犬といっしょに寝ることと『睡眠の質』
一昔前まで「犬といっしょに寝ることは躾の上で好ましくない」という考え方が主流でした。
しかし最近では犬も室内飼いが主流になり、同じ部屋で寝る人も増えて、そのことが特に躾の邪魔になると考える人も減っています。
そのような躾の視点とはまた別に『睡眠の質』にフォーカスして、リサーチが行われました。その内容をご紹介いたします。
人間の睡眠における「犬効果」
アメリカのメイヨー・クリニック睡眠医学のスペシャリストのチームが人間と犬の睡眠効率のリサーチを行いました。リサーチに参加したのは睡眠障害のない健康な大人40人と、その人たちの愛犬各1匹ずつ。参加者の88%が女性で年齢は30~58歳、犬は体重2~28kgまでの様々な体格で、年齢は2~8歳です。
人間も犬もそれぞれに加速度脈波計を着けて眠り、睡眠中の動きを記録して睡眠の質を探りました。睡眠調査は7泊分行われました。
その結果「愛犬といっしょに寝ることは多くの人にとって、睡眠の質を高める効果がある。」という結論が出されました。ただし、人間と犬は人間と同じ布団に入るのではなく、同じ部屋の別々のベッドで寝ることが条件だそうです。
犬と同じ布団で寝た場合には、眠りが浅くなったり途中で目覚めるなど睡眠の質が低下したそうです。
犬が小型犬でも大型犬でもサイズにはあまり関係がなく、同じ部屋で寝ることでよく眠れるようになる効果がありました。「犬と人間が同じ部屋で、ただし布団やベッドは別で」というのは確かに「なるほど」と納得がいきます。
犬と同じ布団で寝るのが眠りを妨げる理由
「同じ部屋で寝るとよく眠れるという研究結果はうれしい!」と感じた方、また「えー!同じ布団で寝るのは良くないの?」と思われた方、さまざまかと思います。
睡眠の質という視点から別の布団で寝る方が良い理由のひとつに、ヒトと犬の睡眠サイクルの違いがあります。
ヒトは一般的に夜布団に入るとそのまま朝まで連続して眠る、長い睡眠を一度にとる単層性睡眠の生き物ですが、犬は一日の間に睡眠を何回にも分けてとる多層性睡眠の生き物です。また、レム睡眠とノンレム睡眠の長さ、サイクルも違います。お互いのサイクルを邪魔されないように、別々の布団やベッドで眠るほうが良いというわけですね。
また、愛犬といっしょに寝ている多くの人が経験していると思いますが、小さい犬を押しつぶさないように緊張して寝たり、反対に大きな犬に押しのけられたりして、深く眠れないということもありますね。
犬の方でも、自分よりも体の大きな人間の寝返りで起こされてしまうということがあるのは容易に想像がつきます。
まとめ
睡眠医学の研究チームによるリサーチの結果「深く質の高い睡眠のためには、愛犬と同じ部屋で、それぞれ別のベッドで眠るのがベスト」という結果が出たそうです。
確かに同じ部屋にいることで安心感や幸せな気持ちが得られる一方で、睡眠サイクルや体のサイズの違いを考えると布団やベッドは別の方が良いというのは納得です。
このように論理的にはなるほどと思うのですが、実は筆者自身は愛犬と同じ布団で寝ています。犬に枕を奪われたり、寝ぼけて脚を動かす犬にキックされたりして安眠を妨害されることもよくあるので、リサーチの結果には異論がありません。
けれども我が家の愛犬はシニアと呼ばれる年齢なので、多分このまま同じ布団で寝る日々が続いていくことと思います。
新しく犬を迎えようと考えている方、今は別の部屋で寝ているという方には、このようなリサーチ結果があると参考にしていただけたらと思います。
飼い主さんの体質、犬の性格、住宅事情、様々な要素があるので絶対にこれだけが正しいという答えはありません。知識や情報を参考にしてバランスの良い選択をしていけると良いですね。
《参考》
https://www.sciencedaily.com/releases/2017/09/170907144553.htm
≪原著論文≫
Patel, Salma I. et al. The Effect of Dogs on Human Sleep in the Home Sleep Environment. 2017. Mayo Clinic Proceedings. Volume 92. Issue 9. 1368 – 1372. https://doi.org/10.1016/j.mayocp.2017.06.014
ユーザーのコメント
20代 男性 わんこマスター
これに関しては実際に風潮ではなく分離不安(飼い主と離れると興奮してしまう)を助長してしまう可能性、飼い主依存、愛犬依存に
陥る可能性、他には認知症を罹患した場合は夜泣き、昼夜逆転、徘徊など とてもじゃありませんが一緒には眠れません。
ですが急に寝床を別々にしたとしても犬にはストレスがかかります。
分離不安で興奮した場合二次的な疾患を発症してしまうケースもあります。
例えば発作、肺水腫、虚脱など
このことを考慮するとやはり一緒に眠ることのリスクは捨て去りきれません。
睡眠の質は良好かもしれませんが様々なリスクを考えると別々の場所で眠る方が犬にも人にも良いのではないかとも思います。