犬の体温調節の方法!暑い時の健康管理や体温を下げる方法など解説

犬の体温調節の方法!暑い時の健康管理や体温を下げる方法など解説

夏の猛暑は人だけでなく犬にも直撃!特に体温調節の仕方が人とは異なる犬では、熱中症や夏バテのリスクが増す季節です。飼い主さんは、愛犬が体調を崩さないようにより気を配らなければいけないと意気込んでいる方も多いかと思います。ですが、実際に愛犬の体温調節機能とはどんなものか、暑い時期のサポート方法はこのままで良いのか悩んでいる方も多いはず。今回は暑い夏の乗り越え方を解説します。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬の体温調節とは

散歩中にパンティングしている犬たち

皆さんは、なぜ体に体温調節の仕組みがあるのかをご存知でしょうか?

私たち人も、犬も、「恒温動物」に分類され、暑い・寒いに関わらず一定の体温を調節する仕組みを体の中に持っています。

ではなぜそういった仕組みがあるのかを考えると、「体の機能の多くは温度変化に影響を受けやすい化学的反応で成り立っているから」です。

このままだと「どういうこと?」となってしまいますよね。

人も犬も、食べ物を食べて栄養を吸収したり、体を動かすためのエネルギーにしたりしています。同時に、体が毒物を取り込んだ場合無害なものになるように分解して排出するような活動も行っています。

こういった生命維持に重要な役割を持つ「代謝」と呼ばれる化学反応が、細胞でよく働くためには最適な温度があり、体温調節機能がそれを支える役割を担っているというわけなのです。

細胞は1つ1つが集まって体の中の臓器や脳として成り立っています。その細胞が働けない体温になってしまうと、人も犬も生きてはいけません。

そのため、暑い時には体温が上がりすぎないように、寒い時には体温が下がりすぎないように調節する体温調節機能が重要になるというわけです。

暑い時に犬の体温を下げる方法

体についた水を払う犬

暑い時には体温が上がり続けるのを抑えて、体がきちんと働けるよう体温調節をしなければいけません。暑い夏を乗り切るために、犬の体が熱を逃がす時に行う体温調節方法をぜひ知っておきましょう。

口呼吸で熱を蒸散

犬が暑い時に体温を下げる方法として最も有効になるのは、「パンティング」です。ハアハアと口を開けて呼吸することで、舌や気道から水分を蒸散させて体の熱を逃がしています。

本来であれば人と同じように全身で汗をかいて、その分の水分が気化できればより熱を下げやすいものですが、犬には発汗して体温を下げるための汗腺が発達していません。足裏の肉球や、鼻の一部分に少量備わっている程度です。

そのため、緊張している時に犬の足裏が濡れる程度のことはありますが「緊張や暑さで全身がびしょびしょ…」と人のように感じることはまずないと思っていてください。

また、肉球にかく汗にも、体温を下げるための体温調節機能としての役割は期待できません。

体を濡らして体温を蒸散

汗腺による体温調節機能は発達していない犬ですが、体が水で濡れると、その水分が蒸発する時に一緒に体温も持っていってくれるため、体温を下げることができます。

特に、夏に水を張ったプールやたらいに「わーい!」と自らつかったり、水遊びをすることが好きな子がよく取る体温調節方法です。

他にも、濡らしたメッシュ素材の服を体に着せて、熱を蒸散させる方法も同様の効果が得られるため、夏のお散歩にはおすすめです。

冷たいものに直接触れて体温を逃がす

水分を蒸散させて体を冷やす以外にも、体を直接冷たいものに触れさせて、上昇した体の熱を移動させて熱を逃がす方法も取っています。

飼い主さんの中には、暑い時に愛犬が冷たいフローリングや石の床に伏せをして、お腹をペタッとくっつけているのを見たことがある人もいるでしょう。

これは、比較的毛の薄いお腹周辺の皮膚を冷たいものにくっつけて、体にたまった熱を逃がしている状態です。

人も、寝苦しい夜には冷感素材の敷パッドやシーツを使用することがあるかと思います。これも同じく、体を冷たいものに触れさせて熱を逃がす方法の典型とも言えます。

犬の体温調節に関する注意

犬が水を飲んでいる

犬と人とではメインとなる体温調節機能が異なってくることをお話ししました。こういった体温調節をきちんと行えるかどうかは、下記のことに注目しておく必要があります。

  • 体温を下げるための環境が整っているかどうか
  • 体の中の体温調節機能が正常に作動できるか

脱水対策を忘れずに

呼吸によって口から体温を蒸散させていると、どうしても体から水分がどんどん出て行ってしまいます。そんな時には必要を感じた分だけ自由に水分を飲んで摂取できればいいのですが、

  • 用意された水分が足りない
  • 水分摂取スピードが蒸散スピードに追いつかない

といった時には体が脱水してしまうことになります。

体が脱水すればするほど、だるさで動けなくなったり、尿が作れなくなったりと体に悪影響を及ぼし、悪化すると命に関わるため、いつでも新鮮な水は取れるように準備してあげましょう。

また、普段から水分摂取量が少なめな子の場合、次の方法で脱水対策をあらかじめしてあげるのも大切です。

  • 水分量が多いウェットフードを追加する
  • ドライフードをふやかす
  • 肉や野菜のゆで汁(スープ)を追加する

気温と湿度の条件を見直す

寒風を遮る服を着せたり、分厚い毛布を用意したりと、犬にとっての冬の寒さ対策は暑さ対策に比べると比較的カンタンです。

ところが、暑い夏は人のように服を脱いで薄着になることができない犬にとっては、対策が難しいのが実際の所。夏の暑さ対策のメインになるのは、1日の大半を過ごすことが多い部屋の室温を調節する「エアコン」です。

一般的には設定温度26~28℃程度が犬にとっても適温にはなりますが、適温を探る時に注意したいのは、愛犬たちは人に比べて床に近い部分で生活しているということ。

人にとっては適温でも、愛犬にとってみれば冷気が下にたまることで「寒い!」と感じている可能性があるということを頭の片隅に置いておきましょう。

室内の広さやエアコンの能力によって体感温度は変化するため、それぞれの家庭で調節してみてください。

また、口呼吸で体温を下げる方法がメインになる犬たちにとって、湿度が高い環境ではうまく水分が蒸散することができません。

日本の梅雨から夏にかけてはエアコンをつけていても湿度が高く、パンティングをしてもうまく体温を下げられない犬もいます。

室温が高くなくても湿度が60%を超えることによって、「暑い!」「呼吸が苦しい!」と感じて熱中症になる犬が多くなるため、注目しておくと良いでしょう。

肥満体型や短頭種に注意

体温調節機能がうまく作動できないタイプの犬の例として、「肥満犬」や「短頭種」があげられます。

脂肪は、熱を体にとどめる性質を持っているため、冬ならまだ体温に与える影響は少ないものです。しかし、これが夏になると体に熱がこもる一方となり逆効果。

首周りに脂肪がつくと、気管を圧迫することで呼吸がしづらくなることも熱を蒸散させにくくなる要因の1つです。

また、短頭種では鼻の穴が小さく、空気の通り抜ける構造が整っていないことから、呼吸機能が長頭種よりも弱いことがほとんどです。

  • 軟口蓋過長症
  • 鼻腔狭窄

といった呼吸を阻害する病気を抱えている子も多く、体温調節がうまくできないことが多いため注意しましょう。

肥満犬や短頭種では、適温だと感じるエアコンの設定温度が通常に比べて低いこともあります。もしも一般的な設定温度では暑そうなら、設定温度を下げるか、体を冷やすアイテムを多く取り入れて体温調節をサポートしてあげてください。

子犬や老犬はより繊細な体温管理が必要

生まれたばかりの子犬は体温調節機能が未熟で、老犬は加齢によって体温調節機能が低下している可能性が高いため、室温と湿度管理にはより注意してあげる必要があります。

中でも老犬は、筋力の低下による足腰の弱まりや、隠れた関節炎の痛みによって、
「水を飲みに行くために体を起こすのが辛い…」
「水飲み場までが遠い…」
と移動が億劫になって飲水摂取量が足りなくなるリスクも抱えています。

暑い夏場は涼しい部屋の中で、寒い時には体を温めることもできるよう暖かく感じるブランケットなども用意し、2つの環境を利用できるようにしてあげられるとベストですよ。

犬の熱中症の症状と原因や対処法

ぐったりした様子の犬

夏の健康管理で大敵となる熱中症では、重度になると愛犬の命に危険が及ぶ可能性もあります。万が一熱中症とみられる症状を見つけた時にすぐに対処できるよう、あらかじめ熱中症の知識を蓄えておきましょう。

犬の平熱は37.5~38.9℃で、興奮や緊張などによって39℃台前半まで上がることもあります。この範囲なら犬にとっては問題ない範囲で、いつも通り体を動かす元気があります。

これが熱中症と呼ばれるほどの段階に陥ると、

  • ぐったりしていつもより元気がない
  • 触れると体が熱く感じる、40℃以上の高熱
  • 呼吸が荒いのが止まらない
  • よだれがポタポタと垂れるほど多い
  • 口の中の粘膜がピンク色から真っ赤な色に変化
  • 吐き気、嘔吐、下痢、血便
  • ふらふらと足取りがおぼつかない
  • 呼びかけに対する反応が薄い
  • ふるえ

といった症状を見せます。

さらに悪化すると、

  • 立ち上がれない、起き上がれない
  • 意識の混濁(周囲にまったく反応できない)
  • 舌の色が青紫色に変化
  • 全身性の痙攣

と緊急的な処置が必要な状態になります。ここまで来ると命が危ぶまれるため、できるだけ早い段階で気づき、体温を下げる処置を始めなければいけません。

熱中症になる原因

こういった熱中症になる状況はいくつかあります。体にとって、耐えられる気温でなくなる環境に愛犬が置かれる時について考えてみましょう。

エアコンが稼働していない室内

カーテンで遮光していても、夏の室内はまさしく蒸し風呂状態になります。扇風機では風を送ることはできても室温を下げることはできないため、熱中症のリスクは高まります。

ドッグランや屋外イベント

真夏ではなくても、5月の暖かさを感じる頃から体温上昇のリスクは高まります。

いつも通りの行動では耐えられる気温でも、楽しさのあまり走り回ったり、興奮したりすることで体の中には熱がこもりやすくなります。また、そんな時には飲水も忘れて楽しんでしまうため、脱水も引き起こしがちです。

車内で待機

「短時間だし」と思って犬だけを車内で待たせると、わずか5分程度でも車内の温度が急上昇し熱中症に陥ることがあります。狭い車内で、風の対流もわずかな環境では熱を逃がしにくくなります。

飼い主さんがいないと犬も興奮しやすくなり、また、運転時の安全対策でキャリーなどに入っていると、たとえエアコンをつけていてもその効果がほとんど得られないこともあります。

気温、湿度が高い環境での散歩

人よりも地面に近い位置を歩く犬にとって、地面からの照り返しによる放射熱は50℃以上に達することがあります。

特に、街中のお散歩ルートになるアスファルトの上はその温度が顕著。口から熱を蒸散させようとしても、パンティングによって熱い空気を取り込んでしまうので結局体温はなかなか下げることができません。

暑い時間のお散歩は、直射日光と地面からの放射熱で愛犬にとってはダブルパンチです。同時に、暑くなった地面の上を肉球むき出しで歩くことで、やけどの危険性も高まってしまうため、早朝もしくは夜間のお散歩で対応するしかないのが実状です。

熱中症を疑う時の対処法

熱中症を疑った時には、まず何よりも上がった体温を下げる処置に入らなければいけません。

動物病院に来院することはもちろん必要ですが、体温を下げる処置を行わないまま移動し始めると、その間に熱中症の症状を悪化させてしまうことにつながります。

体温を下げるためには、

  • 体にしっかり濡らしたバスタオルをかけて扇風機の風を当てる
  • タオルに包んだ氷嚢や保冷剤を首、脇の下、内股に当てる
  • (飲めるなら)水を飲ませて脱水の緩和

といった方法が有効です。

全身の皮膚を濡らして体に風を当てることで熱を気化し、太い血管がある場所に冷感素材を当てることで体の中を巡る血液を冷やしていきます。

まだ水が飲める状態であれば、体が水分を吸収しやすいようにスポーツドリンクを2~3倍に薄めたものを飲ませても良いでしょう。

応急処置を行いながら動物病院に連絡して、これから急いで来院することを伝え、移動中も愛犬を冷やしながら連れてきてください。

ちなみに体が冷えすぎると大きな負荷がかかり、死亡率も高まるため、39.5℃前後まで体温が下がれば冷却はいったん止めましょう。

そして、「体を冷やすなら氷水の方が冷たいのでは?」と飼い主さんには思われがちです。

しかし、冷たすぎる温度の水に体を浸したり、氷嚢を直接体に当ててしまうと、毛細血管が収縮して体の表面の温度しか下げられなかったり、急激な体温低下を引き起こして逆に命の危険にさらしてしまうこともあります。

そのため、使用する水は水道水を利用することをおすすめします。

犬の体温調節に関するまとめ

室内で気持ちよさそうに寝る犬

夏の暑さと闘うには、「愛犬の体温調節機能」「周囲の環境」のどちらもが整っていることが重要です。

体温調節機能がうまく働かないリスクを抱えている犬の場合は、環境作りのサポートを飼い主さんが重視してあげることで猛暑を乗り切ることができます。

万が一熱中症に陥れば、その対応は一刻を争います。「うちの子は大丈夫」と油断せず、夏のリスクを意識しながら愛犬と楽しく過ごしてあげてくださいね。

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