犬が人に飛びつく理由とは?
愛情表現
飼い主さんが大好きで体に触れて欲しい、遊んで欲しいと、犬が飛びついてくることがあります。
飼い主さんが好きだからといって、犬が興奮するままに飛びつく行為をやめさせることが出来ないのは良いことではありません。
嬉しさ、楽しさで興奮し、行動の制御が出来ない
犬は、嬉しくて感情が爆発して目の前の相手に飛びついてしまうことがあります。犬にとって「大好き!」な人や「いつもおやつをくれる人」は飼い主さんや家族だけでなく、ご近所の人、獣医さん、飼い主さんのお友達だったりもするでしょう。
嬉しくて飛び付いてしまう場合、犬は興奮のあまり冷静ではいられなくなっています。自分の行動を自分で制御できない状態です。
飼い主さんが「ダメ」と言ってやめさせようとしても、「オスワリ」と言って別の指示をだしても、それは犬には届きません。大きな声で繰り返すほど「飼い主さんも興奮している!」と犬に思わせるだけでしょう。
服従心の低下による暴走
犬には、自分より弱い存在や自分より立場が下の者に対しては、自分が信頼できると認めた相手と違う態度をとることがあります。
飼い主さんには飛びつかないけれど、家族に小さい子供さんや成長した大人であっても、飼い主さんよりも立場が下の家族には飛びつくということがあれば、この「服従心の低下による暴走」の可能性があります。飛びつかれる人と犬との関係性を見直す必要があるでしょう。
服従心の低下と言うと、「それはアルファシンドロームに基づく考えだ。アルファシンドロームは間違っている理論なんだからそんなことはない」と言う人もいますが、「服従心の低下」は、犬が常に上の立場を狙って挑戦をしている、という意味ではありません。
「その人を信頼していないから指示に従う必要ない」と思っているということです。
食べ物への執着
普段から人の手から食べ物を与えられていて、なおかつ、「飼い主の許可がなければ食べ物をもらってはいけない」という躾が出来ていない場合、食べ物欲しさに持っている人に飛びついてしまうことがあります。
これは強い欲求からの「衝動」によって飛びついてしまう行動です。小型犬なら飛びつかれてもさほど問題にはなりませんが、大型犬なら、飛びつかれた人間が転倒して怪我をすることも十分に考えられます。
「衝動のまま飛びつく」という行動は、出来るだけ早く止めさせましょう。小型犬であっても相手によっては非常に怖い思いをする場合もあります。大きさや犬種にかかわらず、「衝動のまま飛びつく」ことを良しとするのはやめましょう。
警戒心、恐怖心から飛びつく
犬は、自分のテリトリー内に勝手に入ってきた侵入者に対して、激しく吠えて威嚇しているのに、さらに「それ以上近づいて欲しくない」と様々なボディランゲージで表現しているのに構わずに向かってくる相手に対して、攻撃するために飛びつくことがあります。
例えば、馴染みのない来客やセールスマンなどの場合、飼い主さんが制御できないほど興奮して吠えるようであれば、咬みつくことも考えられます。警戒心や恐怖心から人に飛びつく場合は特に注意が必要です。
番犬として犬を飼っている場合でも、人を傷つけることがあってはなりません。侵入者を警戒して欲しい場合でも、飼い主の命令で威嚇をやめさせる必要があります。
臆病で恐怖心からの自己防衛として人に飛び付く犬に対しては、時間をかけて恐怖心を和らげるトレーニングをすること、さらに犬が受け入れられる限界を超えた恐怖を与えない環境を整えなければなりません。
飛びつき癖を治す方法
一旦、「マテ」「オスワリ」をさせる
犬が興奮している時に飼い主さんの指示で「我に返る」ようにトレーニングします。
最初は、興奮していると飼い主さんの声だけでは指示に従うことが出来なくても、ご褒美のオヤツなどを使い、人に飛びつくほど興奮している時にオヤツを見せて「マテ」「オスワリ」と指示を出します。その指示に従い落ち着いていられることが出来たら、すぐに褒めてご褒美を与えます。
「飼い主さんのマテ、オスワリに従うとご褒美がもらえる」と覚えたら、興奮し始める前のタイミングで、「マテ」「オスワリ」の指示を出して愛犬の意識と行動を制御します。
間違っても、興奮している犬にオヤツを食べられてしまうことがあってはなりません。犬は「興奮して飛びついた=オヤツがもらえた」と理解し、興奮して飛びつくことがより強化されてしまいます。
興奮している状態では「マテ」「オスワリ」などの指示に従うことは簡単ではありません。また、「マテ」「オスワリ」の指示に従っていてもまだ興奮している場合には、ご褒美のオヤツを与えてはいけません。
ご褒美のタイミングは、犬が「落ち着いている=望ましい状態」の時です。
無視する
犬が飼い主さんや人に対してなんらかの欲求を訴えている場合や、興奮しすぎて「マテ」「オスワリ」の指示が全く耳に届かない場合は、飛びついてきた犬に対して「無関心」「無視」と言った態度を取ります。この時は目も合わさず、声も掛けません。
犬が不審に感じて飛びつくのをやめたら、その時点で穏やかに褒めます。この方法は、一度では効果が出ないかもしれませんが、繰り返すことで「飛びついても何ももらえない」「飛びつくのをやめて落ち着いたら褒められる」ことを犬は学習します。
無視しても飛びつき続けるなど興奮がおさまらない犬の場合には、飛びつくのをやめるのを待つよりも飛びつかせない状況を作ることを考えましょう。
飼い主さんが帰宅した時に嬉しくて飛びついてくるのをやめさせたいのなら、犬の興奮が冷めるまで犬と接触しないようにするなどです。そのために廊下にゲートを設置したり、部屋の外から犬の様子を観察できるカメラをつけたりする必要があるかもしれません。
監修ドッグトレーナーによる補足
犬を無視することは意外と難しい課題。無意識に犬の方を見てしまったり、つい声をかけてしまうことが多いからです。
トレーニングをしているところを動画撮影することで、ご自身が無意識で行っている行動や、声がけなどの確認ができるのでこの練習にはおすすめの方法です。
指示によって「飛びつく」ことを覚えさせる
「飛びつく」ことを指示して出来るようにトレーニングする、という方法もあります。これは、飛びついて良いのは「飛びつく指示が出た時だけ」と覚えさせるトレーニングで、「指示されて飛びついたらご褒美がもらえる」と犬に学習してもらいます。
このトレーニングをするには、犬が興奮せずに落ち着いた状態でいられるようにならないといけません。「指示に従って飛びついた」時だけご褒美がもらえると覚えてもらいましょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
これは合図法と言い、犬の衝動をコントロールする時に有効とされるテクニックです。
緊張で手が震えてしまう人に対して、わざと手を震わせるようにさせることで手の震えが自然と消えたという実例もありますが、犬も同じようにわざと飛びつかせることで衝動をコントロールできるようなるのが目的のトレーニングです。
まとめ
「人に飛びつく」という犬の行動には、必ず「理由」があります。
他人や飼い主さん自身が怪我をするなどの事故を防ぐためにも、愛犬がどんな理由で人に飛びつくのかを見極めて、出来るだけ早く飛びつき癖を治すようにしましょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
犬の飛びつきは、ぴょんぴょん飛び跳ねる姿がかわいくて問題行動とは見られにくいこともありますが、体のサイズが大きければトラブルに繋がる可能性も高まってしまいます。
飛びつかれた人だけでなく、犬も股関節や膝関節、頚椎などに負担がかかってしまうこともあるため、飛びつきは改善させた方が良いと考えられます。
ちょっとした飛びつきで必ず問題が起こるとは限りませんが、犬の大きさに関わらず問題を起こさないためにしっかりとしつけをすることは大切です。
ユーザーのコメント
30代 女性 匿名
行動を制限する支持だけでなく、許可する指示もある方が犬にとって良いことのような気がします。
興奮して飛びつくが自然な振る舞いなら、何かしらの方法ででやらせてあげたいです。