犬の鼻が濡れるメカニズム
ご自分の愛犬の鼻が濡れているかどうか、毎日観察していますか?
もちろん、鼻が濡れているのを確認するだけでは、健康かどうかの万全のチェックが出来るわけではありません。
それでも、鼻が濡れていて、瞳に生命力があふれていれば、ひとまず、健康であることの証と言えます。
では、なぜ、健康な犬の鼻は濡れているのでしょうか?
3つのタイプに区分される犬の鼻
犬の鼻の濡れる理由について考える前に、まず、犬の鼻の構造について簡単に説明したいと思います。
一口に「犬の鼻」と言っても、バグやブルドックのような鼻ペチャの犬種もいれば、
ボルゾイや、グレイハウンドのように細い顔の形の犬もいますよね。
鼻先から目頭をマズルと言い、このマズルの長さと、頭蓋骨の長さ(目頭から耳元までの長さ)を比較して、犬の鼻の形は、3つのタイプに区分されます。
「長頭型」マズルと頭蓋骨の長さが同じ、あるいは、マズルが頭蓋骨の長さよりも長い犬種です。
ボルゾイ、グレイハウンド、シェパードなどがこのタイプ。
ニオイを感知する機能を持っている器官が大きいため、特に嗅覚が優れていると言われています。
「中頭型」マズルと頭蓋骨の長さが中等程度の犬種。
ビーグル、柴犬、コーギーなどがこのタイプ。
「短頭型」いわゆる「鼻ペチャ犬」、バグ、ボストンテリア、シーズーなどがこのタイプです。
犬の鼻はやっぱりスゴイ!
「濡れているかどうか」を見る以外で、ご自分の愛犬の鼻をじっくり目を凝らしてみたことはありますか?
人間の鼻と同じように犬の鼻にも「鼻の穴」があります。この穴を「外鼻腔(がいびこう)」と言います。
この「外鼻腔」は、人間と違って、横にも切れ目が入っており、正面からだけではなく、顔の側面からのニオイの情報も取り込むことが出来る構造になっています。
鼻の中心から唇にかけて見られる一直線の溝を「上唇口」と言います。
この「上唇口」は、常に水分を蓄えていて、ニオイの分子を吸着する役割を果たします。
犬の鼻の表面の皮膚は硬く、目を凝らして良~く見ると小さな溝がたくさんあります。
この溝のある部分を「鼻鏡(びきょう)」と言います。
この「鼻鏡」こそ、人間よりもはるかに優れた犬の嗅覚を生みだす特別な器官です。
溝の中に蓄えた水分が、ニオイの分子を吸着して嗅覚の感覚を高めます。
また、この「鼻鏡」は温度センサーのような役割も果たしていて、犬は、鼻を湿らせている水分の左右の渇き方の違いを感知し、風がどちらから吹いているかを即座に判断します。
かつて、野生の犬は獲物のニオイを察知しニオイを頼りに獲物を追い、捕食して生きていました。そのために、嗅覚が研ぎ澄まされて進化したのでしょうね。
鼻を濡らす必要があるのは、ニオイを確実に捉えるため!
さて、では本題に戻りましょう。
なぜ、健康な犬の鼻は濡れているのでしょうか?
それは、「ニオイを確実に捉えるため」です。
鼻が湿っている方が、「鼻鏡」の中に水分が行きとどいてニオイの分子をたくさん吸着することが出来ます。
鼻を湿らせている成分は、なんと涙と汗!
犬の鼻は、人間と同じように鼻の奥で、目の奥で涙腺(涙を分泌する器官)と繋がっています。
犬は、人間のように感情で涙を流すことはありませんが、目の中に異物が入ったら、その異物を洗い流したり、目の表面の粘膜を保護するための水分として涙を分泌しています。
その分泌された涙が、鼻の穴へと流れ出て、鼻の奥にある外側鼻腺(がいそくびせん)からも出ている分泌物と混ざり合った粘液で、犬の体温調節などに必要な粘液で、人間でいえば汗のようなモノです。
すなわち、犬の鼻を濡らしている成分は、人間でいう「鼻水」ではありません。
犬の鼻が乾いたら、絶対に病気?
健康な犬でも、鼻は乾く!その理由は?
犬は、ニオイを確実に嗅ぎ取りたい時に、あえて鼻を濡らすことがあります。
また、眠っている時は目の粘膜を保護する必要もないので、涙も出ません。
快適な温度で眠っていれば、体温を下げる必要もないので外側鼻腺(がいそくびせん)から出る分泌液が出ることもありません。
ですから、例え鼻が乾いていても眠っている時や、お家の中で静かにゆったり過ごしている時は、なんの心配も要りません。
けれども、やはり鼻の湿り具合は犬にとっては健康のバロメーターとして非常に重要です。
鼻が乾いている時の注意点
まず、寝起きでもないのにずっと愛犬の鼻が乾いているなら、食欲があるかどうか、下痢をしていないか、オシッコの色、元気があるかどうかなどをよく観察して下さい。
また、涙が詰まっている時も鼻は渇きやすくなるので、目の状態もよく見てあげましょう。
普段と違って、なんとなく元気がない…と感じたら、出来るだけ早く獣医さんに連れていくことをオススメします。
犬に限らず、動物が体の不調がはっきりと他者にわかるほどぐったりしている状態は、思いのほか病状が進行していることが多々あります。
「今日一日、様子を見て、明日病院に連れて行こう…」と思っていたら、手遅れになってしまった、ということになる可能性もあるので、「元気がない、いつもと様子が違う」と思ったら、なるべく早く病院に連れて行ってあげましょう。
まとめ
私は、愛犬、めいぷるが私の顔を見上げる時、その瞳だけでなく、鼻にも目が行きます。
うれしくてたまらない時、鼻の穴が心臓の鼓動とリンクしているかのように、ヒクヒク開いたり、閉じたりするのを見るのが大好きなのです。
人間のことわざで、「目は口ほどにモノを言う」というのがありますが、犬は「鼻はシッポほどにモノを言う」と言えそうです。
もちろん、めいぷるの鼻が濡れているかどうかは、毎日必ずチェックもしています。
ただ、「鼻が濡れているから健康!」「鼻が乾いているから病気かも…」と鼻の状態だけを見て一喜一憂するのではなく、
毛艶、食欲、目の輝き、皮膚の状態、排せつ物の量や色なども毎日に観察して、愛犬の健康を見守りましょう。