オーストラリアの高温で乾燥した気候に適応できるように改良されたのが、現在のケルピーです。
改良の過程で、4000年以上オーストラリアに住んでいるイヌ科の動物であるディンゴをハーディング犬と掛け合わせたのがケルピーだという説がありますが、真偽のほどは定かではありませんでした。オーストラリアに適応したイヌ科の動物という点で、確かにこの説は理に適っているように思えますし、この説を支持している人も多くいます。そしてこのたび、オーストラリアのシドニー大学の研究者らが、オーストラリアンケルピーの祖先がディンゴと遺伝子を共有していたかどうかを確認するための遺伝子分析を行い、その結果が発表されました。
ケルピーとディンゴの遺伝子分析の結果を比較したら
ケルピーには、実際にハーディング犬としての使役に携わるワーキングタイプと、家庭犬に多くみられるショータイプの2つの系統があります。毛色や体型、コートの質感などもそれぞれの系統でかなり違っており、ワーキングタイプの方がディンゴによく似た外見の特徴を持っています。これら2つの系統のケルピーの遺伝子変異体が特徴付けされました。
そこにはケルピーとディンゴに特徴的なコートの色と耳のタイプの遺伝子が含まれていました。ケルピーの遺伝子情報をディンゴのそれと比較した結果、コートの色または耳のタイプの遺伝子も含めてどこにも検出可能な共通のDNAがありませんでした。つまり分析の結果、ケルピーとディンゴの間には遺伝的なつながりを示す証拠は何も見つからなかったということです。
先だって発表された「ディンゴは野生の犬ではなくて、ディンゴという固有種である」という研究結果でもディンゴ家畜化の歴史的証拠がないとのことでしたので、犬とディンゴにDNAの共通点がないというのはそれを裏付けているとも言えそうです。
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オーストラリアの人々にとってのケルピー
この結果を受けて研究者は、ケルピーの祖先にディンゴの血が入っているという説はどうやら外見が似ているという理由から来ていたようだと語っています。また、そこにはオーストラリアの人々がオーストラリアンケルピーという犬に対して持っている感傷的な気持ちもあるだろうとも述べています。
オーストラリアで改良して現在の姿になったケルピーは彼らにとって特別な犬で、それゆえに他とは違うユニークな特性が求められたのかもしれません。オーストラリアの野生のイヌ科動物であるディンゴの血というのは理想的なストーリーであったため、多くの人に受け入れられてきたと考えられます。
まとめ
シドニー大学の研究者が行った遺伝子分析から、オーストラリアンケルピーとディンゴには共通する遺伝子は発見されなかったという研究結果をご紹介しました。遺伝子の配列分析から、かつては分からなかった様々なことが明らかになって、犬種の歴史についても通説の真偽が分かるようになってきました。犬種の特性を正しく理解して、その特性を生かすためにも、犬の遺伝子研究はますます期待されています。
《参考》
https://www.mdpi.com/2073-4425/10/5/337
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/05/190528095225.htm
ユーザーのコメント
40代 男性 ミンパパ
ただ、ケルピーの動画を見ると姿、頭の良さ、運動能力は犬の中でもかなり上位クラスなので、ディンゴの血が入ってると伝えられてきたのかも知れませんね。
そうなると、キャトルドッグはディンゴの血が入ってるのかどうか、こちらも疑がわしくなってきましたね。