ペット位牌とは
愛犬との別れを経て、四十九日を迎えるまでに用意されるさまざまな供養具のうちの1つが位牌です。
人の場合、位牌とは亡くなった故人の依り代として祀られ、故人が仏様になり、残された遺族の忌明けとなる四十九日法要に合わせて「本位牌」が作られるのが一般的です。
そんな位牌には、
- 戒名(仏教徒に授けられる名前)
- 亡くなった年月日
- 亡くなった時の年齢
- 亡くなった人の生前の名前(俗名)
などが記されています。
実は、最近では愛犬を亡くした場合でも、別れを惜しみ、愛犬との思い出を飼い主さんが振り返るために、こういった人と同じような位牌を作られる方が増えているのです。
その素材もさまざまで、一般的な人の位牌と同じような木製や漆塗りのものもあれば、最近ではクリスタル製のおしゃれなものやデザインがかわいいもの、愛犬のことがすぐに思い浮かぶようなオーダーメイドのペット用位牌や仏壇といったメモリアルグッズが多くなっています。
犬の位牌には何を書くの?
愛犬を亡くした飼い主さんが、生前の愛犬を想って作る位牌には、人の場合ほど厳密な宗教観や固いイメージのものは少ない傾向にあります。
どちらかと言えば、愛犬と一緒に暮らした思い出として、愛犬のお骨と一緒に自宅に安置しているという飼い主さんが多いことでしょう。
わんちゃん用の位牌には、ほとんどの場合人と違って戒名を必要としません。飼い主さんの信仰心にもよりけりですが、宗教的な縛りが少なく書き方のルールも特にないため、
- 愛犬の写真を元にした絵姿
- 名前
- 生年月日と亡くなった年月日
- 愛犬への一言メッセージ
を中心に記載することが一般的です。
位牌らしさを優先する時には、愛犬の名前の後に「之霊位」という記載を付け加えることもあります。
つまりペット用の位牌は、飼い主さんの心を慰め、愛犬の死を悼むためのものという意味合いがより強いわけですね。
次にご紹介する位牌は、愛犬とお別れした飼い主さんたちに現在人気のものです。スタンダードな人用位牌にそっくりなものも好まれていますが、今回は位牌のイメージを一新するような商品を中心にご紹介しておきます。
うちの子にはまだ必要ないという飼い主さんも、今まさに亡くなった愛犬用の位牌を探しているという飼い主さんも、「こんなものがあるんだ」という参考にしてみてくださいね。
台座の輝きも魅力的なクリスタル位牌
位牌と言えば黒の漆塗りで…というイメージを一新するクリスタルガラス製の位牌です。
愛犬の顔写真を元にレーザー彫刻を施すため、写真そのものとは違った味わいの愛犬の顔を映し出してくれます。
彫刻用の飾りパーツのデザインを選んだり、愛犬へのメッセージも一緒に刻印することができますよ。
まるでフォトフレームのようなクリスタル位牌
同じくクリスタルガラス製ですが、こちらは写真の色味をそのまま写した位牌です。
愛犬を写したお気に入りの写真を元に作っているので、フォトフレームのように置くことができます。
写真に合わせて選べる柄もかわいらしいものばかりなので、一見位牌には見えないのもポイント。お部屋のリビングなど、どんな場所にも置きやすいタイプです。
犬種に合わせたシルエットが印象的な木製位牌
木製位牌には名前や没年月日の記載のみというシンプルなものが多い中、こちらは犬種に合わせた木のシルエット型が付属する位牌です。
写真を入れることができる位牌は多いですが、一味違う職人手作りの木型で作るのも印象的ですよ。
- 位牌は亡くなった相手の依り代として、遺族がその人(犬)を供養するために安置される
- ペット用の位牌の形記載内容などに強い宗教観やルールはない
- 位牌は愛犬との別れを経て悲しみの淵にある飼い主さんの心を癒すためのもの
ペット位牌の必要性
ペット用の位牌についてご紹介しましたが、愛犬の供養のために、位牌が絶対に必要というわけではありません。
あくまでも、位牌を始めとした仏壇やお骨入れなどの供養具は、飼い主さんが自分たち家族の心の整理に必要だと思えば用意するという形で十分です。
位牌があることによって、遺された飼い主さん家族にどんなメリットが訪れるのか、確認した上で用意するかどうかを考えてみてくださいね。
愛犬の生きた証を形にして残すことができる
愛犬との思い出の品はたくさんありますが、いつも目に見える形で置いておけるものは意外と少ないものです。
火葬後に用意した骨壺や、写真立てに入った愛犬の姿はもちろんですが、名前や没年月日、愛犬へのメッセージが特別に記載された位牌を置き、折に触れて室内で目にすることで、「うちの子はこれだけ頑張って生きてくれた」「一緒に過ごしてくれた」と実感できるようになります。
愛犬の性格や思い出に合わせて、特にデザインにこだわって作った位牌であれば、目にするたびになおのこと愛犬への想いを確かめるきっかけになるでしょう。
愛犬を身近に感じることができる
人用の位牌では、四十九日法要の時の「開眼供養」を行うことで、故人の魂を宿らせることができるとされています。
つまり、位牌は亡くなった人の霊が宿るものとしても重要なものというわけです。
このように、位牌に愛犬の魂が宿っていると思いながら、愛犬のために位牌の前で手を合わせたり、話しかけたりすることで、亡くなってからも愛犬の存在を近くで感じることができます。
最近では、位牌に魂入れを行うペット専用の開眼供養を行っているところもあるほど、ペットのお見送りのサービスは充実しつつあります。
愛犬の位牌に対して、人と同じような儀式を経ることで、愛犬がまだ傍にいてくれると穏やかに向き合えるきっかけになるかもしれません。
ペットロスを乗り越えるために
愛犬とのお別れでは、どんな亡くなり方をしたとしても、「もっとできることがあったのではないか」「なぜ愛犬が亡くならなければいけなかったのか」という、大なり小なりの悲しみや後悔にさいなまれるものです。
死別する時に起こる悲嘆から立ち直りまでの心のプロセスは、大事な存在と別れてしまった時には必ず起こることであり、愛犬のために泣いたり、悲しんだりすることは当たり前のことですね。
しかし、愛犬が亡くなってからなかなか悲しみの区切りがつけられなかったり、お見送りのステップが踏めていないと、「ペットロス症候群」と呼ばれる深い落ち込みが続き、遺族である飼い主さんが苦しんでしまうことがあります。
そこで、亡くなった人(犬)の来世を決めるための裁きが下る日「四十九日」を1つの区切りにして、本位牌を作って愛犬が無事に心穏やかな場所に行けるようにと意識することが、1つのお見送りのステップを踏むことにつながります。
火葬でのお見送りだけでなく、位牌を作って愛犬への気持ちを自分で見つめ直すことで、きちんと愛犬を見送ることができているという実感を得られるようになるのです。
家族間で悲しみを共有するきっかけに
愛犬への思い入れが強かった人の中には、愛犬が亡くなったことに対する悲しみや、死別時の後悔などをなかなか表に表すことができない場合があります。
それは家族間でも起こり得ることで、家族が深い悲しみを言葉にできず、いつのまにか食事や睡眠がとれなくなって体調を崩し始めてからやっと気づくことも。
位牌や仏壇を置くための準備の時や、位牌を置いてから「あの子はこんな子だったね」と思い出を話すきっかけにすることで、家族の中で1人悲しみを溜め込み続けることがないように気遣い合うことができます。
死別後も愛犬のために何かをしてあげたいという気持ちを満たす
亡くなった愛犬のことを振り返る時に、写真アルバムや愛犬が使っていたグッズなど、さまざまなものが思い浮かぶことでしょう。
しかし、愛犬とお別れをしてからだと、リードや首輪、洋服やおやつなど、愛犬がもういないのに新しく何かを買うことはなかなかしづらくなってしまい、死別による辛い気持ちが一層増してしまうことがあります。
そんな時に位牌や仏壇などを準備して、お家の中に愛犬と向き合うコーナーを作ることで、「供養」という形ではありますが、亡くなってからも愛犬のためにしてあげられることを探し、実行し続けることができます。
「愛犬にもっと何かをしてあげたかったな…」という飼い主さんの気がかりを薄めるのにも一役買ってくれますよ。
- 位牌は愛犬が家族として過ごしてくれた思い出として残すことでもある
- 位牌が傍にあることで愛犬が亡くなってからも身近に感じ続けることができる
- 愛犬とのお別れのステップを踏んで悲しみに少しずつ区切りをつけることに役立つ
ペット位牌の選び方
実際に位牌を購入しようと思って探してみると、いくつかの素材や形状があるのがわかるはずです。
「うちの子のためにはどんな位牌を用意してあげれば良いのかな?」と迷ってしまうこともあるでしょう。
位牌は写真立てのようにいくつも購入して祀るものではなく、愛犬の魂が入るたった1つのものを探し、納得して選ぶ必要があります。
そこで、ここからは位牌の種類や、ご家庭に合わせた基本的な選び方についてご紹介します。
愛犬の位牌の選び方
まず注目したいのは、位牌の素材です。
人用の位牌は黒く重厚なイメージを持つことが多いですが、ペット用の位牌の場合は、
- 木製
- クリスタルガラス製
- アクリル製
などに分かれ、色合いや風合いもさまざまです。
木製の場合は何と言っても、伝統的な印象や人の仏具と並べても違和感なく置きやすいのが良い所です。
木目の温もり感あふれるものを選べば、愛犬を思い出して位牌と向き合う時に、優しい気持ちになれるでしょう。
クリスタルガラスでできたものは、水晶のように輝く高級感が魅力で、カラー写真で愛犬の顔や姿を写すのはもちろん、2D・3Dレーザー加工によって繊細な線で愛犬の顔を彫刻することもできます。
経年劣化がしにくく、通常のガラスに比べて強度もあり、ほどよい重みとモダンな雰囲気から、お部屋のどこに飾っても違和感がないため、ペット用位牌の中では特に人気を誇っています。
クリスタルガラスのカットの仕方次第で、かわいい雰囲気にもおしゃれな雰囲気にもなるので、よりオーダーメイドの感覚が強く感じられるでしょう。
アクリル樹脂でできた位牌は、ガラスと同様に透明感があり、素材そのものの軽さが特徴です。高級感や重厚感がある位牌よりも、かわいらしい雰囲気を求めたいという飼い主さんに人気の素材でもあります。
ただし、クリスタルガラス製に比べると日光による経年劣化も認められるため、置き場所に注意が必要です。
こうした素材の位牌は、手のひらに乗るくらいの小さなサイズから、両方の手のひらで持ってちょうどぐらいのサイズまでさまざまです。
全体的には、お家の中で圧迫感を与えないような大きさで、位牌が派手に主張しないように、日常に溶け込む小さめのものを選ばれる方が多いようです。
愛犬の位牌の作り方
現在、ペット用の位牌の多くはインターネット通販を通して購入することがほとんどです。まだ店舗としてメモリアルグッズを取り揃えている会社は少なく、なかなか手に取って選ぶということが難しい部分があります。
位牌を作る時には、愛犬を火葬した時に業者から受け取ったり、自分で用意した白木位牌や紙位牌(仮の位牌)があれば、四十九日法要の時に白木位牌から「魂抜き」をして、これからの魂の依り代となる本位牌へ「魂入れ」をすることが基本的な手順です。
そのため、本位牌は四十九日を迎える日の2週間前には依頼をして、製作に取り掛かってもらうと当日に焦らずに済みますね。
この魂入れ(開眼供養)は、お寺で対応してくれることもあれば、ペット霊園などで手配してくれるケースもあります。
四十九日を迎えて本位牌になれば、住職の元でお焚き上げをしてもらうことになる白木位牌と違い、この本位牌は飼い主さん自身がよく吟味して選ぶ位牌であり、これからの長い時間家族が暮らす生活空間に置くものになります。
愛犬にぴったりな位牌はどんなものか、お家に置いておきたいと思える位牌を、たくさんの種類の中からよく見比べて選んでおきましょう。
ちなみに、こうした魂入れの儀式は、位牌があるだけでは亡くなった相手そのものの魂が入っていない「物」の状態であるという、あくまで仏教の考えの元で行われるものです。
しかし、飼い主さんにとって、その位牌があることで愛犬のことを身近に感じられる・想うことができるのであれば、儀式を行うことは強制されるものではありません。
位牌の作り方としては、人の場合と同じように魂入れを行うことが一般的ですが、愛犬には宗派は関係ないと思われている方も多いので、行うかどうかは自分の気持ちに合わせて選んでみてくださいね。
愛犬の位牌の祀り方
位牌ができあがれば、「どこに置くべき?」と悩まれる方もいるかもしれません。
しかし、基本的にペット用の位牌は置く場所が決められているわけではないので、愛犬のことをいつでも身近に感じられるよう、
- 話しかけやすい場所
- 家族が集まる場所
- 自然と目に入る明るい雰囲気の場所
に置き場所を決めることをおすすめします。
位牌を作った飼い主さんの場合、多くは「大好きだった愛犬のことを供養してあげたい」「亡くなってからも傍にいてあげたい」と思われている方がほとんどでしょう。
愛犬との別れの悲しみに向き合う時間と、思い出を振り返る優しい時間を作るには、愛犬が普段過ごしていたリビングなどに置いておき、生前の愛犬との日々を思い出すのも良いのではないでしょうか?
また、ペット用の仏壇の中に配置して、愛犬の思い出コーナーを作るのも良い方法です。他にも、家族の中で愛犬をかわいがっていた人が故人であれば、許される範囲で人用の仏壇の中に並べて置いておくのも良いかもしれませんね。
愛犬がいたことをきちんと思い出せるスペースを作りたいという時には、供養に必要なセットが一体になったペット用の仏壇を設置してみるのも良いですね。
こちらは2段仕様で位牌や仏具をどんなふうに設置するかを自分で決めることができ、基本的な仏具がかわいらしいサイズでセットになっているので、場所をとり過ぎることなく置くことができます。
お部屋の雰囲気に合わせて仏壇の色が選べるのも嬉しいポイントです。
- 部屋の雰囲気飼い主さん自身の好みに合わせて位牌の素材を選んでOK
- 位牌に魂入れ(開眼供養)を行うのが一般的だが、飼い主さんの気持ちに合わせて実施するかどうかを決めよう
- 位牌ができたら気軽に話しかけられる場所家族みんなの目に入る場所に置いておくのがおすすめ
まとめ:大切なのは形式よりも気持ち!
大切な愛犬とお別れをしなければいけないのは、飼い主さんにとって何よりも辛く、悲しい時間となってしまいます。
そんな時に、愛犬とのお別れを、「出会えて良かった」と穏やかに振り返るきっかけになってくれるのが位牌です。
しかし、あくまでも位牌は「作らなければいけない」というものではなく、「愛犬の供養をしてあげたい」「感謝の気持ちを伝えたい」という飼い主さんの気持ちを元にして作るもの。
わんちゃんの供養の仕方には、どれが正しい・間違っているというものはありません。
そのため、位牌は置かないという選択だって正しいものなのです。
どのように自分の気持ちに向き合うのか、愛犬との思い出を大切にしていくのかをぜひ考えて、愛犬の供養の方法を探してみてくださいね。