老犬が抗生物質を飲むと副作用のリスクはある?
抗生物質は皆さんも使用したことがあるでしょうか。抗生物質は細菌に対して殺菌作用、もしくは静菌作用を持つ薬です。細菌に感染したときに殺菌作用で細菌を減らしたり、増殖を抑えることができます。犬で抗生物質が使われる感染症の代表的なものを3種類あげます。犬を飼育したことのある方ならいずれかの病気の経験があるかもしれません。
- 膿皮症(皮膚炎)
- 外耳炎
- 膀胱炎
他にも抗生剤を使う病気は数多くありますが、これらの病気は動物病院で日常的に診断されることの多い感染症です。いずれの病気も皮膚や耳、膀胱に細菌感染が起こっているため抗生剤を使用します。
どんな薬でも副作用が出る可能性はある
薬を使うときに怖いことは副作用の存在だと思います。抗生物質でも副作用は存在します。しかしどんなに安全といわれている薬でも副作用はあり、だれでも購入できるような整腸剤でも副作用があります。
薬についている添付文書を見てみるとすべての薬で副作用があることがわかるかと思います。基本的に販売されている物は国が試験を行い重篤な副作用がないことが確認されていたり、獣医師もよく起こる副作用は把握したうえで処方しています。そのため薬を使う際に過剰に副作用を心配する必要はありません。
老犬は若い犬に比べると副作用が出やすい
抗生剤を含むすべての飲み薬は口から飲んだ後、腸で吸収され血液中に溶け込み全身へと広がります。そののちに腎臓や肝臓で分解・代謝され尿から排出されます。老犬になると腎臓や肝臓の機能が低下していて代謝が遅くなります。
代謝が遅いと体の中に薬の成分が長くとどまることとなり、若いころと比べて薬の副作用が出やすくなります。同じ薬でも若いころは副作用がなかったといっても、老犬になってから飲むと副作用が出てしまう場合があります。
老犬でも薬の量は減らさない
老犬は若い犬にくらべて薬の代謝が遅く、体から薬の成分が出ていかず副作用が出る可能性が高いことを解説しました。薬の量を減らしても体に残っているから効果があるように感じるかもしれませんが、副作用を気にして薬の量を減らすことはやめましょう。
特に抗生剤は一定量をしっかりと飲まないと効果を発揮できないことがあります。中途半端な量を飲ますことで効果がないどころか副作用のみが出てきてしまう可能性があります。副作用を気にして勝手に薬の量を減らすのは危険な行為なのでやめましょう。
老犬が抗生物質を飲んだ時に出やすい副作用
老犬は若い犬に比べて副作用が出やすいことを説明しました。抗生物質の副作用にはどういったものがあるでしょうか。代表的なものは以下の3つです。
- 下痢や嘔吐などの消化器症状
- アレルギー反応
- 薬物相互作用
この3つがすべて抗生剤に共通した副作用です。これからそれぞれの副作用について説明をしていきます。
下痢や嘔吐などの消化器症状
整腸剤はお腹に合わなければ下痢や吐き気が出てきてしまいます。事前に調べる方法はなく実際に飲んでみてお腹に合うかどうかをみていく必要があります。合わなかった場合は投薬を中止して獣医師に相談しましょう。投薬を中止すれば治るので、ほかに疾患がなく元気であれば心配する必要はありません。
下痢や嘔吐は整腸剤などすべての薬で起こる可能性がある副作用です。しかし抗生剤は腸内細菌に対しても働いてしまい細菌バランスが崩れることがあります。抗生剤は他の薬に比べて下痢や嘔吐を引き起こす可能性が高い薬であるため注意が必要です。
ただし老犬で下痢や嘔吐などをおこしてしまった場合、お腹の調子が崩れて食欲不振へとつながることがあります。腎臓疾患などの基礎疾患がある子が食欲不振になると腎臓病が重症化してしまう可能性があるので、消化器症状が出ても食欲がしっかりあるかどうか確認することが大事です。
アレルギー反応
抗生剤の錠剤に含まれる成分によってアレルギー反応が出ることがあります。現れるアレルギー反応は様々で、代表例をあげていきます。
- 下痢や嘔吐
- 顔が腫れる
- 皮膚が痒くなる
- 目や口周りが赤くなる
アレルギー反応が起こるとこれらの反応が起こります。人でアレルギー反応が起こるとアナフィラキシーショックを引き起こし呼吸困難となって死亡する可能性もあります。ただし犬では死亡リスクとなるようなアレルギー反応はほとんど起こることはありません。またアレルギー反応は一時的なものであるため薬を中止することで治るため、症状が出たらすぐに獣医師に相談すれば問題ありません。
薬物相互作用
薬物相互作用とは2種類以上の薬を同時使用した場合に、薬同士の相性が悪くお互いの効果を弱めてしまうことを指します。例えば一部抗生剤と抗凝固薬を一緒に飲むと抗凝固薬の作用が強く出てしまい血が止まりにくくなってしまうなどが知られています。しかし事前に獣医師に飲んでいる薬を伝えていればおこることはないので心配ありません。
老犬に抗生物質の副作用が現れた時の対処法
もし副作用が出た場合の対処法はなにがあるでしょうか。基本的には副作用が出た薬を中止すれば治ります。しかし治療したいことがあるために薬は処方されています。特に抗生剤を止めると治療したい感染症が悪化します。そのため飼い主の判断で勝手に服用を中止したりせずに専門家である獣医師に相談しましょう。
抗生剤の種類を変更する
抗生剤は細菌に対して殺菌作用や静菌作用があります。細菌の種類により使用する抗生剤が決まります。しかし1種類の細菌に対して複数の抗生剤で効果があります。最初に使った抗生剤が体に合わず副作用が出てしまったとしても、多くの場合で別の抗生剤を使用することができます。
副作用が出たからといって抗生剤の使用を中途半端に止めてしまうと、生き残った細菌が耐性菌となって抗生剤が効きにくくなってしまう可能性があります。耐性菌が発生すると感染症が悪化したり効く抗生剤がなくなり治療が不可能となる場合もあります。
そのため副作用が出て使用が継続できなくなった場合は獣医師と相談し別の抗生剤に変更する必要があります。また皮膚炎や結膜炎では塗り薬や目薬などに変更できる場合もあるので内服薬以外の手段がないかどうか相談してみるといいでしょう。塗り薬などは局所的な治療薬なので飲み薬と比較すると副作用が出にくいです。
副作用を受け入れて我慢する
副作用が出た場合は獣医師への相談は必須です。下痢といっても少し便が柔らかくなった程度であったり、症状が軽度の場合は一時的なものとして副作用を受け入れることも選択肢です。出てしまった副作用と治療しなければいけない感染症を比較しどちらを優先するかを決めましょう。ただし老犬の場合は軽度の副作用であっても基礎疾患を悪化させてしまう可能性があるので注意が必要です。
老犬の抗生物質による副作用を避けるための予防策
初めて飲む抗生物質であれば副作用を事前に防ぐことは不可能です。しかし副作用は出ないにこしたことはなく可能性を減らすことは出来ます。
- 他の動物病院で処方された薬があれば事前に伝える
- 薬を飲むタイミングや量は獣医師の指示を守る
- 人間や他の犬に処方された薬は与えない
この3点を守るようにしましょう。それではなぜこの3点が大事なのか解説します。
他の動物病院で処方された薬があれば事前に伝える
万が一同じ薬を処方され高容量で薬を使用した場合、副作用が出る可能性が高いです。さらに薬物相互作用により今まで飲んでいた薬やこれから飲む薬の効果が十分に得られなくなる可能性があります。
薬を飲むタイミングや量は獣医師の指示を守る
薬は吸収のされ方の違いで食前や食後など飲むタイミングが決まっています。食べ物や胃酸が影響したり、胃腸薬や吐き気止めなどは食前に飲まなければ効果が薄くなってしまいます。逆に空腹時に飲むと胃があれてしまう薬は食後に服用します。薬の成分で変わるため見た目で区別することは出来ません。
犬に飲ませるほとんどの薬は体重次第で量が決まります。副作用が出た時に「薬の量を減らせば副作用が出にくくなる」と考えるかもしれません。しかし体重に合わせて薬を処方しているため量を減らすと狙った効果を得られなくなる可能性があります。
薬を飲ませるタイミングや量は見た目だけでは判断することは出来ません。また狙った効果を得られなくなる可能性があるため副作用が出た場合獣医師と相談のうえで変更しましょう。
人間や他の犬に処方された薬は与えない
人の場合は「子供は1錠、大人は2錠」のように年齢でざっくりと薬の量が決まっています。それは大人であれば代謝能力がある程度一定のため多少の身長差や体重差は考慮されません。しかし犬の場合「体重1kgあたり1/5錠」のように体重当たりでどれくらいの薬を飲ませるかが決まります。代謝能力が人と犬で全く異なるため使用容量も異なります。
人で1日1錠だからと犬に同じ量を与えても多すぎたり少なすぎたりするので人が飲んでいる薬をそのまま与えてはいけません。同じ犬種でも体重が違えば薬の量が大きく変わります。他の犬に処方された薬を使用すると狙った効果が得られないばかりか中途半端に使うことで耐性菌が現れるなど悪影響が現れてしまいます。
▼「老犬の病気」について知りたい方はこちら
まとめ
抗生剤は感染症に対して使用する薬です。この薬があるおかげで細菌感染をおこしても体を守ることができます。動物病院でよく処方される薬でありながら治療になくてはならない薬とも言えます。
しかし薬である以上副作用は出てしまう可能性があります。副作用が出たからといって抗生剤を飲むことを止めてしまうと感染が悪化したり耐性菌の発生を招くことになります。別の薬に変更したり対処療法を行ったり等の対応をすることができます。
老犬であれば若いころに比べて副作用が出やすいことや副作用で崩した体調が戻りずらいといった可能性があるため慎重になるかもしれません。もしも副作用が出たり何か気になることが起こればすぐに獣医師に相談しましょう。