プリズンドッグプログラムとは?
プリズンドッグプログラムとは犬を用いて行われる刑務所内での更生プログラムです。女性の囚人であったキャシー・クイン氏が発案し、アメリカでスタートした取り組みで現在ではアメリカ国内で150箇所以上の刑務所で実施されているそうです。
具体的な内容としては、虐待や飼育放棄などによって保護された犬のお世話やトレーニングを囚人が行い、トレーナーとして約3か月ともに過ごすというもの。犬のしつけやトレーニングを通して囚人はさまざまなことを学び社会復帰や更生の一端を担うこととなり、パートナーとなっていた“プリズンドッグ”も新たな飼い主を見つけることができたりセラピードッグや介助犬などとして活躍することができるようになるのです。このプログラムを受けた囚人は社会復帰後に役立つ実用的な技術を身につけることができるだけでなく、その再犯率が激減するという結果を出しています。特に青少年刑務所での実績が高く再犯率ゼロという功績を残したところもあるそうです。
プリズンドッグプログラムで囚人が得るもの
犬にとってのメリット
プリズンドッグプログラムは囚人にとっても犬にとってもメリットがあると考えられています。プリズンドッグとして囚人とパートナーを組む犬たちは、多くが過去に虐待などを受けた保護犬で人に対して不信感や恐怖心を抱いていることがあります。そうした犬に囚人がじっくりと向き合うことで犬は人に対してまた心を開いていくような変化が見られます。そしてさまざまなトレーニングを受けることで新たな飼い主を見つけることができたり、セラピードッグや介助犬として社会で活躍することができるようになることもあります。
囚人にとってのメリット
囚人にとっても多くのメリットがあります。人間に対して不信感を持つプリズンドッグは、当然のことながら囚人たちの言うことを聞くはずもなく、始めのうちはなつくどころか攻撃性を見せたり関わりを拒絶する犬も少なくありません。そうした思い通りにならない犬のお世話やトレーニングをすることで根気よく他者と向き合い感情をコントロールすることを覚えていきます。また無条件に愛情を与え、犬から愛情を感じることで人間らしさを取り戻したり他者を思いやる気持ちが芽生えるようになると考えられています。さらに、犬のお世話やトレーニングについて同じプログラムを受ける仲間とアドバイスし合うなどして協調性や絆が生まれるきっかけにもなるようです。
日本で実施されたプリズンドッグプログラム
アメリカで多くの実績を残しているプリズンドッグプログラムですが、その取り組みにはさまざまな国、団体が興味を示しています。この日本でも同様の取り組みが行われており、2009年に島根あさひ社会復帰センターで受刑者が盲導犬のトレーニングを行うプログラムがスタートしました。2013年にはその子犬から盲導犬も誕生しています。
また、2014年には千葉県八街少年院で矯正教育プログラムとして保護犬のトレーニングを行うようになり、収容された少年たちの社会復帰をサポートしています。
<まとめ>プリズンドッグプログラムについて
プリズンドッグプログラムは心に傷を負った犬と心を失いかけている囚人がパートナーとなり取り組むもの。人間同士では素直になれない場面でも、言葉を持たず無償の愛を与えることのできる犬が相手だからこそ心を開いてその命の尊さを感じることができるのだと思います。犬と人の絆が生まれることでお互いを支え合い、それぞれの可能性を引き出す素敵なプログラムだと思いますので日本でもぜひ広まっていってほしいと願っています。