犬の乳腺炎とは?
犬のお腹を見ると、左右に乳頭が並んでいるのがわかるはずです。オスにも乳頭はありますが、メスは母犬になった場合に子犬に母乳を与える必要があるため、乳頭に沿って乳腺という分泌組織が存在しています。
乳腺炎とは、細菌感染などが原因で乳腺が炎症を起こしてしまう病気です。子犬を産んで授乳中の母犬が発症することが多いため、産後の犬は特に注意しましょう。乳腺炎は発症した犬の命を奪うリスクは低い病気ですが、乳腺炎になった母犬の母乳を飲んだ子犬が命を落とす危険性もあります。
他にも、発情期が始まってホルモンの影響により体が妊娠していると錯覚してしまう「偽妊娠」の状態になった犬や、高齢でホルモンの推移に異常が出ている犬は乳腺炎を発症する可能性が高いです。
基本的にはメスに特有の病気ですが、稀にオスが発症するケースもあるといわれています。乳腺炎は年齢や犬種に関係なく発症する病気なので、愛犬に乳房の腫れ・痛み・発熱といった乳腺炎が疑われる症状が見られた場合は、すぐに動物病院で検査を受けましょう。
愛犬が乳腺炎になるリスクが高いメスの場合は、飼い主さんが日頃から乳房に異常が見られないかをチェックすることで早期発見ができるとよいですね。適切な治療を受けることで炎症は抑えられます。
犬の乳腺炎の症状
乳腺炎の基本的な症状は、熱や痛みを伴いかつ乳房部分が腫れてしまいます。犬の乳房が腫れ上がるので、飼い主も見ただけで乳腺炎になっている事が分かります。
よく似た病気で犬に乳腺腫瘍という病気もありますが、乳腺炎は主な症状が、炎症症状で留まる場合が多いです。乳腺腫瘍の場合は、犬の乳房にしこりが見られます。また、乳腺腫瘍は10歳以上のシニア犬が罹患する確率が高いという点も見分け方のポイントです。
次に、犬の食欲不振や元気がなくなってしまうといった症状も見られます。発熱する事も多くあるので、乳腺炎の症状を見逃すという事はあまりないでしょう。
更に親犬が授乳拒否をする際も乳腺炎になっているかどうか疑ってみた方が良いでしょう。腫れているかどうか分からない場合には、乳房部分に触れて異常な張りや熱感があれば乳腺炎になってしまっている可能性が高いです。
犬が嫌がらずに乳房部分を触る事が出来ても、乳房にしこりのようなものが見受けられる場合には軽度の乳腺炎か 乳腺腫瘍の症状である場合が多いです。いずれにしても 速やかに動物病院を受診しましょう。
乳腺炎の検査方法は?
- 乳房の触診
- 顕微鏡で乳汁の検査
- 乳房のFNA(穿刺吸引細胞診)
犬の乳腺炎の検査では触診により乳房の腫れやしこりを確認したり、顕微鏡を使って乳汁の状態を調べたりします。FNA(穿刺吸引細胞診)とは、針で採取した細胞を顕微鏡で観察する検査方法です。
この他にも乳腺炎の原因が細菌の場合は、細菌培養や感受性試験によって細菌の種類を調べ、どの抗生剤が治療に効果的かを判断することになります。発熱や食欲低下などの症状があるなら、血液検査を行うことも。
犬の乳腺炎の原因
子犬への授乳
原因として、子犬への授乳により乳腺が急速に発達し、お乳の分泌が上がるため、乳腺炎になってしまいます。
また、授乳による子犬の噛み傷から細菌が入り込み、炎症を起こしてしまった結果が乳腺炎の症状として表れる場合があります。
犬の妊娠または偽妊娠
犬が妊娠、または偽妊娠により、ホルモンの分泌が活発になるために乳腺が発達してお乳が出てしまう事があります。妊娠の有無に関わらず、メス犬は発情期を迎えると乳腺が急激に発達する事があります。
犬の想像妊娠によっても、ホルモンの分泌が過剰になり乳腺が急激に発達した結果、乳腺炎になってしまうので注意が必要です。
犬の乳腺炎の治療法
- 犬の乳房部分を冷却する
- 犬に投薬治療をする
- 犬の乳房を切除する
犬の乳房部分を冷却する
母乳は血液で出来ているため、犬の乳房部分を冷却し、血液の流入量を減らす方法が最も効果的な治療法です。犬の乳房部分を冷却する事で乳腺炎を抑える効果もあるので、母乳を絞る事が出来ない犬にピッタリな手段です。
子犬には、親犬が乳腺炎を起こしていて授乳中の場合には、細菌感染を起こしている可能性もあるため、人工哺乳に切り替える事も検討しましょう。
犬に投薬治療をする
犬の乳腺炎の炎症が、細菌感染によるものだと判断出来た場合には、抗生物質やホルモン剤が投与されます。抗生物質には熱を下げる効果もあるので、犬の乳房部分を、冷やす事を指示された場合であっても出される可能性がある薬です。
投薬治療を行う犬が親犬の場合には、子犬の授乳は避けましょう。
犬の乳房を切除する
犬の乳腺炎には、乳房内が化膿してしまい回復が難しい場合があります。そのような場合には、最終手段として乳房部分を切除する場合があります。このようなケースはあまりありませんので最悪のケースとして紹介します。
手術となってしまうので犬の乳腺炎に気付いた場合には、早期発見する事が手術回避につながります。犬の乳頭切除手術の料金は、5万円から十数万円が相場です。
犬の乳腺炎の予防
犬の乳房への細菌感染による炎症を防ぐために、部屋の中は清潔に保ちましょう。清潔にする事で乳腺炎のリスクを減らせます。
また犬が授乳中の場合は、乳房部分を定期的にガーゼやタオルで拭ってあげると細菌感染のリスクが下がります。
もし子犬を望んでいない場合は、避妊手術をする事で犬の乳腺炎の予防をする事が出来ますが、子犬を出産するか否かの決断は、きちんと下してから手術の申入れをしましょう。
まとめ
犬の乳腺炎は発症すると、酷い腫れを起こしてしまうので見ていてとても辛いです。
しかし犬の乳房部分を冷却する治療と、投薬治療である程度は治す事が出来ます。中には犬が乳腺炎だと思っていたら、乳腺腫瘍という別の病気である場合もあります。
乳腺腫瘍は5割の確率で悪性腫瘍の確率があるので、犬の早期発見と早期治療をしなければ手遅れになってしまう可能性が高いです。
犬に乳腺炎の症状が見受けられた場合は、念のため動物病院へ犬を連れて行ってあげましょう。