犬も爪とぎをすることがある?その理由と爪切りの必要性も解説

犬も爪とぎをすることがある?その理由と爪切りの必要性も解説

犬が地面で猫のように爪とぎをする姿をみたことはありませんか?犬も爪とぎをするのでしょうか。実は爪とぎではなく「穴掘り」をしているのです。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

犬が爪とぎをする理由

犬のあし

犬の爪とぎのように見える行動は「穴を掘る、巣穴を作る」という犬の先祖から引き継いだ習性である場合が多いです。

犬はもともと外で暮らす生き物で、昔は穴を掘ってそこを巣にして暮らしていました。そしてその穴に餌を保管したりしました。

現在は穴を掘る必要はありませんが、本能として残っているため穴を掘る動作をします。

人間は穴掘りを爪とぎと勘違いしてしまうことがあるのですが、穴掘りは爪をといでいるのではなく居場所を整えてそこで寝たりするのが目的なのです。

しかし、中には遊びの延長としてやる犬やストレスがたまり、穴掘りで発散している犬もいます。

本能だからしょうがないと終わらせるのではなく、どういった意味の穴掘りなのかを考えてみると犬の気持ちや状態がよりわかるかもしれません。

犬の爪とぎに見える行動「穴掘り」とは

穴を掘るドーベルマン

先祖からの習性

犬にとっての穴掘りは先祖からの習性で、穴掘り行動の多くは寝る前に出ることが多いです。

安全に眠ったり、休むための穴を確保するために穴をほっていた名残なのです。また穴の中を整えて静かに休めるようにする行為でもあり、寝る前に穴を掘ることが多いのはそのためです。

ただ、習性とはいえ家の中の壁やソファーをボロボロにされてはたまりませんよね。穴掘りもしつけである程度やめることはできます。

しかし無理にやめさせると大きなストレスの原因となることもあるため、ダンボールや傷がついてもいいものでよく穴掘りをする場所をふさいだりすると良いでしょう。

可能であれば家具の配置を変えるのも良いですね。また、犬のベッドだけは穴掘りをしてもいいもの、としても良いでしょう。

遊びとしての行動

穴掘りは巣穴を作るためだけではなく、遊びとして行う犬もいます。

穴掘りをボール遊びやかけっこなどの他の遊びと同じように、犬自身は穴を掘っているときは興奮しているため注意をしてもいうことをききません。

とくに若い犬はエネルギーも有り余っているので簡単にはやめないかもしれません。もし寝る時間でなくても穴を掘る場合は遊びと捉えている可能性が高いでしょう。

しつけをしてやめさせる場合、タイミングをみてしっかりと注意しないと犬は「穴掘りをしたら飼い主さんがかまってくれる」と間違った認識をしてしまいます。

そう覚えてしまうと遊んでほしいときや、構ってほしいときに穴を掘るようになってしまうのできちんとしつけをするようにしましょう。

ただ、穴を掘られてからそれがダメだと教えるしつけをするよりは、最初から穴を掘られない環境を作る方が、人間にとっても犬にとっても良いでしょう。

ストレス発散からの行動

習性や遊びとは別に、ストレスが溜まっていてそれを発散するために穴を掘る場合もあります。

運動不足やコミュニケーション不足などでストレスが溜まると何かで発散しなければ犬もイライラしてしまいます。散歩や遊び、仲間とのコミュニケーションのかわりに穴を掘って発散しようとします。

寝る前以外であったり、声をかけてもやめずに一心不乱に掘っている場合はストレスが原因のこともあります。

ストレスが溜まりすぎると、噛む、家具を壊す、過剰に吠えるなどの問題行動につながるので、犬にストレスを与えないように、散歩や遊び、コミュニケーションでストレスを発散させるようにしましょう。

爪とぎをしない犬に爪切りは必要?

爪切り

犬の場合は猫と違って爪とぎはしないので、人間に爪を切ってもらう必要があります。

アスファルトの上をたくさん歩いている犬で、爪がアスファルトで削られるため爪切りが必要のない犬もたまにはいますが、多くの犬では普段の散歩ではそこまで爪は削れません。

また、そのような犬でも親指(狼爪)の爪切りは必要になります。

犬の爪の中には血管が通っていて、それを切ってしまうと痛みを感じます。痛みを感じると、犬は爪切りを嫌なことだと覚えてしまい、抵抗するようになってしまいますので注意が必要です。

白い爪だと血管が見えやすいのですが、黒い爪だと血管が見えにくいので少しずつ切っていかなくてはなりません。自分で切るのが不安という方はトリマーさんに頼んだり、病院で切ってもらうようにしましょう。

切らずに伸ばし続けると爪が内側に丸まって、肉球に刺さってしまう可能性があります。伸びた爪が隣の指の皮膚を傷つけることもあります。

また、伸びすぎた爪が何かにひっかかり、爪だけではなく指や手先足先のけがにつながることもあります。

散歩の頻度や場所が変わると自然に爪が削れる量も変わります。散歩で普段はある程度爪が削れている犬の場合にも、定期的に爪の伸び具合を気にしてあげましょう。

まとめ

足を前に揃える犬

犬の爪とぎに見える行為の多くは穴を掘る行動です。穴を掘って居場所を整えて、ゆっくりと休もうとしているので寝る前に行うことが多いようです。

また遊びとして行う犬やストレス発散のために行う犬もいます。愛犬の穴掘りがどのタイプなのかを把握することで、愛犬の現在の状態や何を求めているのかなどを知ることができます。

穴掘りは習性であるため無理に禁止するとストレスを溜める原因にもなるので、穴を掘ることを前提にして家具の配置やダンボールを置くなどの対策が必要になる場合もあります。

犬の習性も尊重しつつ、家を傷つけない方法が見つかると良いですね。<

また自分で爪とぎをしない犬は爪が伸びすぎると人間が切る必要があります。うっかり血管を切ってしまうと痛みから怯えてしまい爪切りを嫌がるようになってしまいます。

もし自分で切る自信がない場合はトリマーさんに頼んだり、病院でお願いしたりしましょう。

監修獣医師による補足

ネズミ狩りを仕事としていたテリアやアナグマなどの猟を仕事としていた狩猟犬は、穴掘りの習性が強く残っているかもしれません。

ストレスによる穴掘りについては、「退屈だから穴を掘って楽しむ」程度なら良いのですが、ストレスや退屈の程度が重度となり、病的にそれを繰り返す「常同行動」になってしまうと、飼育環境の改善や治療が必要となります。

外飼いの犬やドッグランでは暑い夏、地面を掘って温まっていない土の上で涼をとる犬もいます。

獣医師:木下明紀子
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