犬がご飯を食べないのに水は飲む原因
多くの犬は、食べることが大好きです。それがおやつであってもご飯であっても、ほとんどの犬はがつがつ食べてくれます。
しかし、食の細い子や好き嫌いの多い子も少なくないようです。愛犬がご飯を食べてくれないと飼い主さんとしては当然心配になりますが、犬がご飯を食べないのには必ず何か原因があります。
まず、その原因について考えてみましょう。
精神的なストレスや運動不足による空腹感の減少
私たち人間がストレスにより食欲不振に陥ってしまうことがあるように、犬もストレスが原因で食欲が落ちてしまうことがあります。
環境や生活リズムの変化、身体的な負担など、ストレスの原因は犬によってそれぞれ違いますし、ストレスに対する反応も犬の性格により個体差があります。
犬は私たちが考えている以上に、色々なことを思い感じているのです。ここ最近の犬の生活を思い出してみましょう。何か普段と違ったことがあったのではないでしょうか?
さらに、運動不足により食欲不振に陥るという点も、人間と同じです。成長期の子犬であっても、運動量が不足すると、ご飯を食べなくなってしまうこともあるのです。
ストレスや運動不足を解消することは人間だけでなく、犬にとっても大切なことだといえるでしょう。
フードの劣化や食事の選り好み
最近は犬の食生活も多様化し、ご飯以外の美味しいものを食べ慣れている犬が増えてきました。簡単に言うと、昔の犬に比べて「口の肥えた犬が増えてきた」ということです。
劣化したフードは、味や匂いが落ちてしまっています。犬は嗅覚が大変優れていますので、与えられたフードが劣化しているのを敏感に感じ取り、食べるのを嫌がる場合があります。
また、これまで食べていたフードに飽きてしまった、与えられたフードが気に入らない、など、わがままや好き嫌いにより、ご飯を食べないという犬も少なからずいるようです。
この場合は、犬の健康状態に異常はなく普段通り元気でおやつ(トリーツ)なら喜んで食べて水も飲みますので、あまり心配する必要はありません。
ちなみに、このような傾向は大型犬に比べて小型犬に多いといわれています。
老化による身体機能の低下
犬も年齢を重ねると、様々な老化現象が見られるようになります。老犬になると、代謝が落ち消化機能も低下しますので、それに伴って食事の量も減少します。
さらに、嚥下機能(ものを飲み込む機能)の低下によりものが食べにくくなりますし、嗅覚が低下することで食に対して若い頃のように興味を示さなくなり、益々食事の量が減少することになります。
また、関節痛や筋力の低下で動くことも億劫になるなど、身体的な要因も食事量に大きく関係してきます。
このように食事の量や回数が減っても、1日に必要とするエネルギー量も減少しますので、しっかり水分を摂っている場合は、あまり心配することはないと思われます。
ですが、健康な成犬と違い老犬の場合は、内科的な病気が原因で食欲不振に陥っているという可能性もありますので、注意して犬の様子をよく見てあげることが大切です。
病気による食欲不振や多飲多尿
犬が「水は飲むけどご飯を食べない」という状態の時に、注意しなければならないのは、その原因が何らかの病気である場合です。
特に、異常に水を飲み多量の排尿をする場合には、内科的な病気が原因である可能性が高いと考えられます。
たとえば、糖尿病では初期の症状として水の多飲や多尿が見られますし、その他にも、慢性腎臓病や肝臓病などでも、多飲、多尿が見られることがありますので、注意する必要があります。
目安としては、犬が1日に飲む水の量が「体重1kgあたり100mlを超えるようであれば多飲」であるといえます。
他にも、口の痛みが原因で「ご飯は食べられないが水は飲める」という場合は、歯周病や歯槽膿漏、口内腫瘍などの原因が考えられます。
これらは、放置すると非常に危険ですので、できるだけはやく動物病院で診察を受けることが必要です。
犬がご飯を食べないのに水は飲む時の注意点
犬が、ご飯を食べずに水ばかり飲んでいる場合でも、その原因がストレスや好き嫌いである場合は、空腹に耐えられなくなれば食べるようになります。
おやつや自分の好むものは食べており、健康状態や排泄などに異常がなければ、あまり神経質になる必要はありません。
しかし、ご飯を食べないだけでなく下痢や嘔吐が見られるなど、原因が病気である場合はカロリーの消費量が通常より多くなるので栄養状態が急激に悪化する可能性があります。
そのまま放置しておいては手遅れになることもありますので、速やかに対処しなければなりません。
犬が緊急性の高い危険な状態ではないか確認する
犬に次のような様子が見られる場合は、危険な状態である可能性が非常に高く要注意です。
- 元気が無くぐったりとしている
- 自分の好きなものや、おやつも食べない
- 異常に水を飲む、または水を全く飲まなくなる
- 嘔吐や下痢をする
- 呼吸が荒く舌の色が悪い(健康な犬の舌の色はピンク色です)
- 腹部が大きく張っている
上記のような症状がある場合は、大変危険な状態だといえますので、早急に動物病院で診察を受ける必要があります。
上記以外の場合でも、普段と様子が違うと感じたら、体に何か異変が起こっている可能性があります。その場合も、動物病院で診察を受けておくと安心です。
犬は体調が悪くなると、突然様子が変わります。小さな変化を見過ごすことがないように、犬の様子をよく観察しておくことが必要です。
食事量の少なさや飲水量の異常を「いつものこと」にしない
普段から食が細くあまりご飯を食べない犬や、水ばかり飲んでいるような犬は、飼い主さんがその状態に慣れてしまい、犬が元気にしているようであれば、その状態を当たり前ととらえてしまいがちです。
しかし、本来動物が健康を維持するためには、日々適切な量の食事と水を摂ることが必要であることを忘れてはいけません。
犬がすぐに体調を崩すようなことがなくても、そのような状態が長く続くうちに筋肉量の減少や、隠れた病気、老衰の進行につながる可能性もありますので、その点をよく心に留めておくことが大切です。
犬がご飯を食べないのに水は飲む時の対処法
食事をするということは動物が健康を維持するために非常に重要なことです。そのため、生涯を通して長いスパンで食事について考える必要があります。
それは人間も犬も同じですが、犬は私たち人間より与えられた時間が短く、私たちよりもはやく体が老いていきますので、犬の体の変化に合わせて対処することが大切です。
食事量や飲水量を記録しておく
日々の愛犬の飲食の様子が分かれば、体調に異変があったことを素早く察知できます。
食べた食事の量や飲んだ水の量の増減で、犬の体調を推し量ることができるのですが、そのためには、毎日の食事や水分の摂取量を記録しておく必要があります。
できれば、その日の犬の体調や、食い付きの様子なども簡単にメモしておくと、後の体調管理の参考になります。
ご飯の風味がアップする工夫をする
ご飯を食べさせたいがために、犬の好むものばかりを与えるのはあまり感心できませんが、犬が食べたくなるように工夫をすることは必要です。
たとえば、匂いづけに肉や野菜のスープ、ヤギミルクなどをフードにかけてみたり、犬が好きなものをトッピングしてみたりすると、食べてくれるようになることがあります。
この時、使用する食材によっては、アレルギーを起こすこともありますので、犬に食材のアレルギーが無いかを事前に確認しておく必要があります。
また、犬の健康を守るために、調味料を使用した味付けをするのは控えましょう。
「そのうち食べるだろう」と、与えたフードをそのまま放置しているのを時々見かけることがありますが、ドライフード以外の食材は傷みやすいです。
「いつでも食べられる」と思うと、犬はよけいに食べなくなりますので、しばらく様子を見て食べないようでしたら、その時は一旦片付けてしまいましょう。
年齢や体調に合わせて食事内容を変更する
子犬と老犬では、必要な栄養素やエネルギーの量も違ってきます。また、同じ犬でもその時の体調によって、食べやすいもの食べにくいものがあります。
たとえば、夏バテで食欲が落ちているような時には、消化のよいものを与えることが必要ですし、老犬の場合は、嗜好性が高いフードをふやかして与えるなどの配慮が必要です。
このように、犬の年齢やその時の体調を考えて、食事の内容を変えていくことは、犬の食欲を刺激し、その時々に必要な栄養を摂ることにつながります。
病気が原因の食欲不振の場合は、獣医師と相談したうえで、食事の内容や与え方を変更するようにしましょう。
ストレスのかかる環境を避けて運動時間を確保する
健康のために運動することは大切ですが、体を動かすことで、食欲も増進します。できるだけ毎日、犬が運動する時間を作ってあげましょう。
お天気が悪い日は外で運動することができませんが、その場合は、屋内で飼い主さんが遊んであげるとよいでしょう。
犬がストレスを感じる原因は様々ですが、何らかのストレスにより食欲不振に陥っている場合でも、体を動かすことで、ストレス解消されることもあります。
大好きな飼い主さんと一緒に運動できることは、犬のストレス解消に大いに役立つのではないでしょうか。
普段から、犬の様子をよく観察して、できる限り犬にとってストレスとなる原因を取り除くように気を配りながら、運動をする時間をしっかり取ってあげるよう配慮しましょう。
必要に応じて介助してあげる
老犬や病気を抱える犬は、体の痛みなどにより、自分では食事を摂りづらいことがあります。
たとえば、首を動かしにくい時には、お皿を犬の口元まで持って行ってあげたり、口に痛みがあり大きく開けるのが難しい場合は、スプーンで少しずつ食べさせてあげるなど、飼い主さんが側で介助してあげましょう。
そうすることで、食べづらさが解消したことに加えて、飼い主さんが側にいる安心感とで、犬もゆっくりとご飯を食べられるようになります。
犬の食欲を落とさないための予防策
犬がご飯を食べなくなってから慌てるのではなく、普段から、犬の食欲を低下させないように予防しておくことが大切です。
では、どのような対策が食欲低下防止に効果があるのでしょうか?
犬の老化のサインを見つけて生活環境・習慣を整える
毎日一緒に暮らしていると「愛犬も年を取ってきている」ことをなかなか認識することができないのではないでしょうか。
「この子も年を取ったな」と感じた時には、既にかなりの高齢になっていたということもあるでしょう。いつまでも元気なように見える愛犬も、人間の何倍ものスピードで年を取っています。
そのことをよく理解して、愛犬の様子を日頃からよく観察し、体の変化に合わせて生活環境や生活の習慣を変えてあげましょう。
たとえば、老犬のお散歩では、若い頃のように決まったコースや距離だけ歩かせるのではなく、その日の天気、犬の体調や気分に合わせて、距離やコースを調整してあげることが必要になってきます。
犬の状態に合った快適な生活を送ることで、疲労やストレスを軽減できますし、それらによる食欲低下も予防することができます。
定期的に健康診断を受けて犬の病気を早期発見・治療する
犬は、体調が悪くても言葉でそれを伝えることができません。そのため、飼い主さんが気付いた時には、病気がかなり進行してしまっていた、ということもよくあるようです。
定期的に健康診断を受けることは、病気を早期発見、治療するために大切なことです。
また、日頃から愛犬をよく観察し、細かい変化を見逃さないように心を配ることも、病気の早期発見、治療につながります。
言葉を持たない犬のために、飼い主さんの心配がとても大切なのです。
間食を減らす
犬がご飯を食べない原因で、意外に見逃しがちなのが「間食(おやつ)」です。犬に求められるまま、ついついおやつを与えてしまっている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
1回に与える量が少ないために気付きにくいですが、1日に与えた量をすべて合わせて考えると、思っているよりずっとたくさんのおやつを食べているという場合があります。
自分以外の家族も同じようにおやつを与えていたとしたら、その量はもっと増えることになります。
このような場合は、食事の時間がきてもお腹は減りませんし、食事より美味しいおやつを犬が欲しがるのは当然のことだといえます。
数少ない犬の楽しみであるおやつを取り上げてしまう必要はありませんが、1日に与える量と与える時間帯を考えて、おやつはほどほどにしておきましょう。
まとめ
犬がご飯を食べなくなるのには、必ず何か原因があります。まず、その原因を突き止め、それぞれの原因に即した対策を講じることが必要です。
注意する必要があるのは、原因が病気であった場合です。中には、急を要する場合もありますので、犬がご飯を食べなくなった時には、その原因が病気であるのかどうかを速やかに判断することが重要です。
食事は、健康を維持するために非常に大切です。食事の内容だけでなく「食」につながる犬の生活環境や生活習慣など生活全般についても、犬のライフステージに合わせて、日頃からよく考えておきましょう。