犬のけがにオロナインを塗っていいの?
「ちょっとだけ、ケガしていたみたいだからオロナインを塗っておいたら治ったんですよ~」
動物病院で、飼い主さんからよくお聞きする武勇伝です。
しかし、このお話にはたいてい続きがあるんですよ。
オロナインH軟膏は、日本で古くから愛されている、怪我の応急手当剤ですね。
大抵の家庭の救急箱に入っていて、身近にあるお薬だともいえます。
そんなオロナインですが、愛犬に使って良い場合と良くない場合があります。
私の経験談から、オロナインを使うべき時とそうではないときについてわかりやすくお話ししようと思います。
オロナインで大ピンチ
オロナイン好きは、年配の飼い主さんに多い傾向にあります。
愛犬にオロナインを塗ってなんとかしようとする飼い主さんはご自分も病院が苦手・・・なんて話も多いですね。
病院にやってきたタロウ君と飼い主のおじいさんは、オロナインの使い方を間違えて大事件になったケースの一つでした。
おじいさんは「ちょっと、毛がぬけて赤くなっていたからオロナインを塗っておいた。1週間後、急に皮膚に大きな穴があいてしまった診て欲しい」
タロウ君のお尻の横には大きな穴が開いていて、そこからだらだらと血膿が流れ出ています。
いつも元気なタロウ君が、ぐったりしているのを見た看護師さんは緊急と判断して診察を早めてくれました。
結論としては、タロウ君のおしりの横には牙や爪などであけられた小さな穴があったことがわかりました。
おじいさんのお話では、公園でお友達のワンちゃんとふざけていて噛み合いっこになったときの傷かもしれないとのことでした。
始めは小さな穴の周りの皮膚が赤くなっていただけで、オロナイン軟膏を塗って治ったようにみえました。
でも、傷は皮膚の奥まで達していて、ばい菌が皮膚の奥に入り込んでしまって皮膚の奥でどんどん化膿が進んでしまっていたのです。
お尻の横の小さな傷が入口となって、タロウ君の化膿は左足全体にまで広がってしまっていました。
犬の場合、ひっかき傷や噛まれた傷はフカフカの毛が邪魔して良く見えないことが多いです。
最初の傷を見つけた時に、傷のまわりをしっかり観察して毛を刈ったりしてキチンと調べておくべきだったのですね。
オロナインH軟膏の主成分はクロルヘキシジングルコン酸塩という消毒成分です。
オロナインを塗ることで、表面の傷を消毒できてしまったため深層の傷を見逃してしまうケースは非常に多いことを知っておいてください。
タロウ君は、腫れあがった左足の治療のため全身麻酔をかけて皮膚の下を洗浄しました。
もっと化膿が進んでいたら、足の皮膚を失ったり足を切断する可能性もある危険な状態だったのです。
飼い主さんがさっと手当できるオロナインは、優れものですがしっかり観察して悪化のサインを見逃さない注意も大切なんですよ。
オロナインはよい薬ですが、過信は禁物です
オロナインのパッケージには、いろいろな症状に効くと素敵なことが書いてありますよね。
それを信じて、かえって病気を悪化させる飼い主さんも少なくありません。
慢性のアレルギーを持っている華ちゃんの飼い主さんは、「何かあったらとりあえずオロナイン」信者でした。
外耳炎(耳の中が細菌や酵母によって炎症を起こす病気)でもオロナイン。
指間皮膚炎(足の指の間を舐めすぎることで、真っ赤にはれ上がる皮膚炎の一種)にもオロナイン。
でも、結局治らなくて病院にきておっしゃるのです。
「病院にきてお薬をもらっても、治るのにとても時間がかかるのよ」
獣医師も看護師も何度も説明しているのですが、オロナインを塗ってごまかす前に病院にきて治療すればもっと早く治るのです。
オロナインの成分は消毒効果のあるものですが、微量にしか配合されていないのでそれほど効果はありません。
塗った直後に少し効く・・・くらいでは、原因があって起こっている病気には効果がないのです。
動物病院に来院する患者さんの半分くらいは「もう少し早めに診察して治療すれば半分の期間で治療できるのに・・・」というケースが多いです。
オロナインを過信することは、オロナインを塗って病気を悪化させて治療が長引くという悪循環の原因になることを知っておいてくださいね。
オロナインでOKな場合ってありますか?
オロナイン軟膏の良くない側面をたくさんお話ししました。
逆にオロナインで何とかできる状況についてもお話ししておきましょう。
私は下半身不随の犬を飼っています。
彼は、脊髄損傷で後ろ足が全く動かずおしっこやウンチも自分の意志ではできません。
とくにお尻の周りはうんちやおしっこがついて汚れやすいのでバリカンで毛を刈ってあります。
でも、気を付けてバリカンをかけていても刃があたってしまったりカミソリまけのような状態になって皮膚が赤くなってしまうことがあります。
私は、そういうときはまず赤くなっている皮膚を蒸しタオルで綺麗に拭き取って薄くオロナインを塗って対応することにしています。
オロナインを塗った後は、気にして舐めないように車いすを付けて散歩に出るのがベストです。
せっかくつけたオロナインを舐めてしまっては、犬にもよくありませんし皮膚の治りも悪くなります。
だいたい1日2回くらい蒸しタオルとオロナインをつかって翌日には赤みが引いていればOKです。
オロナインの消毒効果で感染を防ぎ、軟膏のカバー効果で皮膚を保護することができます。
これは、トリミング後のバリカン負けなどにも応用可能です。
ただし気を付けたいのは、2日以上続けて改善しない場合は病院に行く必要があるということ。
だらだら使い続けても効果はあがらないことを理解して、応急処置として活用しましょう。
まとめ
子供の頃、すりむいたり引っかいたりしたときよくオロナイン軟膏を塗ってもらいました。
人間は、「軟膏は舐めてはいけない」と知っているので問題ありません。
でも犬の場合は、傷や炎症は舐めて治したいという本能が働いて舐めてしまうケースも多いですよね。
ですから、塗る場合は薄くのばして食事や散歩の直前など気がまぎれる時にしてあげましょう。
それでも舐めようとする場合は、オロナイン軟膏では役不足と判断して早めの受診をおすすめします。
オロナイン軟膏は良い薬ですが、あくまでも人間用のクスリです。
犬には向かないときもあることを知って、上手に活用してくださいね。
ユーザーのコメント
30代 女性 ちょびこ
30代 女性 zzz
恐らくわずかな殺菌・消炎作用のある保湿クリーム、といった感じでたまに私も使っちゃいます。
散歩から帰った後の肉球のケアや、ちょっとしたかぶれなどに患部をきれいに拭いたり洗ったりしてから塗っています。
かぶれなどのちょっとした皮膚トラブルには本当に効果抜群で、穏やかに優しい使用感が気に入っています。病院へ行くほどでもないけど、何か塗ってあげないと心配、程度のときにはヒルトンフィトバームでしのいでいます。
女性 きなこ
傷口にオロナインを塗って様子を見ている間に、犬は気になって舐めてしまうことも多いと思います。患部に塗るくらいの少量なら舐めてしまっても問題はないそうです。ですが、傷口に塗っているので、綺麗に舐めとってしまうと消毒の役割がなくなってしまいます。雑菌が繁殖してしまってからではいくら塗っても効果は薄いです。返って悪化させてしまうことも少なくはないようです。
やはり症状をよく見て、不安なときは獣医さんに相談してからがいいと思います。
傷がじくじくと痛むのは、皮膚が乾燥していることが原因のひとつです。オロナインを塗る前に、傷口をよく洗い状態を確認し、傷口が小さかったとしても白色ワセリンなどで保護してからまずは病院で診てもらうことがいいと思います。
犬にとってオロナインは、塗ってもいい場合とダメな場合があること、勉強になりました。
女性 もふころ
表面だけではわからない傷もありますね。咬傷は特に危険です。
愛犬に何か傷などを見つけたらまずは清潔にして、それから早めに獣医さんですね。