犬を抱っこするということ
犬の正しい抱っこの仕方は、犬のカラダの大きさによって異なります。
飼い主さんそれぞれに、しやすい抱っこの仕方があるかもしれませんが、間違った抱っこの仕方を続けていると犬のカラダに負担がかかってしまい、椎間板ヘルニアなどの病気を発症させる原因になってしまう可能性があります。
“抱っこばかりしているとワガママな犬になってしまうなどと悪い印象をお持ちの方もいらっしゃるようですが、抱っこはしつけの一環でもあります。抱っこは良くないとされている理由は、間違った抱っこによって、犬が“自分の方が偉いんだぞ”と勘違いしてしまうことがあるからです。
抱っこしやすい小型犬や中型犬だけではなく、大型犬も正しい抱っこの仕方を知っておくことで、緊急時や災害時などにも役立てることができます。
大型犬の正しい抱っこの仕方について
“カラダが大きく、体重の重い大型犬を抱っこできるはずがない”と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、正しい抱っこの仕方ができれば、それほど困難なことではありません。
カラダが大きいから抱っこできない、体重が重いから抱っこできない、そう感じてしまっているだけで、間違った抱っこの仕方が原因で上手く抱っこする事が出来ていないだけである可能性があります。正しい抱っこの仕方をすることができれば、意外と簡単に抱っこできてしまうかもしれません。
うちのミックスの男の子は体重15kgで中型犬ですが、間違った抱っこをしてしまっていたときは上手く抱っこすることができませんでした。しかし、正しい抱っこの仕方ができるようになると上手く抱っこすることができるようになりましたし、それほど重いとは感じません。
その①:犬のカラダを安定させる
床や地面ではなく、少し高さのある部分に犬を誘導し、犬のカラダを安定させます。座らせた状態でも立たせた状態でも構いません。床や地面よりも少し高さのある部分に犬のカラダがあることで、抱っこするとき、人への負担を減らすことができ、抱っこしやすくなります。
抱っこしやすい高さは飼い主さんそれぞれにあると思いますので、調節しながら行ってみてください。
その②:犬の方へカラダを近づける
犬のカラダを自分の方へ引き寄せるのではなく、自分のカラダを犬の方へ近づけるようにし、犬のカラダの側面に自分のカラダの面積が多く付くようにします。
その③:犬の手足の付け根を掴む
犬の胸の下に腕を入れて抱っこする方もいらっしゃるようですが、犬のカラダにも人の腕にも負担がかかってしまいます。犬の手足の付け根(外側)を掴むようにし、人の胸の高さまで持ち上げます。犬の手足の付け根とお尻を支えるようなイメージです。
鈴木桂子
大型犬の場合、上半身の方(頭部)が重いので、犬の胸の下に腕を入れた状態だと前のめりになってしまいます。犬の後ろ脚の膝上に右腕を入れ、左上は犬の胸を抱えるようにし、ゆっくりと人の胸の高さまで持ち上げます。
一旦持ち上げたら、自分の体をやや後ろへそらし、自分の腕だけで支えるのではなく胸に乗せ、腰で支えるような感じです。右腕に犬のお尻を乗せて支えている、そして左腕で犬の上半身を支えてあげている、そんなイメージです。
大型犬を抱っこする際の注意点
抱っこを嫌がる犬もいますし、少しずつ抱っこに慣らしていくようにします。どんなに正しい抱っこの仕方をしていても、女性や高齢の方のカラダには大きな負担がかかってしまいます。
膝や腰を痛めてしまうこともありますし、誤って犬を落下させてしまうこともありますので、決して無理に抱っこする必要はありません。
注意点①:不安定な場所で抱っこしない
ソファーやベッドやイスの上など、犬が不安定な場所にいる場合、その場所からの抱っこはやめましょう。犬のカラダが不安定であると暴れてしまうことがあります。
犬のカラダが不安定だと、抱っこする人のカラダも不安定になってしまうため、お互い負担が大きく、落下などの危険もあります。
注意点②:おろすとき
抱っこするということは、おろす必要がありますよね。犬を高い位置からおろしてしまうと、手足に大きな負担がかかったり、手足を痛めてしまったり、落下などの危険があります。
まずは人がゆっくりとしゃがみ、安全におろすことができる位置にきてからおろしてあげましょう。犬の手足に衝撃が加わってしまわないように注意します。また、人がしゃがむとき、膝や腰に大きな負担がかかってしまうことにも注意が必要です。
まとめ
大型犬の抱っこは想像しているよりも困難なものではありません。抱っこの練習をすることは、愛犬と飼い主さんとのコミュニケーションになりますし、信頼関係も深まるのではないでしょうか。どうしても上手く抱っこすることができない場合には、獣医さんに相談してみてください。
私も正しい抱っこの仕方は獣医さんに指導していただきました。診察台が私の腰よりも高い位置にあり、15kgの愛犬を診察台に乗せることができず困っていると、私よりもずっと華奢な看護師さんがスッと軽々と抱っこして乗せてくれました。
「コツがあるんですか?」と聞いたところ、獣医さんとその看護師さんからアドバイスをいただけました。ぜひ、恥ずかしがらず、遠慮することなく相談されてみてくださいね。
鈴木桂子
25kg以上の大型犬を抱っこするのは、飼い主にとっても大きな負担になります。犬とのコミュニケーションを図るためだけなら、無理に抱っこする必要はありません。
抱っこしてあげなくても、後ろからそっと抱き寄せるだけでも充分に愛情は伝わります。また抱き癖が付くと分離不安になる子もいます。何事にも距離というのは重要です。
それでも、出来れば子犬のうちから抱っこされることに、慣れさせておいた方がよいと思います。それは怪我や病気で緊急に獣医などに連れて行く場合や、高齢になり介護が必要となった場合に、抱っこされることが飼い主との信頼の関係であり、安心安全な行為だということを認識させておいた方がよいからです。
また、相性の悪い犬から、とっさに守ってやることもできますし、災害時にはガラスなどが飛び散り、歩けないような場所で愛犬を保護してあげることもできます。
特に高齢になって介護が必要になると、床ずれを防止するために度々向きを変えてやらねばなりません。動けなくなった犬の抱っこが出来れば、こうした作業も随分と楽になります。