知ってる?ペットの「シニア検診」|必要な理由やチェック項目を現役獣医が解説!

知ってる?ペットの「シニア検診」|必要な理由やチェック項目を現役獣医が解説!

「シニア検診」という言葉を聞いたことはありますか?年に1度の健康診断が習慣となっている飼い主さんも多いでしょう。「シニア検診」の目的や内容はどのような点が重視されたものなのでしょうか。獣医師の視点で「シニア検診」についてお話したいと思います。

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麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

ペットの「シニア検診」とは?

診察中の犬

年に1度、健康診断を行う習慣がついている飼い主さんも多いと思いますが、健康診断の際に内容が若齢の子たちと異なったり、違うタイミングで行なうシニア検診という言葉を聞いたことはありますか?

シニア検診は、中高齢のわんちゃんや猫ちゃんに向けた健康診断で、最近では行う動物病院も増えてきていると言えるでしょう。

シニア検診とはどのような検査なのでしょうか?そしてなぜ必要なのかをお話します。

わんちゃんや猫ちゃんは加齢のスピードが速い

年に1回、春先などに行う健康診断と、別のタイミングで秋などにキャンペーン期間を設けている動物病院さんもあります。

シニア期にさしかかると、年に1回ではなく半年に1回程度に頻度を増やして行う必要がある場合も生じるため、有意義な検査になる可能性が高いです。

それでは、なぜ頻度を増やす必要があるのでしょうか。

わんちゃんや猫ちゃんの加齢のスピードが1年に1歳分年をとるわけではないことをご存知ですか?体格などによってもスピードは異なりますが、小型の子であれば1年目に16歳分年をとった後に、以降は1年に4歳ずつ年をとり、大型犬になると、体も大きい分もっと速いスピードで歳をとります。

特に中高齢にさしかかると4歳分の年をとる過程で、内臓の機能に変化が生じる可能性が高く、半年に1回の検査に切り替えることで、体内の変化にいち早く気付くことが出来る可能性が高いです。

高齢になるとなりやすい病気がある

若齢の頃になりやすい病気や、高齢になるとなりやすくなる病気は異なります。高齢になると、より注意が必要な項目が含まれた検査を行うことで、治療の早期発見になる可能性が高いです。

例えば、内分泌疾患などが代表的な例として挙げられます。若齢のうちでも、先天的な異常として内分泌疾患が現れることもありますが、一般的に高齢になってから現れる可能性が高まります。

疾患にもよりますが、水を飲む量の異常、食欲の異常、行動の変化や体形の変化などが症状として見られる場合もあります。

いち早く気付くために、合わせて内分泌疾患のような高齢になると確率が高まる疾患についての項目を検査することで、早期発見につながる場合があるため、シニア検診として項目にも変化があることが多いです。

より健康に長生きをするために行うべき検査がある

高齢になるに伴い、体内の器官や機能も低下します。血液検査の項目でわかり得る内容もありますが、合わせて超音波検査やレントゲン検査、心電図検査、画像診断などの特殊な検査を行う必要がでてくる場合もあります。

例えば、心臓などはレントゲン検査や超音波検査で、検査時の機能や機能低下による形状の変化などを確認することが出来ます。

超音波検査なんかでは、血液検査などでは現れにくい、腫瘍などが関連する形状の変化なんかも確認しやすい傾向があるでしょう。

異常が無いとあまり行う頻度が少ないような検査も、高齢になった場合の健康診断として、病気の早期発見や、機能の異常などの早期発見につながる可能性が高く、お勧めしている病院も多いです。

ペットの「シニア検診」なぜ行うの?

獣医に抱きかかえられている犬

では健康診断ではなく年齢に応じてシニア検診を行う必要があるのでしょうか。シニアの年齢に応じた検診が有意義である理由を紹介します。

加齢に伴う内臓の機能の変化をより早い段階で把握する

高齢になり、1年に1度の検査では細かい変化に気づききれないケースも起こります。頻度を増やすことで、小さな変化にも気付き、精密検査へ進んだり、原因の特定につなげられる可能性が高いです。

特に体の機能の変化が起こりやすい中高齢にさしかかった時期の子たちは検査の頻度を増やすことで、症状が現れて大きな変化になってしまう前に検診で発見できると、体へのダメージも少なくできる可能性があるためおすすめです。

早期発見による早期治療をおこなう

早期に異常や変化に気づいて、病気につながる可能性を特定できることで、早期治療をおこなえる可能性があります。早期治療へと移行できることで、体や内臓の器官へのダメージを少なくできることが期待できます。

病気によっては、外科的な手技などで、ある程度元の状態まで戻してあげられる可能性があるものもありますが、一度ダメージを負ってしまうと、不可逆で健康な状態にまで機能の戻らなくなる器官が多いです。

少しでも発見を早め、治療を早く始めることで、器官へのダメージを減らし、より器官の機能を残せる可能性が高まります。

高齢の子特有の病気にいち早く気付く

若いころと同じ項目を行っていても、実は高齢の子特有の疾患が始まっている可能性があります。他の器官が問題が無かった場合に、高齢の子特有の疾患が見落とされてしまうかもしれません。

症状や異常が大きく現れてから気付く前に、画像診断や血液検査の数値などで、まずは早期に気付けるとその後の生活での注意点や方針なども立てやすくなる場合もあります。

治療に進まない場合であっても、今後症状や体の変化として注意すべき点を知っておけることはとても有意義です。

「通常の健康診断」と「シニア検診」ではどんな項目が違うの?

犬とレントゲンの獣医

では具体的にはどのような項目がシニア検診時に変化することが多いのでしょうか?特に気を付けたい病気と併せてお話させていただきます。

内分泌疾患など「高齢の子特有の病気」の項目がある

血液検査を行う動物病院さんが多いのではないでしょうか。フィラリア検診や年に一度の健康診断での血液検査の項目は、腎臓や肝臓、血中の成分や、血糖値など、一般的な体の機能や内臓の状態を把握するものであることが多いです。

高齢の子特有の病気の場合、少ない項目では網羅出来ないものもあり、シニア検診として血液検査の項目が増えていることがあります。

さらに、スクリーニングと呼ばれ、大まかに疾患の可能性を予測したうえで、さらにホルモン検査などの精密検査に進むケースも考えられるでしょう。

高齢になると起こり得るのが、腎疾患などの機能低下による疾患も多いですが、内分泌疾患と呼ばれるホルモンの分泌が過剰になったり、不足してしまう疾患も増えてきます。

わんちゃんでは副腎皮質機能亢進症と呼ばれる、副腎という器官から分泌されるホルモンが過剰になってしまう病気や、甲状腺機能低下症と呼ばれる甲状腺からのホルモン分泌が低下してしまう疾患はよく見られる傾向があります。

副腎皮質機能亢進症は免疫力の低下や、飲水量・尿量の増加、食欲の増進などが見られ、甲状腺機能低下症は代謝機能の低下などにより、筋肉量の変化、消化機能などの低下、脱毛などが見られ、どちらの疾患も二次的な疾患につながる可能性があるため、注意及び早期発見が必要です。

「画像診断」でより精密な検査を行う

血液検査などは定期的に行う習慣がついている飼い主さんも多いかもしれませんが、画像診断を行うことは、体調の変化などが無いと行わないケースも多いかもしれません。

画像診断により得られる情報は、血液検査から得られる物とは異なっていて、有意義である可能性が高いです。

超音波検査により、腹腔内の内臓の状態や、腫瘤などの有無、貯留物が無いか、心臓の動きは問題無いかなどを調べることが可能で、レントゲン検査でも、少ない負荷で、心臓の大きさや肺の状態、腹腔内臓器の状態や大きさなどを通して調べることが可能です。

検査機器がある病院であればCTやMRIなど、さらに高度な医療機器を用いて検査をする動物病院もあるでしょう。

高度な検査でなくても、今までの通常の検査だけでなく、画像診断も併せて行えると把握できる体内の情報も増える可能性が高くおすすめです。

まとめ

今回は犬の「シニア検診」についてお話させていただきました。一番大切なことはどんな健康診断であっても、高齢期にさしかかって起こり始めた、小さな体調の変化や体内の機能の変化にいち早く気付くことだと思います。

今までは考えられなかったような体の機能の衰えや、疾患の始まりでわんちゃんや猫ちゃんの体に負担がかかっている場合もあり得ます。

早期発見をし、治療が必要であれば早期治療を、生活の見直しや、その子の状態に応じてのシニア期への生活の変更が必要であればしてあげることで、感じる負担を軽減して、より快適に過ごさせてあげることが出来るでしょう。

より長く一緒にいることももちろんですが、感じる不快感や不便さ、負担をより少なく快適なシニア期の生活を過ごしてもらうことが大切です。

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