犬の祖先はオオカミ!進化のルーツや歴史、現代の犬種との違いを解説

犬の祖先はオオカミ!進化のルーツや歴史、現代の犬種との違いを解説

犬の祖先と言えば、多くの方が「オオカミ」と答えるのではないでしょうか。オオカミに似た犬種も多く、なるほどなぁと納得できますが、犬とオオカミには異なることもたくさんあります。そこで今回は、犬の祖先がオオカミとされる犬の起源や歴史と、オオカミとの違いについてまとめてみました。

犬の祖先とは

花畑で笑顔のチワワ

必要な情報が欲しくて犬のことを調べていると、「犬の習性は祖先であるオオカミからのもの」という言葉を目にすることは多いですね。

犬の祖先がオオカミと言われるようになったのは、古代の遺跡などで発掘された犬の骨を詳しく調べると、オオカミとよく似ていることからですが、それだけではありません。

2012年にアメリカの雑誌「ナショナル ジオグラフィック」に掲載された記事では、科学者の研究結果から、オオカミに最も近い遺伝子を持った犬種も多数発表されています。

遺伝子や骨がオオカミに似ていることから、犬の祖先はオオカミであるという説が最も有力とされているようです。

その昔1758年以来、犬は独立種とされてきましたが、1993年には分類上タイリクオオカミの亜種であると改められました。

かつて、犬はオオカミとコヨーテの混血説や、オオカミとジャッカルの混血説、ディンゴやパリア犬などの野生犬の祖先説など、様々な説が仮定されました。

しかし、2000年代になると、動物行動学、生物学、分子系統学の発展と共に、オオカミ以外のイヌ属動物の遺伝子が関与していることは僅かであることがわかりました。

研究は続いており、現段階ではっきりしていることは、インドオオカミが最も犬に近く、犬の主要な祖先となるようです。

犬の祖先の起源と歴史

犬の起源を解説するイラスト

そもそも、犬の起源はいつなのでしょうか?そして、現在に至るまでどのような歴史を辿ってきたのでしょうか。

まだまだ確定的な証拠が乏しく、解明されていないことも多い犬の進化ルーツですが、犬の起源と歴史を知れば、生命誕生の神秘を感じるとともに、1番最初に誕生した生きものはどこからきたのかなど、興味は尽きないでしょう。

約4000万年前の犬の祖先「ミアキス」

およ5600万~3390万年前、イタチのような姿をした小型の捕食動物「ミアキス」が生息していました。ミアキスが現在の犬や猫、アシカなどのイヌ科やネコ科、クマ科などの食肉目の動物の祖先であると考えられています。

体長は30cmほどで、長くほっそりした胴に長いしっぽ、短い足、出し入れできる鉤爪、5本の指があったとされています。イタチやフォッサに似た姿で、犬の姿を想像することは難しいですが、骨盤は犬に近かったようです。

約3500万年前の犬の祖先「キノディクティス」

およそ3720万~2840万年前になると、ミアキスが進化した「キノディクティス」が生息したとされています。

体高30cmほどの小型肉食獣となり、平べったい体に長い前足、しっかりした腰回り、長いしっぽ、長いマズルで、素早く走ることができると共に、穴掘りもできたようです。

この頃には裂肉歯(獲物から肉を切り取るための歯)が発達しており、更に3000万年前あたりにはキノディクティスから分岐して進化した「キノディスムス」も登場します。

体長1mほどのハイエナのような姿の肉食動物で、現在のイヌ科・リカオン属の祖先と考えられています。

リカオン属の「リカオン」は絶滅危惧種として、現在保護活動が行われています。オオカミでも犬でもない動物ですが、見た目はとても犬に似ています。

約2000万年前の犬の祖先「キノディスムス」

およそ2300万~1600万年には、キノディクティスが進化した「トマークトゥス」が生息していました。キノディスムスとは別の系統となり、外見がオオカミや犬に似ていることから、現在の多くの犬の祖先であると考えられています。

トマークトゥスのほか、3600万~250万年前まで北アメリカで生息していたことが確認されているボロファグスや、2480万~1030万年前に生息していたアエルロドンなどの肉食動物が犬の祖先候補とされています。

約700万年前にイヌ科11属の派生

ここから更に進化が進み、およそ700万年まえになると、イヌ科の12属に分類されます。リカオン属は独立するため、それを除いた11属が枝分かれし、その中のイヌ属が更に枝分かれをして7つの種が誕生しました。

イヌ属の7種は、アメリカアカオオカミ種、タイリクオオカミ種、コヨーテ種、ヨコスジャッカル種、セグロジャッカル種、キンイロジャッカル種、アビシニアジャッカル種となりますが、この中のタイリクオオカミ種の派生の1つが13万5000年前に突然変異をして、「イエイヌ(現在の犬)」が誕生したことが証明されています。

この科学的根拠から、様々な混血説は否定できるとし、犬の祖先はオオカミであるという説が濃厚になったようです。

イヌとヒトの関係と家畜化の歴史

タイリクオオカミ種から枝分かれした、イエイヌ以外のタイリクオオカミ亜種は約30種も存在し、様々なオオカミが存在します。

その中でイエイヌが誕生するというのは、突然変異の賜物であり、何らかの影響がなければ現在の犬は存在していなかったのですから、犬は神秘的な動物であると言えるでしょう。

イエイヌの「イエ」とは、家畜化されたという意味で”人間と共に生きる” ということから付けられたようです。イヌになる前、オオカミと人類に何らかの接触があったと確認できるのは、最も古くておよそ40万年前です。

オオカミから突然変異をし、イヌと分岐したのは13万5000年~1万5000年前と開きが大きく、いつイヌがイエイヌとして家畜化されたのかは定かではありません。

しかし、遺跡や遺骨、発見された状況から、およそ1万5000年前あたりからヒトとイヌが共に生活していたのではないか、と考えられています。

ヒトが狩猟スタイルを変化させ、動物に獲物を追わせるようになってきた時期とも一致するとも言われています。

先史人は様々な動物でヒトに慣れるか試し、人懐っこい個体をパートナーに選びだし、繁殖させていくうちにイヌができたのではないかという推論から、1950年代にはギンキツネによる実験も行われました。

その結果、ギンキツネの繁殖を続けていくうちに、性格も見た目も現代の犬の特徴に一致する、という面白い研究結果が発表され、イヌの家畜化にはヒトが大きく関わっていることがわかったのです。

この推論が正しく、1万5000年前に考えだされたことだとすると、偶然の産物でイヌは誕生したことになります。

犬の多様化は広がり、生息している地域や人間の狩猟スタイル、愛玩犬としてなど、人間の干渉によって様々な犬種が作り出されてきたことは言うこともありませんね。

犬は他の動物と違って、人間の感情が移入することもわかっています。家畜化された長い歴史があるからこそ、感情表現豊かで心優しい犬となったのかもしれませんね。

犬とオオカミの違い

仰向けに寝転がって甘える柴犬

犬の祖先はオオカミであるという定説にもあるように、犬の習性にはオオカミの行動からのものもあります。しかし、犬=オオカミではなく、異なる点も多数あります。

遺伝子の変異から犬は肉食ではなく雑食化していることや、人懐っこさに関する遺伝子はオオカミと大きな違いがあることなど、犬とオオカミの遺伝子の相違点や変異点はたくさんみつかっています。

遺伝子だけでなく、歯の大きさや歯の硬さ、顎の力なども格段にオオカミのほうが強いですし、足の位置や肉球の形状にも違いがあります。

オオカミには巻き尾はみられませんが、犬では巻き尾の犬種もいますね。また、しっぽを高く上げることができるのもイヌ科の動物では犬だけです。

このように、見た目や体の構造など様々な異なる点があり、それは犬の習性にもみられます。厳しい環境の中、オオカミは狩りをして食べるものを得なければいけませんが、家で飼われている犬は狩りの必要がありません。ですから、犬の自立心も独占欲もオオカミに比べたらかわいいものです。

性格にも大きな違いがあり、オオカミはそこまで友好的な性格ではありません。例え飼いならされたオオカミであっても、それは同様です。

自分の判断に従うため、指示を無視することも多いです。オオカミの脳は同体重の犬と比べて20%も大きいことから、なぜ指示を出すのかをしっかり理解させなければいけないようです。

最近の研究では、オオカミは群れで行動しますが、子育てにも積極的で、群れの中では親和的な行動や協力することが認められています。

一昔前までは服従関係や力関係のはっきりした縦社会と思われていましたが、それは誤りであるとされ、支配的な序列ではなく「家族」という考えに修正されました。

一方で、犬の群れの関係はオオカミよりもはるかに穏やかであり、群れを組むこと自体しないとも言われています。

そこまで子育ても積極的ではないこともあり、育児放棄する母犬も存在します。犬はずっと人間と共に生活してきたことから、生まれたときから人馴れしており、他のどの動物よりも高い認知能力を持っています。

犬とオオカミでは似たような習性ももちろんありますが、イヌとして進化していくうちに人間と共存するための、優れた能力を身に付けたものと考えられますね。

犬のルーツには未だ謎が残っている!

こちらを見つめるオオカミ

犬の主要な祖先は、オオカミであることがわかっています。しかし、オオカミから犬に移行したとされる時期に関するはっきりとした資料や、移行段階での遺骸が見つかっていないため、オオカミだけでなく他の動物も犬の誕生に関わっているのではないかともされています。

犬の誕生のルーツの多くが謎に包まれているため、「犬の祖先は犬である」と独立種として研究を続けている学者も少なくありません。

つい数ヵ月前には、1万8000年前のイヌ科のオスの赤ちゃんの死体が、シベリアの永久凍土から冷凍保存された状態で発見され話題になりました。

遺伝子を調べても、どんな種の動物なのかを特定することができなかったということから、オオカミから現代の犬に進化する過程の動物ではないかとされています。

その赤ちゃんは「犬かオオカミか?」というDog or wolf?から『ドゴール(Dogor)』と名付けられ、遺伝子の分析を進めています。

年々、科学の発展には目覚ましいものがあります。このドゴールちゃんの発見により、犬の祖先や誕生のルーツ、犬の進化の解明がされる日もそう遠くないことかもしれませんね。

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