犬とウィリアムズ症候群の関係?
ウィリアムズ症候群は、人間に起こる遺伝子的な発達障害の一種であり、フレンドリーで優しく人懐こい性格が特徴として挙げられます。このウィリアムズ症候群と犬に何の関係があるのかと思った方も多いでしょう。
しかし、実は深い関係があることが近年の研究で解明されてきています。ここでは、ウィリアムズ症候群と犬の間にある関係を、イヌの祖先であるオオカミとの関係も交えながらご紹介して参ります。
ウィリアムズ症候群とは?
ウィリアムズ症候群とは難病指定されている遺伝病の一つで、日本人では10000〜20000人に1人の割合で発症すると言われています。
特徴としては、妖精のような顔つき、精神発達の遅れや体内機能の様々な症状が挙げられ、隣接遺伝子症候群(染色体に隣接する遺伝子の欠失や重複により引き起こされる疾患)と言われるものです。
そして、この症状のひとつとして性格が「非常にフレンドリーであること」が挙げられます。それは、「出会う人全てを愛する」と表現されるほど。
この症候群を持つ多くの方が、社交的でスキンシップを好み、明るく人懐こい印象を持たれると言われます。気遣いができ、優しく、警戒心が薄く、どんな人とも友人になろうと歩み寄ります。
イヌとオオカミ
イヌとオオカミの違い
イヌは野生のオオカミを人間が飼い慣らしたものだと言われています。その歴史は最も古く、15000年〜33000年前からとも。
イヌとオオカミとは大きく性質が異なります。見た目の野生感は勿論ですが、オオカミが人間に大きな興味を示さないのに対し、イヌは人間を強く意識し、愛着に似た感情を持ちます。警戒心にも差があり、更にイヌは人間の行動を手掛かりに理解しようとするという研究結果も。指差しや目線での行動指示ができるのもイヌならでは。人間への意識や共感性がかなり高い事がわかります。
遺伝子変化
これまでにイヌは大きく二段階での遺伝子変化を経てきた事が明らかになっています。一つはオオカミからイヌへの分岐したこと、もう一つは人為的繁殖によるものです。二つ目は人間との共同生活をより円滑にすることを目指したのではないかと言われています。
犬とウィリアムズ症候群
ウィリアムズ症候群との関係
ではイヌとウィリアムズ症候群にどのような関係があるのでしょうか。
近年の研究で、犬の遺伝子にウィリアムズ症候群との遺伝的類似性があることがわかりました。前述したように、野生のオオカミから家畜のイヌになるまでの過程で遺伝子の変化が起こりました。
その変化で生まれたのがウィリアムズ症候群の関連遺伝子だったのです。他の数個の遺伝子にも同じように変化が見られ、それが警戒心が強い野生のオオカミを人懐こいイヌに変えたと考えられています。
具体的研究
米科学誌に発表されて論文では、ウィリアムズ症候群関連遺伝子を持たないオオカミと関連遺伝子を持つイヌについての実験がなされています。
それは、「工夫しないと開けられない箱を開けられるように訓練し、その中に入ったソーセージを、人がいる状況で制限時間内に取り出す」というもの。その結果は、オオカミが犬よりも高い成功率を収めました。この理由は何故だと思いますか。
オオカミは、人がいても全く人に関心を向けることなく、ソーセージを取り出すことに集中し、高い成功率を叩き出しました。一方、犬は人間が気になって仕方なかったのです。よって、人間を見つめる時間が圧倒的に長く、制限時間内にソーセージを取り出す事ができませんでした。
この研究後、チームは犬の血液を調べ、変異遺伝子がこのようにイヌとオオカミを隔てる要因となったと結論付けたのです。
愛すべき遺伝子
イヌとオオカミ、そしてウィリアムズ症候群の関係について述べて参りました。これらは、まだまだ研究途上のテーマですが、この説を鑑みると犬が人間に友好的な理由が理解できる気がしますね。犬の人間への親和性が遺伝子単位で備わっているというのは、不思議でなんだか愛おしいように感じませんか。
犬の歴史や遺伝に関しては、調べてみると興味深いものが沢山。それらを知ると、彼らへの愛情や理解が増し、適切な対応を取る助けにもなりますよ。