子犬工場で生まれた犬の性質に関するリサーチ結果

子犬工場で生まれた犬の性質に関するリサーチ結果

劣悪な環境の繁殖施設で生まれた子犬。身体的に影響があるだろうことは簡単に想像できますが、精神面や行動面にも影響が現れていることがイギリスの大学の研究で明らかになりました。

パピーミル(子犬工場)で生まれた犬たちの問題行動

工場の犬

パピーミルやパピーファームと呼ばれる犬の繁殖施設。そのような施設で生まれた犬の性質や行動の特徴を、それぞれの飼い主に質問調査をしてまとめた研究結果が発表されました。
統計を取ってみて現れたのは、パピーミルで生まれた犬たちの多くが、問題行動や困った性質の傾向を持っていることでした。

まず最初にパピーミルとは

パピーミル=日本語にすると子犬工場。その名の通り、工業製品のように「より安く効率的に」犬を「生産」する商業的繁殖施設の俗称です。
家庭的な環境で親犬や子犬の一匹一匹を大切に育てるホビーブリーダーやシリアスブリーダーと真逆の環境です。親犬は必要な運動や医療を受けることもなく、体力の続く限り何度も繁殖に使われ、生まれた子犬は生後6週間ほどで親や兄弟から引き離されて流通されます。施設での飼育環境は多くの場合不衛生で非人道的です。
本来、犬の繁殖に携わるなら考えなくてはならない遺伝疾患、繁殖に使うべきでない気質などについても、ほとんどが無配慮です。このような状態ですから、パピーミル出身の犬にはブリーダー出身の犬に比べて健康上の問題が多く見られることは、今までに多くの研究結果が発表されています。

研究の概要

今回の研究を行ったのはイギリスのニューキャッスル大学の動物学者による研究チームです。人気のある3犬種、パグ、チワワ、ジャックラッセルテリアの飼い主への質問調査が実施されました。
飼い主はそれぞれの犬の出身施設についての質問によって2つのグループに分類されます。ひとつは「犬の出身施設が理想基準を満たしていた」もうひとつは「犬の出身施設が理想基準から外れていた」です。理想基準というのはイギリスの動物虐待防止協会または動物福祉基金が公式に定めているスタンダードです。簡単に言えば、責任感のあるブリーダーによって家庭的で清潔な環境で生まれた犬の飼い主か、運動も医療も清掃も行き届かない金網の中(つまりパピーミル)で機械的に生まれた犬の飼い主か、ということです。
飼い主への質問は、日常の犬の行動などについても細かく行われ、それぞれのグループで犬の行動や性質について現れた傾向について比較しています。犬の行動や性質についての質問はドッグトレーナーや保護施設が犬を査定評価する際に使われるC-BARQと呼ばれるスタンダードな形式で行われました。

質問内容に見られるチェックポイント

調査のために行われた飼い主への質問の項目の中にはこんなものがありました。

  • 子犬を購入した時に母犬を見ましたか?
  • 子犬の健康状態を証明する書類は用意されていましたか?
  • 子犬は家庭的な環境で飼育されていましたか?
  • あなた自身は子犬や母犬の福祉(幸せ、充足)について考えましたか?
  • 購入した時、子犬は何週齢でしたか?

これらは、子犬を購入する時にチェックしなくてはいけない事柄や、心に留めておかなくてはいけないことでもあります。

リサーチの結果は?

犬の行動や性質に関する質問項目の全てにおいて、パピーミルで生まれた犬には望ましくない傾向が見られました。全ての項目というのは「コマンドへの反応」「攻撃性」「恐怖、おびえ」「分離不安」「興奮性」「要求行動」「その他イタズラなど」で、それぞれに細かい項目が含まれます。
望ましくない傾向の中でも特に、人間や他の犬への攻撃性、初めて見る物への怯え、騒音への恐怖、強い分離不安、トレーニングの難しさ等が際立っていました。
この結果は、2011年にアメリカで行われた同様の調査とも一致しており、パピーミルの劣悪な環境が犬に及ぼす悪影響についてのさらに強い裏付けとなりました。多くの学者や動物福祉関係者そして一般の飼い主まで、この悪影響については予想がついていましたが、こうして数値による証明が成されることは、動物を巡る環境を改善するための重要な足がかりとなります。犬の望ましくない行動は、犬を飼っていない人や関心のない人にとっても影響を及ぼすものですから、犬がきちんとした環境で生まれ育って送り出されることは社会全体の利益でもあるのです。

まとめ

不安そうな犬

劣悪な環境のパピーミルで生まれた子犬は、家庭に迎えられた後も攻撃性、恐怖、不安などの傾向が強く、トレーニングなどもし難いことが質問調査の統計の結果明らかになりました。
ペット量販店やホームセンターなどで売られている子犬のほとんどはパピーミルの出身です。もしも今あなたの手元にいる愛犬がそういうお店から購入した子でも、それはそこにご縁があったということですから、どうぞ変わらぬ愛情を注いであげてください。けれど、もしも将来的にまた犬を迎えることがあれば、そういう場所から迎えるのではなく、きちんとしたブリーダーや保護施設などの選択肢を考えてみてください。パピーミル出身の犬に大金を払うことは、悪質な繁殖業者や流通業者に利益を提供することになり、また次の不幸な犬を生み出す資金を作ることを意味します。
動物福祉というのは、動物や動物好きな人のためだけのものではありません。問題行動に悩まされる社会、遺伝病や問題行動のために飼育放棄され、その結果の殺処分に使われる税金。幸せな動物がいる社会は人間にとっても幸せな社会なのだと多くの人に知ってもらいたいですね。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 女性 あい

    本当にこういう劣悪な環境で生きていかなければならない犬たちを思うと心が痛みます。こういう環境をなくすためには私たち飼う側も賢くならないといけない。知識をつけてまともな環境から犬を飼うという選択をしなければなくなっていかないと思います。
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